池川伸治・他「月夜E」(220円)
収録作品
・池川伸治「宇宙神」(1966年11月24日完成)
「クリスマス・イブ(注1)。
久美子は、クラスメートの山川の誕生パーティーを訪れる。
何故か会場はめちゃくちゃで、皆、彼女に冷たい視線を向ける。
どうやら、この狼藉は彼女がしでかしたことらしい。
久美子は家に泣いて帰るが、何が何やらさっぱりわからない。
そこに、松下が彼女の落とし物を届けにやって来る。
その落し物は「宇宙神」と書かれたお守りなのだが…」
・尾頭良「レモンの味」
「野原の大木の根元に一人、座り込んでいる少年。
隣に住む娘が彼を心配して話しかけてくる。
その娘は、彼の姉のような存在であった。
彼女はもうすぐ結婚するというが…」
・川辺フジオ「ゆきの天使」(1966年11月23日完成)
「植田ひろしはスランプの画家。
彼が山の中で苦悩していると、恋人のゆきが彼のもとにやって来る。
彼女は病気の身なのに、彼のことを心配したのであった。
彼は彼女に帰るように言うが、彼女が木漏れ日に包まれた一瞬、彼はその美しさに息を呑む。
そのまま、彼女をモデルに彼は一気に絵を描き上げるのだが…」
・さがみゆき「もうひとりのわたし」
「洋子はいつものように散歩をする。
途中、ボーイフレンドの太郎と会うはずであったが、彼は彼女の姿を見るなり、怯えて走り去る。
また、知り合いの佐山は彼女に全く気付かず、そのまま、通り過ぎてしまう。
訝りながら、帰宅すると、母親が泣いている。
両親は彼女の姿を目にすると、非常に驚き、慌ててどこかに行く。
そのうちに、洋子は息が苦しくなり…」
・杉戸光史「雪女の死」
「雪深き山村。
五郎は雪山で女性の歌声を耳にする。
その方向にも行っても誰もいなかったが、実は雪女の仕業であった。
彼が逃げる途中、行き倒れの娘を発見する。
娘はどうやら都会から来たらしい。
彼女を炭焼き小屋に運び、五郎は介抱する。
すると、小屋の外に雪女が現れ、彼を巳之吉と呼び、「今度生まれかわって 都会からやって来た」と告げる。
彼が小屋に逃げ込むと、娘が意識を取り戻す。
彼女の名は「ゆき」で、心の奥の「地獄谷に行け」という声に従って、ここまで来たと言う。
地獄谷には、彼女が遠い昔に忘れた何かがあるような気がしていた。
太郎は翌日、案内すると約束するが、ゆきは手紙を残し、一人で出かけてしまう。
彼が慌てて追うと、彼女は夢遊状態で危険な道を歩いていた。
彼女は足を滑らせ、転落するが、途中で岩の出っ張りに引っかかる。
彼がそこまで降りると、向こう側の崖に雪女が氷漬けになっていた。
雪女と太郎の関係とは…?」
・注1
この作品で池川先生はお祭り騒ぎになったクリスマスに苦言を呈しております。
1960年代の雑誌を読むと、この頃もうすでにお祭り騒ぎだった模様。
もっと遡ると、アニメ版「この世界の片隅に」では、戦前からクリスマスは(恐らく、都会限定で)商戦に用いられておりました。(片渕須直監督はテキト〜な描写はしないはず。)
いやはや、日本人って…。
・備考
ビニールカバー貼り付け。前後の見開き、小口に貸本店のスタンプあり。後ろの見開きに書き込み。pp58・59は順序を逆に印刷している模様。
2022年4月30日 ページ作成・執筆