西たけろう「燃えおちる雲」(220円)
「第一章 燃えおちる雲」
「一月前に恋人を亡くしたリカは、その痛手からいまだ立ち直ることができないでいた。
草原で亡き恋人を想い、泣き伏せるリカの前に、一人の女性が現れる。
その女性は口を開かず、テレパシーでリカの心に話しかけてくる。
彼女は本のセールスマンであることを明かし、もし本を買ってくれるなら、サービスをさせていただくと告げる。
そのサービスとは、客が一番望むことを手助けするというものだった。
リカは本を買う代わりに、亡き恋人に会うことを望むと、雲の形がその恋人の姿に変わる。
風が吹いて、雲の形は崩れてしまったが、女性の言葉通り、恋人と再会することができた。
リカは契約書を交わし、本を家に持ち帰る。
が、大判なその本は、精神病院の電話番号を切り貼りしただけのものであった。
とは言うものの、その本を買うたびに、恋人の姿を見ることができるとリカは考える。
一週間後、代金を払うため、リカは最初に出会った草原に出向くのだが…」
「第二章 衝突する雲」
「三月下旬の北海道。
三人の少女が草原で話し合っている。
漫画家志望の彼女達はそれぞれの道を歩もうとしていた。
デッサンの基礎を身に着けるために東京の美術学校に通う者。
ただひたすらマンガを描くことを決心した者。
雑誌等に作品を発表する機会を得ながらも、漫画家になる目的を見失ってしまった者。
答えの出ない議論の最中、彼女達はある異変に気付く。
空、風に流されていく雲の中に、風の流れに逆らって動こうとしない雲があることに…」
「燃えおちる雲」は面白いことは面白いのですが、ラストがちょっと難しいかも。
なかなかヒドい話ではあります。
「衝突する雲」は西先生の心の葛藤を描いたものなのかもしれません。
手塚治虫や石ノ森章太郎のような天才はさておき、普通の人間であれば、全てのことに秀でることは不可能です。
それならば、それはそれで仕方がないと受け止めて、ただただ自分の信じた道を進もうという心情を表明したのかもしれません。
・備考
ビニールカバー貼り付け。糸綴じあり。
平成27年10月30日 ページ作成・執筆