清原紘「ツミツキ」(2009年9月26日初版発行)

 ある地方の町。
 この土地には「罪憑き」という妖怪伝説があった。
 「罪憑き」とは「人の罪悪感に憑く鬼」で、その罪を食べ、最後には憑かれた人間を喰い殺してしまうという。
 町外れにある神社には「神様が罪を食べてくれる」という噂があるのだが…。
 そして、その神社に住む黒江(クロエ)という青年は罪憑きを狩るものであった…。

・「第一話 篠原繭」
「秋、高田千夏は東京からこの町に引っ越してくる。
 転入した高校のクラスで、彼女は篠原繭という女生徒のことが気になる。
 篠原繭はクラスで完全に孤立しており、千夏が話しかけても、決して心を開こうとはしない。
 千夏は繭がいじめにあっているのではないかと疑うが、ある時、その理由を黒江から聞かされる。
 去年、繭と一緒に下校した女生徒が謎の失踪を遂げていた。
 繭はその事件と関わりがあるのであろうか…?
 そして、彼女の身体に起こりつつある異変とは…?」

・「第二話 望月美紀」
「望月美紀は教師の春日井とひそかに男女の仲であった。
 許されぬ恋に罪悪感を抱き、また、最近は身体の調子もおかしい。
 ある日、彼女は神社に呼び出される。
 黒江は彼女に、先日、春日井の取り巻きの一人が通り魔に襲われたと教え、心当たりがないか尋ねる。
 どうやら犯人は「罪憑き」らしい。
 その夜、春日井にまとわりついている須藤という女生徒が何ものかに襲われ、意識不明となる。
 翌日、美紀は春日井から生活指導部に呼び出されるのだが…」

・「第三話 麻倉真琴」
「放課後、麻倉真琴が校舎裏で化物が何人もの生徒を殺し、その化物を黒江という生徒が退治するのを目撃する。
 不思議なことに、その事件も黒江の事も誰も知る者はなかった。
 残された生徒名簿をもとに、真琴は神社に黒江を訪ねる。
 黒江が彼女に「罪憑き」について話すと、彼女は「罪憑きになる方法」を教えて欲しいと頼む。
 彼女には殺したい相手がおり、それは父親であった。
 父親は仕事が忙しく、家族を全く顧みない。
 そんなある日、母と弟がドライブに出かけ、車が海に転落し、二人は帰らぬ人となる。
 だが、司法解剖で弟の身体中に虐待の痕が見つかる。
 以来、彼女は母と弟のことを考えると、声が聞こえるようになるのだが…」

・「第四話 高田千夏」
「性格も明るく、クラスの人気者だった高田千夏。
 だが、一年後、彼女はすっかり陰気になり、学校もしばしば休むようになる。
 クラスメートの霧島小雪は彼女を心配するが、返ってくるのは拒絶のみ。
 ただ一つ、千夏は「罪憑き」について話し、これ以上、自分に構わないよう警告する。
 そんな最中、女生徒の連続殺人事件が発生する。
 また、千夏の周囲に黒江という青年が姿を現わすようになる。
 そして、霧島小雪が知った真実とは…?」

・「第零話 クロエ」
「一人の少年が口減らしのため、化物の出る山に捨てられる。
 その彼を救ってくれたのが、葛葉という銀髪の娘であった。
 彼女は妖(あやし)を滅する「祓い人」で、狐を従えていた。
 彼女は妖と戦うため、身のうちに化け物を飼いならしていると話す。
 少年は葛葉としばらくの間、一緒に過ごし、それは少年にとって最も幸せな時間であった。
 だが、葛葉に異変が起こるようになり、妖怪と戦った後に寝込むようになる。
 そして、少年が背負うこととなる運命とは…?」
(「エースアサルト」2008年AUTAMN、WINTER、2009年SPRING/「ヤングエース」2009年Vol.2)

 コミカライズ作品で知られる清原紘先生の初のオリジナル単行本です。
 後書きによると、ある手術(漫画家さんはなりがちかも…)の後、「生きることとは何か」を考え、描いたものの、「女の子がひたすら陰惨な目にあう漫画」になってしまったとのことです。
 確かに、その通りのダウナーな作品で、どのエピソードも救いはほどんどありません。
 それでも、作品自体の出来は良く、もしも機会があれば、続編を描いていただきたいものです。

2023年9月13日 ページ作成・執筆

角川書店・リストに戻る

メインページに戻る