かずはしとも「彼女が死んだ瞬間」(2001年8月6日第1刷発行)

 収録作品

・「彼女が死んだ瞬間」(「恐怖まんが666」2000年12月号増刊掲載)
「及川結花(23歳)には藤木慎司と来年の春、結婚予定であった。
 ただ一つの心配は、幼い頃から時々悩まされる胸の痛み。
 優秀な外科医である慎司が診察しても、彼女の身体には何の異常も見られず、原因不明。
 その彼が、小野寺里花という患者を担当することとなる。
 彼女は小さい頃から重い心臓病であったが、容姿は結花そっくり。
 結花は、里花と双子で、原因不明の痛みは「双子のシンクロニシティ」ではないかと疑い始める。
 そして、自分が不幸なのは、里花のせいと考え…」

・「ここにいる」(「恐怖まんが666」2001年4月号増刊掲載)
「江美は、幼馴染の野崎啓太と同じ大学に入り、上京してアパート暮らしを始める。
 大学から近く、南の角部屋で、家賃もさほど高くなく、条件は良かったが、帰宅すると、いつも変な空気を感じる。
 開けた記憶のない押し入れが開いていたり、浴室に他人の髪の毛が落ちていたりするだけでなく、ある晩、押し入れの中に奇妙な男の姿を視る。
 女友達にストーカーではないかと言われ、警察に届け出るものの、ろくな対応をしてくれない。
 啓太は当てにならず、江美は前の住人である田中里菜に話を聞くと…」

・「宿り木」(「恐怖まんが666」2000年8月号増刊掲載)
「西村未央は、子供の時のトラウマから、人の気を惹くために自傷行為を繰り返していた。
 恋人に捨てられ、リストカットをしたため、彼女は高原にあるケアセンターで治療を受ける。
 ある日、湖で入水を図ったところ、通りがかった男性に救助される。
 彼の名は貴久。
 彼はこの付近で小さなレストランを経営している男性で、ビートという犬を飼っていた。
 両親を亡くし、独り身の彼はこまめに彼女を気にかけてくれる。
 彼の優しさがとても嬉しいが、別れる時のことを考えると、彼を好きになるのも苦しい。
 だが、彼に「放っておけない」と言われ、二人は同棲を始める。
 彼女は元気と自信を取り戻し、自分の将来について考えるようになるのだが…」

・「1999年の聖夜」(「恐怖まんが666」2000年1月号増刊掲載)
「1992年12月24日、クリスマス・イブ。
 この日は野沢達夫(作中では「達ちゃん」だけなので、勝手に推測)と萌の結婚記念日であった。
 萌は、愛する主人のため、ディナーの支度に精を出す。
 午後八時前になっても彼は帰って来ず、不安になり始めた時、電話が鳴る。
 彼女が電話を取ろうとした時、「電話をとるな」と彼の声が耳元でする。
 気のせいかと思い、電話を取ると、神奈川県警からで、夫の車がカーブを曲がり切れず海に落ちて、即死したとの報であった。
 呆然自失の彼女が気が付くと、電話が鳴っている。
 今のは夢と思い、電話に出ると、主人からで「そこにいて 迎えに行くから」と言って切れる。
 訝っていると、彼女は夫に渡した風邪薬が睡眠薬であったことに気づく。
 彼女は彼に連絡を取ろうとするのだが…」

・「いばら姫」(「ホラーミステリー」1999年5月号掲載)
「コウキ(18歳)は造園業者の作業員。
 彼は、いばらに囲まれた、古い洋館を訪れる。
 ここには海棠という老婦人が一人住んでいた。
 彼女は彼に、庭の内側のいばらの棘を抜いてほしいと依頼する。
 次の日から、彼が作業していると、どこからか一人の少女が彼のもとに現れる。
 彼女は喋れず、どうやら知恵遅れのようで、彼の仕事ぶりを座って眺めているだけ。
 彼は彼女にハナという、昔、飼っていた犬の名前をつけ、いろいろと言葉を教えると、どんどん知識を吸収していく。
 そんなある日、ハナは老婦人に見つかり、家の中に連れ戻される。
 コウキが老婦人にハナを病院に入れるよう勧めると、彼は首を言い渡される。
 ある夜、ハナの身を案じ、コウキは屋敷に忍び込む。
 この屋敷の秘密とは…?」

 今も活躍中の、かずはしとも先生の短編集です。
 ベテランだけあって、構成がしっかりしており、「彼女が死んだ瞬間」「宿り木」は良い出来だと思います。
 ただ、「ここにいる」だけは何か釈然としない感じが残ります。
 あのラストはマヌケだと思う…。

2022年12月31日/2023年1月5日 ページ作成・執筆

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