江戸川きよし「半獣人間」(220円)



「ある町で連続する失踪事件。
 犯人は、動物病院を営む獣医で、男性を誘拐しては殺害。
 殺した男性から生殖ホルモンを採取し、それを雌ライオンに注射して、半獣人間をつくろうとしていたのであった。
 そのことを偶然に知った、16歳の高梨美樹子を獣医は殺そうとするも、逆に雌ライオンに襲われて、死亡。
 それから、三年。
 元・動物病院であった廃屋で、雌ライオンにより、ライオンと人間の合いの子である半獣人間が密かに育てられていた。
 育ての親が殺されたため、町に出てきた半獣人間は高梨美樹子に恋をする…」

 粗筋だけを読めば、何だか期待してしまいますが、ひどい出来です。
 読んだ範囲で推測いたしますと、江戸川きよし先生の貸本怪奇マンガは「成り行き任せで描きとばした」感があります。
 そのため、とても常人には思いつかないような発想が極稀ににありまして、ストーリー等は全く忘れても、作品自体は妙に印象に残ってしまうというビミョ〜なことになってます。

 特に印象深かったのは以下の通り。
 このマンガの冒頭、「世の中にはどうしても人間にすかれないものがいる」と味のある始まり方をするのですが、蠍、蛇、豹、犀、象(犀、象は「すかれない」ことはないと思う…)の後に、「半獣人間」の出番と相成るのですが、これが手足の生えたワニ…(注1)。
 バカバカしさを通り越して、シュールであります。
 また、獣医が男性を誘拐するための方法も回りくどくて、ヘンテコです。
「金の入った財布をわざと落とす」→「ネコババした青年が飲み屋へ」→「飲み屋から酔っ払って出てくるのをひたすら待ち、路上で寝込んだところを誘拐」
 この方法で、五人も誘拐しておりますので、意外と効果的なやり方なのかもしれません。ただ、そんなことをしなくても、飲み屋のあたりで網を張ってりゃ済むような気がしますが…。
 そして、誘拐した男性から生殖ホルモンを採る方法も、乱暴極まりなく、問答無用で記憶に刻印されます。
「男性に麻酔薬を注射」→「巨大な丸鋸で上半身と下半身を切断」→「下半身から生殖ホルモンを採取」

…って、わざわざ胴体を真っ二つにする必要ありませんやん!!

 とまあ、こういった感じの「ゆるゆる」な発想に満ちており、一部のスキ者はカンゲキしているのかもしれませんが、絵もストーリーもスカスカで個人的には駄作だと思います。
 ちなみに、この作品に出てくる「半獣人間」はライオンの身体に、陰湿そうな親父顔(事実、性格は陰湿)を当てはめたもので、ちっとも同情できません。
 いやはや、ここまで「深み」というものがないと、それはそれで清々しいものがあります。

・注1
 伊藤潤二先生の奇作「ギョ」に影響を与えたとか!!(テキト〜言ってます。)

・備考
 カバー、ビニールカバーの剥がし痕があり、痛みあり。糸綴じあり。読み癖あり。切れ、汚れ、シミ、小欠損が無数にあり、書ききれず。後ろの遊び紙に貸出票の剥がし痕あり。

2016年2月21・22日 ページ作成・執筆

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