まつざきあけみ「神尾中正義団」(1996年2月8日第1刷発行)

 収録作品

・「神尾中正義団」(1995年「増刊・学園恐怖伝説」掲載
「鈴賀のクラスには、大谷といういじめっ子のグループがあった。
 特に、標的にされていたのが、岡野という女子生徒で、便乗して他のクラスメートもいじめに加わる。
 ある日、鈴賀は岡野をかばい、大谷達から逃げる。
 二人が逃げ込んだのは、普段、誰も近寄らない旧校舎であった。
 そこには、二人と同じく、いじめっ子から逃げてきた女子生徒が四人いた。
 その中の一人、桑田という女子生徒の発案で、六人は、いじめっ子に負けず、立ち向かうことを約束する。
 以来、彼女達には不思議な力が備わり、いじめっ子達が彼女達に手を出そうとしても、しっぺ返しを食うようになる。
 しかし、彼女達は、正義の名の下に、力を復讐に使うようになり…」

・「学校怪談」(「LCミステリー」1994年7月号)
「まんがクラブが終わり、下校しようとした時に、土砂降りになる。
 これはこの学校の七不思議の一つで、過去、学校で亡くなった生徒達が降らせる「やらずの雨」と言われていた。
 先輩達は後輩に学校の七不思議について語り始めるが…。
『シャワー』
 水泳部。
 区の大会が近く、高山京子は練習に励む。
 彼女には南というライバルがいたが、一年前、何者かに塩酸をかけられ、亡くなっていた。
 これが京子の仕業と知った女子生徒は、京子に「塩酸のシャワー」を浴びさせようとするのだが…。
『影』
 真智子はいつからか背後に影を感じるようになる。
 それは彼女の後についてきて、次第に距離を縮める。
 影法師を追いかけようとしても無駄だし、また、彼女以外には誰にも見えない。
 影法師が5メートルぐらい近付いてきた時、その影法師が学校の制服を着て、変わった髪型をしていることに気付く。
 調べてみると、影法師に相当する女子生徒が五年前に在籍しており、事故で亡くなっていた。
 影法師の意図はわからないまま、それは距離をどんどん詰めてきて…。
『ダイエット』
 栗原美実は食いしん坊の少女。
 美味しいものに目がなく、ダイエットしようと思いつつも、いつも先延ばし。
 ある時、保健室の女教師が、悩める彼女に催眠療法を施す。
 それは、彼女の好物が、ゴキブリやカメムシ、虫の幼虫に見え、味もそれと同じになるというものであった。
 これが功を奏して、彼女はダイエットに成功。
 しかし、告白した相手にフラれてしまい、ダイエットをやめることにする。
 彼女は、保健室の先生に催眠を解いてもらおうとするのだが…。
『竹の花』
 ある男性教師は、妻子のある身にも関わらず、教え子の京子と深い仲になる。
 京子は彼と結婚しようとするが、彼は、校舎裏の竹やぶで彼女を殺し、埋める。
 一年後、授業の最中、生徒が竹林に白いものを見る。
 彼は竹の花が咲いたと思うのだが…。
 …
 話の途中だが、雨がやみ始め、解散することとなる。
 家の前まで来た時、彼女は、同じ学校の制服を着た女子生徒が家から出てきたように思うのだが…」

・「人魚姫奇譚」(「LCミステリー」1994年9月号)
「竜道という科学者が私費を投じて作った施設、竜道スイミングクラブ。
 そこはオリンピックの候補クラスの選手を何人も輩出しており、設備も至れり尽くせりであった。
 ある中学校の水泳部が夏期合宿にその施設を利用することとなる。
 男子水泳部員の郁は、クラブのメンバーの各務奈緒(かがみ・なお)に妙に心惹かれる。
 奈緒は、矢野麗と共に、次期オリンピック最有力候補であった。
 しかし、彼女達の青春は泳ぐことだけで、他の全てを犠牲にしていた。
 郁は奈緒に同情し、二人は心を通わせるが、奈緒や麗の身体に異変が起きつつあることに気付く。
 彼女達の秘密とは…?」

・「理想学級」(「LCミステリー」1994年10月号)
「祝朋美(いわい・ともみ)は教師志望の女の子。
 彼女は、いじめ・えこひいき・校内暴力がまかり通る学校、また、それに対して何もしない先生達に憤懣と不信感を抱く。
 トラブルがあった後、彼女は父親の転勤の都合で転校するが、今度の学校は非常に規律正しかった。
 担任の桐生先生は、この学校の教育モットーは「平等・博愛」で、ひいきや差別は絶対にないと言う。
 また、校則は、生徒達の自主性に任せて、生徒達が作ったものであった。
 朋美はこの学校と桐生先生に自分の理想を見出す。
 この学校では全ての生徒が平等で、お互いが助け合うことになっていた。
 だが、「平等に助け合う」ことが徐々に朋美の負担になり始めて…」

 読み応えのある単行本です。
 ベテランだけあって、どの作品も水準以上だと思いますが、特に、学校教育をテーマにした「理想学級」はかなり考えさせる内容です。
 また、「学校怪談」の中には「山形マット死事件」(注1)への言及があり、まつざきあけみ先生は学校問題にかなり興味があったことが窺えます。
 あと、「人魚姫奇譚」では、「泳ぐ機械」と化した少女達を描いて、いろいろと複雑な心境になりました。(只今、東京オリンピックの最中。)

・注1
 気になって調べたところ、あまりの陰惨さに心が凹みました。(事件もひどいが、事件後が輪をかけてひどい!!)
 約三十年経ってますが、この事件、いまだに解決しておりません。
 と言うのも、加害者は被害者家族に賠償はおろか、謝罪すらしていないという有様だからです。(読んだ記事が古くて、もしも、間違っていたら、ご教示くださいませ。)
 これは決して風化させてはいけません。
 いつになるかわかりませんが、加害者によって、真相が明らかにされるべきだと思います。
 そして、加害者とそれに加担した連中には正当な裁きが下されますように。
(まあ、加害者が生きている間にちゃんと裁かれることはないかもしれません。また、閻魔様や地獄はないと鼻で笑うのも結構。でも、「因果応報」は絶対の真理だと私は思うよ。)

2021年7月29・30日 ページ作成・執筆

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