山森博之・谷口守泰・影丸譲也「影別冊 殺人は俺の方がうまい」(220円/1964年頃)
収録作品
・山森博之「殺人は俺の方がうまい」
「二人の男は現金輸送車を襲い、二千万円を強奪していた。
金はある場所に埋め、ほとぼりが冷めるまで待つ。
しかし、片方の男が心臓を患い、ドイツから高価な薬を取り寄せなければ、余命いくばくもない。
彼は相棒に分け前を要求するも、今、金を使ったら足がつくと金を掘り出すことを拒絶する。
このままでは相棒が金を独り占めすることになると考え、彼は相棒の車からブレーキオイルを抜く。
彼は発作が起きたふりをして、相棒に車で病院へ行き、薬を取ってきてくれるよう頼む。
相棒は病院へ行く途中、ブレーキが利かなくなり、交通事故を起こす。
病院から彼が死亡したとの知らせが届き、彼の計画はうまくいったように見えたのだが…」
・谷口守泰「ろくでなし」(1964年6月18日完成)(注1)
「城は竜崎組のヤクザ。
彼は組のために二人殺し、五年間服役する。
出所の日、彼を竜崎組の志郎が迎えに来る。
車には志郎の他にシゲと野ねずみの三次という流れ者が二人乗っていた。
実は彼らは殺し屋で、城を人気のない場所で殺す予定であったが、野ねずみの三次が裏切って、城を助ける。
三次は刑務所で城に世話になったことがあった。
二人はグリーンホテルに向かうも、そこにも竜崎組の殺し屋が現れる。
城は一人で竜崎組に乗り込むが、彼の目的とは…?」
・影丸譲也「脅迫者」
「九藤一三は皮革工場の経営者。
ある雨の夜、沼田渡という老人が九藤の屋敷を訪れる。
彼は九藤に貸した五百万円を返してもらいに来たのだが、九藤は返すふりをして、沼田を毒殺。
召使の梶岡にアリバイ工作を頼み、九藤は死体を車のトランクに入れ、皮革工場に向かう。
工場には工業用の硫酸があり、それで死体を溶解するつもりであった。
しかし、途中、車のタイヤがパンクし、交換していた時、九藤は背後から何者かに頭部を殴られ、気絶する。
目を覚ました時には車も死体もなく、どうやら逃亡中の指名手配犯二人の仕業らしい。
翌日、九藤のもとに小包が届く。
小包の中には沼田の帽子とカバン、それに脅迫状が入っていた。
脅迫状には死体と一千万を交換しようと書かれており、要求をのまなければ、警察に届けられてしまう。
仕方なく手持ちの二百万円を携え、指定の場所に行くと、二人の指名手配犯が現れる。
二人は残りの八百万を要求し、決してまけようとはしない。
九藤は次の日の午後十一時、皮革工場で残りの金を渡す約束をするのだが…」
表紙には「怪奇スリラー」と書かれてありますが、厳密には「怪奇色が若干あるサスペンス」です。
山森博之「殺人は俺の方がうまい」はジョルジュ・クルーゾーの名作「悪魔のような女」の影響があると思います。
ただ、怪奇色を出そうとして、ちょっぴりへっぽこになってしまっているのが何とも…。(特に、少年をトイレに連れて行く下り。)
「ろくでなし」は出所したギャングものです。
主人公は「ニグロとの相の子」という衝撃的な設定ですが、肌がちっとも黒くないので、全く説得力に欠けます。
影丸譲也「脅迫者」はこの本の中で最も出来が良いです。
サスペンスではお馴染み(?)の硫酸の貯水槽が登場し、案にたがわず、皆、溶けちゃいます。
今見ると、大したことのない描写ですが、当時はショッキングだったんでしょうね。
・注1
タイトル表紙に誤植があり、「谷口守泰」が「谷口安泰」になっております。
それだったら、「たにぐち・やすやす」になってしまうなあ…。(「たにぐち・あんたい」かも。)
・備考
ビニールカバー貼り付け。糸綴じあり。前後の見返し、シミ多し。pp16・17、ひどい汚れあり。
2024年7月16・17日 執筆・ページ作成