日野日出志「ゾンビマン」(1999年7月10日初版発行)

 収録作品

・「Mr.ジョーカー」(「ザ・ホラー」1997年8月20日号)
「1枚目のカード 刃物を恐がる少女」
 彼女は、鋏、カッター、包丁、メス…と刃物なら何でも恐れていた。
 と言うのも、交通事故の手術の際、彼女の身体は顔以外、切り刻まれ、縫合されていたからであった。
 彼女は刃物への恐怖を克服するために…。
「2枚目のカード 時計を恐がる男」
 時田は成金商事に勤めるサラリーマン。
 彼は不器用な男で、常に時間に追われているように感じていた。
 次第に、彼は時計が自分を殺そうとしていると妄想を抱くようになり…。
「3枚目のカード 鏡を恐がる女」
 OLの美子は小学生の頃から自分の容姿にコンプレックスを持ち続けてきた。
 いくら化粧をしても、容姿の欠点を隠すには至らず、美しくなりたいと強く願う。
 ある夜、鏡の中に何者かが現れ、彼女に綺麗な顔になりたいかと問う。
 ならば、毛虫を百匹踏み潰すよう言われ、美子は実行に移す。
 すると、髪と眉毛が美しくなっていた。
 次に、猫の眼球を抉り出すと、彼女の目はぱっちりとした目となる。
 だが、美しくなる条件は次第に厳しくなっていき…。
「4枚目のカード テストを恐がる少年」
 星野はテストが苦手な少年。
 彼は全科目0点で、学校でも家でも怒られてばかり。
 ある日、家で勉強をしていると、消しゴムをベッドの下に落とす。
 彼がベッドの下に潜りこむと、ドクロ印の消しゴムがあった。
 この消しゴムはインクを消すことができ、彼はテストも問題集も全部消してしまう。
 翌日、このせいで彼は教師に怒られるのだが…。

・「ゾンビマン」(「ザ・ホラー」1998年4月20日号)
「存美正吾は元・金メダリストの警察特別狙撃隊員。
 彼は非常に腕が良く、13人の犯罪者を射殺していた。
 しかし、そのうちの一人の兄が彼を逆恨みして、彼の妻子を人質に取り、家に立てこもる。
 犯人は、存美にガソリンを全身にかぶるよう要求し、彼は火だるまとなる。
 犯人は射殺され、妻子は無事だったものの、存美は全身に大やけどを負い、死亡する。
 その夜、彼の司法解剖が警察病院で行われる。
 解剖が始まった時、落雷があり、存美の死体はプラズマに包まれる。
 これにより、彼は復活するが、生体反応は皆無で、いわば「死人間」となる。
 警察病院の院長は、彼の身体の腐乱を防ぐ装置を発明し、存美に人工皮膚と偽の記憶を与える。
 こうして、存美は、ニューヨーク警察の特別狙撃隊員ので日系三世のケン・ゾンゲルマンとして生きることとなるのだが…」

・「腐った雨」(1996年6月「サスペンス&ホラー増刊号」)
「山田一郎は小学五年生の少年。
 梅雨で雨模様の中、電信柱の陰から彼の部屋を見つめる謎の男の姿があった。
 更に、一郎は、大量のミミズを吐いたり、下水道でネズミの群れに襲われて、骨だけにされたりと奇怪な夢を見る。
 彼が下水道の夢を見る理由とは…?」

・「蝋人形館」(1995年6月「サスペンス&ホラー増刊号」)
「茂田という少年は学校にも家庭にも居場所がなかった。
 あまりに愚図なためにクラスでは孤立し、家では成績優秀な兄と比較されてばかり。
 ある夜、賑やかな音で目覚めると、ピエロの恰好をしたチンドン屋が通りを歩いていた。
 ピエロが撒くチラシは蝋人形館について書かれてあった。
 気が付くと、茂田の横にピエロがいて、彼は少年を真夜中の蝋人形館に案内する。
 蝋人形館には処刑道具にかけられた人間の蝋人形が幾つも展示されていた。
 その蝋人形は家族やクラスメート、学校の先生にそっくり。
 そして、茂田に渡されたリモコンのスイッチを押せば、処刑道具が作動し、蝋人形を処刑する。
 しかも、組み立てなおすと、何度でも処刑が再現できるのであった。
 それが夢か現実かわからないまま、茂田は毎夜、蝋人形館を訪れるのだが…」

 「スキスキ拷問ショー」が展開される「蝋人形館」がお気に入り。
 ラストのドリル脳天貫通はやっぱり「地獄の門」の影響?

2023年2月14・15日 ページ作成・執筆

角川書店・リストに戻る

メインページに戻る