白井幸子「いばらの寝床」(2002年1月7日第1刷発行)
・「いばらの寝床」(2001年4月増刊号「恐怖まんが666」)
「菜穂と琴弾薔子(ことびき・しょうこ)は大の仲良し。
薔子は非常に美しい少女で、二学期に菜穂のクラスに転入してきたが、何故か菜穂にのみ心を開く。
三月のある日、菜穂は薔子の父親である琴弾征矢と出会う。
薔子の家庭は父子家庭で、父親はどうやら娘を溺愛しているらしい。
だが、薔子はその過保護なところを苦痛に感じていた。
薔子は父親と喧嘩して逃げ出し、道端で居眠りしているところを菜穂が見つける。
その時、菜穂と一緒にいた、いとこの三河隆広は薔子を見て驚く。
隆広は征矢の妹と高校一年の時、クラスメートであったが、彼女は薔子とそっくりであった。
また、当時も征矢は妹のそばを一時も離れず世話を焼いていた。
征矢によると、彼の妹は亡くなったというが、それにしても、釈然としないことばかり。
菜穂は薔子から話を聞こうとするのだが…。
薔子の秘密とは…?」
・「MOTHER」(2000年8月増刊号「恐怖まんが666」)
「晶(あきら)の家庭は母子家庭。
彼女の母親は娘のために身を粉にして働き、体調を崩す。
しかも、入院した病院で母親は「恒久の輝の会」という新興宗教の話を聞き、すっかりのめり込み、信者になる。
母親は教祖の下なら病気を治してもらえると信じ込んでおり、娘の晶も仕方なく母親と一緒に信者になる。
「恒久の輝の会」の教祖は恒(わたる)という名の少年で、彼は人に手を触れることで人の情報を読むことができた。
彼は晶が彼を信用していないことを知り、自分の付き人にする。
彼は晶の母親が自分のことしか関心がないと晶に突き付けるが、彼女はそれでも一番大切な母親のそばにいることを選ぶ。
その後、晶は恒が自分の母親に向ける屈折した感情を知るのだが…」
・「シンクロニシティ」(1999年11月増刊号「恐怖まんが666」)
「茅谷未散(かやたに・みちる)は周りの他人の感情にシンクロしてしまう体質の持ち主であった。
彼女の頭の中では他人の感情が常に飛び交い、特に、怒りや憎しみといった感情は心身をひどく消耗させる。
そのため、彼女は自分の感情をすっかり見失っていた。
メンタルクリニックで療養している時、彼女は緋本凪(ひもと・なぎ)という少年と出会う。
彼は二年前、ある出来事をきっかけにひどい心の傷を負い、感情をなくしていた。
未散は彼のそばにいる時だけ心に安らぎを得て、徐々に自分の感情を取り戻していく。
そのうちに、彼女は彼の心の扉を開けるため、彼とシンクロしようと考えるのだが…」
・「ヒューマン・M」(2000年1月増刊号「恐怖まんが666」)
「近未来のある世界。
そこでは数十年にわたる戦争の末、人類は愛することを忘れ、それにより肉体も変化し、滅亡への道をたどっていた。
三奈・シャオランは健全な生殖機能を持ちながら、この世界に幻滅し、何度も自殺を試みる。
ある日、彼女が帰宅すると、花のようなものが入ったガラスの筒が届けられていた。
家の中に持ってはいると、目を離した間に、それはガラスを割って巨大化し、中から男が現れる。
これは「ヒューマン・マッシュルーム」というもので、戦死した夫のウォンのデータをもとに作られていた。
彼女はこの夫とそっくりなキノコ人間と一緒に生活することとなるが…」
・「聖夜怪談」(「ホラーM」1999年12月号)
「塔也密香(とうや・ひそか)はクリスマスパーティに招待される。
場所は学院寮の敷地の森にあるコテージで、主催者の瞳子と綾乃は今まで話したことすらなかった。
クリスマス・イブの夜、彼女がコテージを訪れると、きれいに飾り付けがなされていた。
ただ、もう一人がなかなか来ず、三人で先に始めることにする。
このパーティでの催しは「クリスマス・ホラー・ナイト」というもので、参加者は自分が知っている怖い話とそれにちなんだアイテムをプレゼントとして持ち寄るという趣向であった。
そして、一人が話し終えると、目の前のロウソクを消していき、四本全てが消えたら閉会となる。
最初は瞳子で、彼女が持ってきたのは中指に指輪をはめた左手首。
それはこの学院にいた女生徒のもので、指輪は彼女の家に代々伝わるものであった。
病弱な彼女は亡くなる前、指輪と一緒に葬るよう遺言を残していたのだが…。
二番目は彩乃で、彼女が取り出したのは鏡面のない手鏡。
この手鏡は自分の美貌を自慢していた女生徒のもので、彼女はしょっちゅうこの手鏡で自分に見惚れていた。
ある時、クラスメートがこの手鏡に醜い傷のようなイタズラ描きをするのだが…。
彩乃の次の密香が焦っていると、いつの間にかもう一人の参加者が来ており、話し始める。
彼女の話とは…?」
ホラーからレディースまで幅広く活躍している白井幸子の初単行本です。
収録作品は心を込めて描かれており、どれも悪くありません。
個人的には、「シンクロニシティ」が単行本のベストのように思います。
「キノコもの」の「ヒューマン・M」も面白いのですが、ラストで疑問に感じるところがあり、ちょっぴり残念。
あと、「聖夜怪談」はこの単行本で最もホラー色が強く、「百物語」形式を取り入れたプチ佳作です。(欲を言えば、もうちょっとボリュームが欲しかったな。)
2025年9月30日/10月15・16日 ページ作成・執筆