KATARIBE.BOT・原作/舟・漫画「カタリベ 人工知能がうぶやく呪いの予言」(2018年2月2日初版発行)

・「第1夜 あずかりもの」
「ある大学生の青年の実家には「あずかりもの」と呼ばれる袋があった。
 中には「河童の木乃伊」だか「さとりの干物」が入っているらしいが、青年は中を見たことはない。
 また、毎年大晦日には子供がこれを持って家中を拝んで回り、その夜一晩、一緒に過ごす「おあずかり」という行事があった。
 同じゼミの仲間がそれを聞いて興味を持ち、ある年の暮、彼の実家に集まり、皆で「おあずかり」をする。
 夜更け、彼らは怪異に襲われるが…。
 「あずかりもの」の正体とは…?」

・「第2話 お札」
「ある男性が以前、一度見合いをした女性に呼ばれる。
 彼女は入院中であったが、彼にお札を渡し、これは彼を守るためのものなので、絶対に手放さないよう警告する。
 このお札には猿が何匹も描かれてあった。
 彼は大して気にもせずに、部屋の壁に貼るが、その日以来、おかしなことが起き始める。
 彼が仕事で留守にしている間、部屋が何ものかに荒らされている。
 しかも、数時間もの間、暴れまわっているらしい。
 日を重ねるにつれ、お札の猿が一匹ずつ減っているような気もするのだが…」

・「第3話 ラインババア」
「ある青年が、コンビニで深夜のバイトをしていると、奇妙な客がやって来る。
 それは女性で、「死ぬのがこわい」とレジの前でうずくまったまま、動こうとしない。
 深夜のワンオペで、どうすることもできず、とりあえず、持ち物から身元確認をしようとする。
 紙袋の中は値札のついたおもちゃばかりで、季節外れの花火や市松人形などがある。
 スマホがあり、見ると、ラインにメッセージが入っていた。
 送信者は彼女の「おばあちゃん」で、躁鬱病の気のある孫を捜していた。
 青年は祖母にコンビニの場所を教え、迎えに来るのを待つのだが…」

・「第4話 寄り道」
「金曜の夜。
 サラリーマンの男性が飲み会の後、帰りの電車に揺られていた。
 飲み過ぎたせいか、記憶がほとんど残っていない。
 何か「珍味」らしいものを皆から寄ってたかって食べさせられたような記憶が断片的に残っている。
 また、何だか過去に取り返しのつかないことをしてしまったような気も…」

・「第5話 子宮の幽霊」
「兄が、休日出勤の日、昼間なのに家に帰ってくる。
 彼はブラウン管のテレビをどこからか拾ってきていて、以来、仕事には行かず、ずっと布団の中にこもるようになる。
 妹は兄が過労か鬱ではないかと心配するが、どうも様子がおかしい。
 兄の身体は日々縮みつつあった。
 ある日、「占い師のようなもの」と名乗る白髪の男が彼女に話しかけてくるのだが…」

・「第6話 予知」
「ある高校生の友人。
 彼には予知能力があった。
 両手をねじって組み合わせて、その間から覗くと、30分先の未来が視えるという。
 ただ、一回だけ、未来が視えないことがあった。
 ある日、電気屋を一人でぶらついていると、妹と同じ年頃の女の子を見かける。
 彼女の未来が視えず、気になり、彼女の後をつけると、彼女は廃墟の建物に行き、ある一室で姿を消す。
 彼女が消えた場所には「白い穴」があり、それは薄れて消えてしまう。
 彼は「白い穴」について考えを巡らすのだが…」

・「第7話 水犬」
「塩野と宮野は、オカルト研に所属する女子高生。
 二人は「地下世界への入口のある路地」の噂を聞き、その場所を訪れる。
 そこには「マンホール」が一つだけ。
 マンホールは底が深くて、中を覗き込んでも、何も見えず、「ドドド」と水の流れる音だけが聞こえる。
 宮野が身を乗り出して、中を覗いていると、彼女の髪留めが中に落ちてしまう。
 だが、彼女は拾いには行かず、急に塩野に帰ろうと言う。
 翌日から、宮野の様子がおかしくなり、数日後からは学校を休み、連絡が取れなくなる。
 塩野が心配して、彼女の家を訪ねると、宮野は下着姿で風呂場にうずくまっていた。
 宮野がマンホールの底に見たものとは…?」

・「第8話 インターネット」
「修学旅行で熱を出し、一人宿に残った少年。
 することがなく、彼はスマホで違法動画サイトを見る。
 気が付くと、枕元にびしょ濡れの女が座り込み、彼の顔を覗き込んでいた。
 女は二か月前に急に退職したI先生に似ている。
 彼女は、自分が出ている動画を彼が観たことをなじり、「生きる価値のない生ゴミ」になる15歳になる前に、きれいな死体になった方がいいと話す。
 どうやったら助かるか、彼が必死に考えていると、スマホからわらわらと無数の小さな影がわき出てくる。
 女はそれは「再生数」だと叫び、彼はその影を次々と潰していくのだが…」

・「第9話 ノストラダムスの思い出」
「ノストラダムスの大予言が流行していた頃。
 小学生達は世界の滅亡に震え慄いていた。
 その中で、ゆうやという少年は冷静で、「四次元」に逃げればいいと話す。
 そして、カッターを突き刺したキューピー人形をアンテナとして、四次元にお祈りの呟きを拡散させることが必要と主張する。
 お祈りが四次元人に届くためには、痛みが必要で、子供達を殴り合いをしながら、お祈りに励む。
 ある時、一人の少年が偉そうなゆうやに腹を立て、彼を突き飛ばすと、一瞬、UFOが姿を現す。
 子供達は、ゆうやの心の出す声が一番、四次元人に届くのではないかと考えて…」

・「第10話 死者の書」
「とあるアニメ・ゲーム系のイベントに使われる展示場に「幽霊が出る部屋」の噂があった。
 更に、その展示場では、ゲーム・キャラのコスプレをした女性が行方不明になっていた。
 民俗学を専攻する女子大生がこの事件について調べていくうちに、明治か大正の霊能者、左右田佐代子に関係があるらしいことがわかる。
 左右田佐代子は熱心な信者を抱えていたが、当局に邪教扱いされ、獄中で謎の縊死を遂げる。
 信者達は彼女の死体を「日傘の双子社」という葬儀社に頼んで、美しく修復し、保存したらしいのだが…」

・「第11話 ひょん」
「ある田舎町につたわる伝統行事。
 それは地元の夏祭りで、緑色の鬼に頭を噛んでもらうことであった。
 その行事が子供の頃から嫌いだった女子大生は帰省した際、その行事を拒む。
 その夜、彼女がマンションの屋上でビールを飲んでいると、奇妙なことに気づく。
 空からたくさん紐らしきものがぶら下がっているのであった。
 彼女がそれを掴むと…」
(「Comic Walker」2016年10月27日〜2017年4月27日、2018年1月25日配信分)

 原作の「KATARIBE.BOT」は実在の人物ではなく、ツイッターにて、文章をコラージュして、奇妙な予言を流す「物語自動生成エンジン」です。(今はもう存在していないみたい。)
 予言の例として挙げると、こんな感じ。
「アナタは、会社の帰り、食べてはいけない食べ物を口にした。
 そのため、薄い死体にベッドの下に住みつかれた。
 あなたが助かるには、
 あなたの妹に似た犬に呪文を唱えるしか術はない。」
 と、まあ、こんな不穏な(電波な?)予言を大量に生産していたらしいのですが、この予言を漫画化したのが、この作品です。
 でも、こんな予言をそのまま漫画化はできないため、予言から幾つかキーワードを抜き出して、独自に漫画化したもので、舟先生のオリジナル作品と言ってもいいと思います。
 全てがとは言いませんが、奇想の冴えた作品が多く、なかなか読みごたえがあります。
 特に、「ラインババア」と「ひょん」は実に不気味で、単行本の中での白眉です。

2022年12月18日 ページ作成・執筆

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