好美のぼる「霊獣」(230円)



「照美は、勝気で短気、しかも、我の強い女の子。
 照美のクラスで、女児の失踪が相次ぐ。
 行方不明になった女児は皆、照美が罵ったり、毒づいた子ばかりであった。
 そのことに気付いた照美は自己嫌悪に陥り、自分なんか死ねばいいと口に出す。
 しかし、それは霊獣の仕業であった。
 霊獣とは、天体のどこかにある霊星からの使者であり、霊星とは「人間のみにくい心をその肉体と共に吸いよせて刑罰にかける恐ろしい星」である。
 霊獣達は、醜い言葉を吐いた人間も吐かれた人間も霊星に連れ去り、醜い心を強制するために、数々の拷問にかけるのであった。
 霊星に連れて来られた照美の運命や如何に…?」

 怪作です。
 表紙には「S.F少女スリラー篇」と銘打ってあり、地球とは別の星の話ではありますが、絶対に「SF」ではありません。(注1)
 また、この霊獣の容姿が凄過ぎます。
 白髪を長く伸ばした、全裸の人物の腰部に、竜(?)のようなものが貫くように、前後に生えているという、どこか卑猥なもの。
 女の子の寝室に忍び込んで、寝ている女の子に、竜が口から舌を出している描写は、変質者のオーラ満点、はっきり言って、やばいです。
 しかも、こいつら、女の子ばかり霊星にさらっては「スキスキ拷問ショー」(注2)を展開しており、もしかしたら、好美のぼる版「悪魔のしたたり」なのでしょうか?!(下記の画像を参照のこと)


 う〜ん、「SF少女スリラー」というより、コリャ、「地獄巡り」ですね。
 ただ、ヒワイな霊獣の指図の下に、ボロボロの服の少女達が互いに責め苛む「地獄」の描写は、陰惨というよりも「いかがわしい」と形容した方がしっくりきます。
 昔の地獄絵師は想像しうる限りの陰惨さや残虐を描き出そうとしたとのことですが、好美のぼる先生はここに何を描こうとしたのでありましょうか?
 ここに、好美のぼる先生の秘密を読み解く鍵があるのでは?!(テキト〜言ってます。)

・注1
 激しくネタバレですが、一応、「SF」ちっくなキャラは出てきます。
 後半、霊星は「醜星」からの襲撃を受けるのですが、この「醜星」の使者は、H・G・ウェルズ「宇宙戦争」に出てくるようなタコ型宇宙人です。
 「醜星」では人間にみっちり醜い心を叩き込む星とかで、醜星の使者達は、霊星の霊獣を皆殺しにして、そこの少女達を醜星に送ろうとするのですが…う〜ん、こりゃ、確かに「SF」ではないけども、なら、一体何と形容したらいいのか、わからない…。

・注2
 ハーシェル・ゴードン・ルイスのカルト・ホラー映画「2000人の狂人」(米/1964年)を彷彿させる描写もちらほらあるのが、嬉しいところです。
 「2000人の狂人」は低予算映画ながら、個人的には、何度観ても飽きない映画です。
 カリフォルニアの突き抜けるような青い空が一番の魅力でありましょう。
 そして、その澄んだ青空の下で行われる虐殺の数々…。

・備考
 ビニールカバー貼り付け。前後の見開き、青ボールペンで書き殴った落書きあり。糸綴じあり。pp13・14、pp63・64、pp77・78、pp89・90、コマ内に小さな穴あり。pp111・112、上部に4センチぐらいの裂けあり。読み癖あり。シミ・汚れ多し。後ろの遊び紙に貸出票の剥がし痕あり。

2016年12月14日 ページ作成・執筆

曙出版・文華書房・リストに戻る

貸本ページに戻る

メインページに戻る