池川伸治「フローラと獣 獣の巻」(220円/1967年7月2日完成)
「次郎は、みきの奇行や、兄の彫刻に対する父親の態度に不審を抱く。
彼がみきに話を聞いたところ、彼女は、彼の家の広間に石の台座があり、そこから悲しげな声が聞こえるという夢について話す。
家の広間には、その夢の通りに石の台座があったが、家の使用人は誰も詳しいことを知らない。
そこで、次郎は父親にその台座について尋ねると、父親はそれにまつわる過去について語る。
四十年も昔、彼には、さくらという名の姉がいた。
夢見がちな少女であったさくらは、広間の台座に据えられていた一角獣の彫刻を何故かひどく気に入っていて、片時も離れず戯れていた。
しかし、病弱な身の上故に、一角獣の名をうわごとで呼びながら、あっけなくこの世を去ってしまう。
父親は姉の死を一角獣の呪いと捉え、その彫刻を処分し、台座だけが残ったのである。
そして、今、姉の生まれ変わりとして、みきがこの世に現れたと父親は考える。
一方、一郎は、フローラの彫刻を何度作っても、みきの姿形になってしまうことに業を煮やし、彼女の殺害を企てる。
日増しに一角獣に憑りつかれていく、みきの運命は…?」
この巻では原作者の京・速さんの名が消えておりますが、池川伸治先生のオリジナルなのでしょうか?(謎です。)
ストーリーは、リインカーネーション(転生)やピグマリオン(彫像と人間の間の愛)といった要素が盛り込まれて、一風変わったファンタジー仕立てです。
でも、個人的にはいつもの破天荒さがなく、ちょっぴり物足りない印象。
また、みきがフローラの彫刻を壊した時に、彫刻から血が流れた説明がないことも、ちといただけません。(まあ、貸本マンガ、それも、池川作品にはざらにあることですが…。)
とは言え、内容はまとまっており、大きな破綻はありませんので、時代を考慮に入れたら、良作だと思います。
ちなみに、作中に尾頭良先生の「天と地と空と」という反戦マンガの短編、巻末に池川伸治先生の「乙女心と秋の空」というショート・ショートが載っております。
・備考
状態悪し。Y文庫仕様(カバー裏に新聞紙等による補修。表紙を本体から取り外し、本体を何らかの厚紙で覆っている)。糸綴じあり。カバーの一部に剥がれあり、また、背表紙色褪せ。
2017年9月8日 ページ作成・執筆