内田春菊「内田春菊ホラー傑作選 隣人」(2002年9月10日初版発行)

 収録作品

・「私が何をしたっていうの」(『あなたの世間体』集英社)
「マンションに引っ越してきた若夫婦。
 妻はスタイリスト、夫はコピーライターの共働き。
 二人は平穏無事に暮らしていたが、次第におかしな電話や騒音に悩まされるようになる。
 彼らに嫌がらせをする者達の正体は…?」

・「若妻にやる気をなくさせる方法」(短編小説/『息子の唇』集英社)
「十歳も年下の女性と結婚した息子への、姑からの過激なアドバイス」

・「働く妻にやる気をなくさせる方法」(短編小説/『息子の唇』集英社)
「仕事のために家庭をおろそかにする妻を持つ亭主に向けた、ある男性からの過激なアドバイス」

・「クユクユがあばれる」
第一話 『みんなのマリアになりたい』主演女優 愛野十美依さん(『話の特集』1988年三月号)
第二話 女子高生 原田智美さん(『話の特集』1988年四月号)
第三話 ナイーブ青年 島野淳くん(『話の特集』1988年五月号)
第四話 虫歯が痛かった森本直樹くん(『話の特集』1988年六月号)
第五話 女子大生 佐藤真季子さん(『話の特集』1988年七月号)
第六話 会社員 小野静夫さん(『話の特集』1988年八月号)
第七話 OL 丹野まな美さん(『話の特集』1988年九月号)
 シュールな第四話を除いて、日常の人間関係が異常性を帯びるものとなる、連作短編小説

・「負けたくない」(1992年「ハロウィン」9月号掲載)
「ルリはサトコに対する嫉妬心でいっぱい。
 サトコの持っているものは何でも欲しいし、サトコのすることは全部、自分への当てつけとしか思えない。
 彼女への敵意を解消するため、ルリは「うらみ日記」をつける。
 しかし、ある日、「うらみ日記」を母親に見つかってしまう。
 日記は処分されるのだが…」

・「部分」(『呪いのワンピース』朝日ソノラマ)
「体育の時間の後、主人公(のまちゃん)は、まりちゃんに頼まれ、彼女の小物入れを体育倉庫に探しに行く。
 倉庫の隅に小物入れはあったが、何故か、その近くに掌の跡があった。
 更に、まりちゃんは主人公の背後に、男の子の幽霊を視たと言い出す。
 これがきっかけとなってか、後日、別の女子生徒が、体育倉庫で幽霊を目撃したと言い出し、騒動となる。
 少女達はこっくりさんを呼び出し、幽霊のことを聞くのだが…」

・「すてきなボーナス・ディ」(『ブキミな人々』福武文庫)
「ボーナス支給の日、由美が家に帰ると、母親が二階から転落死していた。
 母親の死体の運ばれた病院にタクシーで向かう途中、彼女は母親のことを回想する…」

・「田中静子14歳の初恋」(『人間みな病気』福武文庫)
「DV野郎の父親と、父親の言いなりの母親に勉強のことだけを言われてきた少女、田中静子。
 彼女の唯一の友人は、クラスで彼女の次に成績のいいM。
 彼のためなら何でもしてあげたいと思い、彼女は彼に身体を開くのだが…」

・「あとがき」
・香山リカ「解説」

 「身のまわりにいる人間」(p256)をテーマにしたホラー作品集です。
 漫画よりも小説の方が遥かにエグく、「ホラー」なんて言葉を軽くとび越してしまったものもあります。
 この沸き立つような生臭さは、鈍感な男の私には一生、理解できないものかもしれません。
 一方、漫画の方は、作者のキュートな絵柄が、生々しさを多少、緩和して、より親しみやすいよう思います。(でも、やっぱり、かなりドロドロしてますがね。)

2018年8月27日 ページ作成・執筆
2022年7月26日 加筆訂正

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