さがみゆき「墓場への散歩道」(230円)
「霧の深い夜。
「ホテルみゆき」に、身なりの上品な若い女性が部屋を求めて来る。
彼女は一か月の宿代を前払いし、二階の部屋を取るが、ホテルの女主人の娘、美香に墓場のことをしきりに聞く。
しかも、女性は夜遅くに散歩と称して外出するのであった。
この女性のことが気になって仕方のない美香は女性の後をつけるが、女性は美香のボーイフレンド、たけしの家の前に立ち止まり、たけしの部屋をじっと見つめていた。
翌日、美香はたけしと女性のことについて話し合うが、女性が気味悪いという印象は共通する。
その晩も女性は外出し、その間に美香は女性の部屋に忍び込む。
そこで、美香はたけしに似た男性と女性の写っている写真を見つけ、女性の後を追うべく外に飛び出す。
すると、仲睦まじく寄り添って歩くたけしと女性の姿があった。
嫉妬心に駆られた美香は二人に声をかけると、女性はその場を去り、たけしは女性と仲良くしていた間の記憶を失っていた。
そのうち、たけしはやつれ、美香に対してよそよそしくなっていく。
この女性の正体は一体何者なのだろうか…?」
本編よりも「後記」の方が味わい深いのであります。
心中というものに絶対に反対と主張する、さがみゆき先生は続けてこう書いておられます。
「えっ? 私がそんなにはげしい
恋をしたことがないから
こんなことをいえるのですって?
そうかしら」
佐藤まさあき先生や池川伸治先生との間の諸事情を考えますと、「余裕」どころか、ずっしりとした「貫禄」を感じるのは私だけでしょうか?
女性として、母親としていろいろと揉まれてきた故の「タフネス」…ほぼ100%「生活」のために描いていたと思われる、貸本怪奇マンガからもそれがガンガン伝わってきます。
そんな「タフすぎて そんはない」な内容の後の「後記」は心からほっこりしますね。
・備考
糸綴じあり。カバーを留めているセロテープが変色。前後の遊び紙に「注意書き」「貸出票」を剥がした痕あり。前後の見返し、p1上部、カバーの裏側に「30×499」のスタンプあり。小口の下部に鼠にかじられた痕あり(昔、住んでいた下宿に鼠が出たんだわ〜)。
平成27年10月31日 ページ作成・執筆