西たけろう「不死鳥の刺青」(220円)

「天才少女音楽家、白石奈津江の運転する自動車。
 海沿いの、見通しの悪いカーブで、車は女性を撥ねてしまう。
 その瞬間、巨大な鳥の姿が奈津江達の前に立ちふさがる。
 車は海に転落、幸いにも奈津美と同乗者に命の別状はなかった。
 しかし、現場の状況から、奈津美に人を轢いた疑いがかかる。
 その時、入院中の奈津美の前に、車に轢かれたはずの女性が現れる。
 その女性は、政界の黒幕、黛作之進の娘、黛ミチであった。
 彼女の証言で、奈津美の疑いも晴れ、これがきっかけとなって、奈津美と兄の宏は彼女と親しくなる。
 だが、黛ミチには秘密があった…」

「さまよえるユダヤ人」をモチーフに、「不死の人」の悲哀をテーマにした作品です。
 それに、エジプト神話の「不死鳥」を絡めておりまして、読み応えがあります。
 程よくまとまった佳作ではないでしょうか。
 また、後記の読者ページの西先生の「熱さ」も見逃せません。
 生真面目でありながら、ユーモラスな面を見せ、一本気なところもあれば、皮肉屋なところもあり、シリアスでありつつも気さくな西先生。
 この本が出てから、ほぼ半世紀経ちますが、いまだに活気が伝わってきます。

・備考
 背表紙、上部に欠損あり。後ろの表紙に折れあり、カバーにも折れ痕あり。本文に小さなシミ多し。

平成27年10月3日 ページ作成・執筆

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