平田弘史・岩井しげお・他「魔象別冊・怪談特集」(170円)
収録作品
・岩井しげお「一つ目」
「剣法修行のために、諸国漫遊の旅の途中にある、司新二郎。
彼は、四人の侍を引き連れた、見世物師、からくり屋伝兵衛と知り合う。
伝兵衛はこれから一つ目人間を捕まえに行くところであり、司新二郎にも助力を請う。
一つ目人間の一族は秘境のような山奥に住んでおり、彼らにのみ伝わる特殊な剣法で、彼らの存在を知った人間を皆殺しにしていた。
伝兵衛は、白痴の一つ目人間が江戸に出てきたところを捕らえ、彼に一つ目人間が住む所へ道案内させる。
一つ目人間に伝わる剣法に興味を覚え、司新二郎は一行に加わる。
卑怯な手も使い、伝兵衛の雇った侍達は、一つ目人間の剣士達を一人ずつ撃破。
残るは、一つ目人間の娘だけとなるが…」
・不二洋平「剣客募集」
「幕末。
勘定物書き役の下っ端の浅水顔十郎。
薄給で、剣の腕も大したことなく、妻の琴音にはバカにされっぱなし。
それでも、惚れた弱みというやつで、ただただ耐えていた。
ある夜、顔十郎は物影からいきなり斬りつけられる。
発作的に剣を抜いた顔十郎であったが、その男は顔十郎の剣さばきを褒める。
顔十郎を襲った男は、寿光坊といい、幕府のための剣客を集める斡旋人であった。
寿光坊は顔十郎に、京都御所を守るための新潮組(ソノママ)に入るよう勧めるが、身の程を知る顔十郎は辞退。
その代わりに、寿光坊が提案したのは、寿光坊が依頼する勤皇論者を、木刀で叩きのめすという仕事であった。
剣の腕に自信はないものの、人を殺すわけでなし、金は欲しいはで、顔十郎はその仕事を受ける。
最初はおっかなびっくりであった顔十郎だが、自分でも驚くぐらいに、受ける依頼はうまくいく。
琴音に高価なお土産も買うことができ、闇討ち剣士の噂も内心誇らしくて仕方がない。
そんな彼に暗殺の依頼が入るのだが、その相手とは…?」
・平田弘史「秘曲 壇の浦」
ストーリーは小泉八雲「耳なし芳一」ですので、割愛します。
ただ、芳一は、平家を捨て、源氏に寝返った者の子孫という設定になってます。
まあ、怪談のスタンダードでありますので、新味はありませんが、右の画像を見て、太い筆で「しり」と書きたくなった筆者は田村信先生のファンです。(今も昔も「できんボーイ」大好き!!)
意外と粒ぞろいの作品集です。
世間的には、平田弘史先生の作品が目玉でありましょうが、個人的には、岩井しげお先生の「一つ目」と不二洋平先生の「剣客募集」の方が面白かったです。
特に、「剣客募集」は怪談ではないものの、不甲斐ない貧乏侍が妻の気を惹きたいがために剣客へ目覚めていくという、「世知辛さ」満点のストーリーで、個人的なベストです。
・備考
糸綴じの穴あり。ビニールカバー剥がし痕あり。表紙に痛みや切れあり。p77、コマ内にハンコ押印。後ろの遊び紙に貸出票と古本屋の値段票貼り付け。
2017年6月29日 執筆・ページ作成