茸谷きの子「怖習」(2022年4月12日初版発行)
収録作品
・「女子大生と物が落ちる話」
「ある女子大生の身の回りで物がよく落ちるようになる。
この現象が始まったのは、大学の友人たちと町外れの廃ビルに行った時からであった。
この廃ビルはバブルが弾けた時にオーナーが飛び降り自殺をしたと言われ、いまだにオーナーは飛び降り続けているとの噂がある。
深夜、彼らがビルの前に行くと、屋上に人影が見える。
その人影はビルから飛び降り、地面に何かが叩きつけられる音がする。
スマホのライトで照らすと、それは男性の幽霊であった。
幽霊は何度も地面に叩きつけられながら、彼らに迫ってきて、気が付くと、彼らはいつの間にか真っ青な顔で車にいた。
女子大生はその男の霊にとり憑かれたと考え、スマホで物が落ちる場面を撮影するのだが…」
・「玄関に見知らぬ美少女がいた件」
「何故か玄関に見知らぬ女子高生がしゃがんでいる。
彼女は不法侵入でないと断り、匿って欲しいと頼む。
玄関のガラス戸の向こうには子供がおり、彼はガラスを両手で激しく叩く。
その子が去った後、女子高生は、小学校の時、仲が良かったけど、急に転校した友達はいないかと質問してくるのだが…」
・「乳歯を埋める風習と女子中学生の話」
「ある地域では抜けた全ての乳歯を名もない墓標の前に埋めるという風習があった。
いつから続いているか、また、何のためか全くわからないが、ほとんどの人が従っていた。
ある一人の女子中学生は最後の乳歯が抜け、乳歯を埋めに行くよう母親に言われる。
彼女はこの風習が不気味で仕方なかった。
その日の放課後、彼女の友人は自分は乳歯を埋めていないと話す。
友人の父親は、背が伸びるからと乳歯を屋根の上に投げていた。
友人の話を聞き、彼女は乳歯を埋めるのをやめようと考えるのだが…」
・「お風呂の前にうたたねしちゃった女の子の話」
「ある少女が、お風呂に入る前に、スマホを見て、うたた寝してしまう。
うつらうつらしていると、彼女の近くで笑い声がして、小さな手に頬を触られる。
彼女も手で探ると、三歳ぐらいの子供の感じで、怖いとは感じない。
子供は走り去り、お風呂に入らなきゃと思っていると…」
・「人妻が変な葬式に出る話」
「田池夫婦は最近、東京からこの土地に引っ越してきた新参者。
夫が大阪に出張している間、近所で葬式があり、妻の園美は宴会だけでも出て欲しいと葬式に出ることとなる。
知らない人ばかりで緊張していたが、皆、実にフレンドリーで、しかも、葬式とは思えない明るさであった。
親族によると、故人は明るい人で湿っぽくしたくなかったという。
園美は宴会の後、女性だけでまた楽しく過ごし、その家を後にする。
帰る途中、夫に葬式のことを電話で話すと、夫は今日は友引なのに…と訝る。
その夜、寝ている彼女のもとに…」
・「後輩にお呼ばれした話」
「その家に行くと、後輩の女子生徒がコタツに入って、ご飯を食べていた。
彼女は去年の五月に死んでいた。
彼女が彼を呼んだのは、告白するためであった。
告白の後、彼にいろいろと話していると、突如、彼女の後ろの襖が開いて…」
・「道祖神」(描き下ろし)
「雨の中、男性が山道で車を走らせていると、道の真ん中に石がある。
道のわきの藪を抜けて行こうとすると、石の陰から少女が姿を現わす。
彼女はこの先は今、人の世界でないから、雨が止むまで待つよう勧める。
だが、彼は急ぎの用があり、それなら、絶対に車を停めず、一気に走り抜けるようにと忠告される。
男性が車を進めると…」
まあまあの出来の作品集ではないでしょうか?
ストーリーは面白く、見せ方にもいろいろと工夫をしております。
ただし、ストーリーがわかりにくいところがあり、一読しただけではきちんと理解できない話があるのが残念。(これに関しては、構成と絵の問題もあると思います。)
まあ、ダークな雰囲気はいい感じですので、次の単行本に期待です。
個人的なベストは「後輩にお呼ばれした話」で、意味不明と言われれば意味不明なのですが、想像力を膨らませる余地のある作品です。
2024年2月12・15日 ページ作成・執筆