鈴原研一郎「人造少女」(220円/1966年8月頃完成)
「両親を亡くし、叔父の家で世話になっている苦学生、土田英也。
彼は、東京の病院でインターンとして勤める。
ある日の昼休み、病院を出ようとした彼の前に、美しい少女が現れる。
少女はひどく青ざめ、「父がこわい…」と呟くと、彼の胸に崩れるように倒れ込む。
彼は大声で人を呼ぶが、少女の身体はすでに冷たくなっていた。
その少女は、堺啓志郎博士の娘、アリサであった。
堺博士は「人工細胞論」を唱え、狂人として学会を追われていたが、英也は彼に心酔していた。
娘の死体に対面しても、堺博士は全く驚かず、平静を保つ。
ただ、司法解剖に関しては、頑として受け付けない。
その夜、当直だった英也は、堺博士が娘の死体を安置室から盗み出す現場を目撃する。
警察が捜査に乗り出すものの、堺博士の居所は皆目わからない。
彼は堺博士の行動に興味を持ち、休暇を取り、博士の居所を探す。
しかし、全く手がかりはなく、無駄に時は過ぎ、三日目の夕方、彼はある村の寺に一夜の宿を求める。
和尚に堺博士について尋ねると、その寺の墓所に堺アリサの墓があることが判明。
和尚によると、五日前に、堺博士が娘の死体を埋葬したとのことであった。
彼がこの付近を探索すると、死んだはずのアリサを河原で発見する。
驚いた彼が彼女のもとに駆け寄ると、その身体は恐ろしく冷たい。
次の瞬間、彼は頭を何者かに殴られ、気が付いた時には、日は落ち、アリサの姿はどこにもなかった。
寺に戻ると、和尚は彼に堺博士の秘密を探るのをやめて、この地を早く離れるよう忠告し、彼に対して門戸を閉ざす。
とりあえず、東京へ戻るが、堺博士の件は、アリサの埋葬のこともあり、警察は手を引いていた。
だが、彼はアリサのことが忘れられず、再び例の村を訪れる。
彼が川を遡っていくと、偶然にも、川岸でアリサと再会する。
そこで、彼は彼女から自身の秘密を聞くこととなる。
彼女は父親の「人工細胞」の実験材料にされ、普通の人間ではないのであった…」
鈴原研一郎版「フランケンシュタイン」なのでしょうが、先生の他の怪奇マンガと同じく、「深み」はありません。
まあ、基本的に、小中学生向けのジュブナイルといった趣きですので、それはそれで構わないのであります。
今読んだら、他愛のない内容ではありますが、ラスト、人造少女が滅びる描写は(ちょっぴり)ショッキング。
個人的には、本文よりも後書きの方が、先生の人柄に触れることができて、面白かったです。
・備考
ビニールカバー貼り付け。本文、ところどころ、シミのひどい箇所あり。後ろの遊び紙に貸出票の剥がし痕あり。
2017年10月23日 ページ作成・執筆