有坂須美「アルテミス・ハーフ 幻妖学園奇譚」(1995年2月13日第一刷発行)

 高樹絵理香は人間の魔導士と妖魔一族の女との混血「亜魔化」であった。
 彼女の両親は、自らの命を賭して、獣魔を異界に封じ込める。
 だが、十年後、その封印が破られ、獣魔がこの世界に解き放たれる。
 絵理香は、半人前の魔導士、槙嶺絢と共に、獣魔たちに立ち向かう…。

・「ALTEMIS HALF序 幻獣記」
「1997年。市立のある中学校。
 絵理香の友人の里美は高校生の市村と付き合っていた。
 だが、ある夜のデートを境に、彼は家に閉じこもる。
 更に、急に「もう会わない」と彼女に別れを告げたのであった。
 里美はどうしても納得することができず、絵理香も会いに行くよう勧める。
 その頃、市村は、彼の身体の中にいる「化け物」と必死に戦っていた。
 絵理香は里美から話を聞き、彼の中に「獣魔」がいるのではないかと疑い始める。
 デートから三日後、里美は市村とようやく会うことができたのだが…」

・「ALTEMIS HALFT 幻妖学園奇譚」
「1998年、絵理香と絢は私立彩雲高校へ転入する。
 この高校は東藤産業がオーナーになってから、進学率が急上昇していた。
 更に、ここの生徒が六人、変死体となって発見される。
 死体はどれも体液を吸い取られ、ミイラ化しており、同一の獣魔によるものと思われる。
 転入初日、絵理香が学校内に入ると、小魔や霊の巣窟と化していた。
 あまりに鬱陶しく、「気砕光」でぶっ飛ばすと、常人には見えないはずだが、松永玲子という女子生徒は霊感が強く、その光を感じる。
 この絵理香の行動により、獣魔は絵理香の存在に気づいてしまう。
 そして、絵理香を抹殺するために、玲子にとり憑き、夜のプールへ絵理香たちをおびき寄せる。
 獣魔の正体とは…?」

・「ALTEMIS HALFU 魔の虜」
「絵理香はテニス部に入る。
 二年の先輩に菊上という一際練習熱心な女子生徒がいたが、彼女の肩には「小魔」が憑いていた。
 帰宅後、絢に「小魔」のことを尋ねると、小魔は人に憑くことはないが、人の精神に捕らえられることがあると言う。
 それは人の欲求・欲望が異様に強い時に起こり、小魔は人の精神や生気を食べて成長するため、無理にでもその欲求や欲望を叶えようとする。
 しかし、小魔と精神交換をするうちに、精神や生気を食べられた人間は精神失調を起こしたり、最悪の場合、発狂してしまう。
 絢に言われ、絵理香は菊上先輩を人気のない場所に呼び出し、小魔を消そうとする。
 だが、菊上は小魔をかばい、また、絵理香も人と妖魔が理解し合い、共存することを夢見て、手を下すことができない。
 その絵理香の期待に反して、菊上は徐々に精神が荒廃していく。
 遂には、試合中に倒れ、絵理香が医務室に向かうと…」

・「パラレルミステリー 月光夜奇譚」
「中学生の絵理香と絢は恋人同士。
 絵理香は聖香西校に合格するも、一緒に進学するはずだった絢は、父親の転勤で、神戸に行かなくてはならなくなる。
 校舎の屋上で、二人が別れを嘆いていた時、空間が揺らぐと、いつの間にか校舎の屋上の床には巨大な穴が開いていた。
 しかも、今まで夕方だったのに、夜空に満月が浮かんでいる。
 訝っていると、二人の目の前に巨大なモンスターが出現する。
 モンスターは襲ってくるが、そこに現れた、一人の女性があっという目にモンスターを消し去る。
 彼女は二人の制服を目にして、二人が空間の歪みによって、別の世界に来たと説明する。
 二人が元の世界に戻るには「帰りたい」と強く願うしかないのだが…」

 「ホラーハウス」(大陸書房)で掲載されたと思しき「アルテミス・ハーフ」シリーズ。
 単行本は恐らく、この一冊だけで、シリーズの全容は私には掴めておれません。
 個人的には、モンスター描写が予想以上にグロく、1980年代のホラーもののOVAに似た手触りを感じます。

2023年3月3日/2024年2月29日 ページ作成・執筆

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