西たけろう「鮫少女」(220円)
「学生生活を終え、十年ぶりに故郷の漁村に帰ってきた奈津美。
彼女はその村の村長の娘であったが、父親は五年前に病死して、母親と女中と暮らす。
ある日、母親と漁を眺めていると、網に赤い鮫がかかる。
その村では赤鮫は不吉なものと考えられており、漁師達は赤鮫を惨殺する。
その場に、左目にアザのある若い女が現れ、奈津江が帰ってきたから赤鮫が現れたと喚きたてるのだった。
翌日、奈津美は幼馴染の宏と再会する。
懐かしさのあまり、会話が弾むが、奈津美は自分の父親が病死ではなく、気がふれた後で行方不明になったと知る。
母親に問い質しても、いまいちはっきりせず、また、父親の部屋には鍵がかけられていた。
人目の届かない海岸の岩場で、奈津美が物思いに沈んでいると、海の方から彼女に話しかけるものがある。
それは赤鮫であった。
赤鮫は、奈津美の父親は殺された、と奈津美に告げる。
奈津美は父親の死の真相に迫るため、父親の部屋に忍び込むが、そこで…」
恐らく、楳図かずお先生の「半魚人」の影響があるのでしょうが、そこをうまくアレンジして、また別の作品に仕立てております。(注1)
舞台を、いまだ因習の根付く小さな漁村に据え、父親の死の真相、人語を操る赤鮫といった要素を絡み合わせて、まとまった「SFミステリー」になっております。
(とは言え、貸本マンガなのですから、隅をつつけば、いろいろとあります。そこは愛嬌ということで…。)
ちなみに、嫉妬に狂う、左目にアザのある、神主の娘(もしかして「犬神家の一族」ですか…?)がいい味出しているように思います。
・注1
怪奇映画の古典として、「大アマゾンの半魚人」(1954年/米)という映画がありました。
その影響下で、カワダ・マサキ「半魚人の復讐」(メトロ漫画出版社)という作品も描かれております。
しかし、1965年に発表された楳図かずお先生の「半魚人」が、決定的な影響を与えたのではないか、と個人的に考えております。
西たけろう先生のこの作品も然り、森由岐子先生の「奇怪な恋の物語」(貸本/ひばり書房)も然り、他にまだまだあるのでしょうが、そこまで確認が取れておりません。
(また、確認することもできないでしょう、あしからず…。)
・備考
ビニールカバーの剥げ痕あり。上部隅に若干折れあり。本文に小さなシミ多し。
平成27年10月3日 ページ作成・執筆