鈴原研一郎「呪いの魔球」(220円/1964年頃)
「王子高校のエース、潮孝司は、ジャイガースの入団を目前に控えながらも、青酸カリで自殺を遂げる。
遺書はなく、自殺の理由はさっぱりわからない。
更に、ジャイガースの契約金、二千万円の行方が全くわからなくなっていた。
潮孝司の後輩、神津勝彦は、孝司の妹、奈美と協力して、契約金の在処を探し出そうとする。
一方で、潮孝司の兄、竜太もその契約金を血眼で探していた。
潮竜太は下っ端ヤクザであり、勝彦は彼が潮孝司の死と関係あるのではないかと考える。
潮家は契約金の返還を迫られる中、勝彦と奈美は、潮孝司の右肩が実は再起不能寸前だったことを知る。
そして、そんな彼をだまして、ジャイガースと契約させたのが、竜太であった。
竜太は、失敗をやらかして、組に大損をさせており、一千万円用意できなければ、命はなかった。
しかし、契約金は見つからず、組員達に監視され、絶体絶命。
そんな時、奈美はテレビ番組を観て、契約金の在処に勘付く。
同じ頃、勝彦は、潮孝司の形見のボールを手にして、甲子園のグラウンドに立っていた…」
あまり馴染みのないジャンル、「野球スリラー」です。(注1)
まず、タイトルからして「『呪いの魔球』って何…?」と、もやもやした疑念を否応なく抱かせてくれます。
次に、魔球と言うよりは、殺意に溢れたデッドボールを思わせる表紙からして期待が高まるのですが、すんません、これ、怪奇マンガとは言い難いです。
「野球スリラー」と称しているものの、他愛のないサスペンスが、野球漫画に捩じ込まれているだけで、大して怖くありません。
まあ、このマンガは、鈴原研一郎先生が一年半で二十冊も描いた「高校野球シリーズ」の最終作ということで、基本は青春マンガです。「あとがき」にて、今回はちょっと毛色の変わったスリラー風に仕上げたと鈴原研一郎先生は書いておりますので、青春マンガにスリラーの薬味をちょこっと効かせた程度であります。
それはそれでかまわないのですが、肝心の「魔球」がマンガに全く出てこないのは、大問題です!!
でも、このタイトルと表紙に惹かれて、ここまで紹介文を書いてしまったので、鈴原研一郎先生、貴方の勝ちです。
・注1
この手のマンガで最も有名なものは、城たかし「呪われた巨人ファン」(ヒバリ・ヒット・コミックス)でしょう。
今や立派なプレミア・マンガになってしまいまして、復刻までされちゃってます。
巷には、マニアの賛辞が溢れかえっておりますが、個人的には、趣味ではないです。
・備考
ビニールカバー貼り付けあり。カバーの剥げや裂け、歪み等、痛みひどり。糸綴じあり。p58、登場人物の髪に「リボン」の落書きあり。pp75・76、pp87・88、コマ内に欠損。後ろの遊び紙の余白に「B」の落書きあり。後ろの遊び紙に貸出票の剥がし痕あり。
2017年4月15日 ページ作成・執筆