御茶漬海苔「アナーキー」(1996年3月13日第1刷発行)

・「アナーキー」(1991年頃に「リトルボーイ」に掲載)
「ある島の浜辺で、秋弘が拾った奇妙な金魚。
 秋弘は、自分の名前と、妹の夏江の名前を合わせて、その金魚に「アナーキ」と名付ける。
 だが、アナーキは、細い触手を伸ばし、動物を溶解・吸収する魚であった。
 妹を殺された秋弘はアナーキを海に捨てる。
 海で大量に繁殖したアナーキは島の人々を片端から餌食にしていく…」

・「深夜のセールスレディ」
「第一話 美人マスク」
 夜更け、ある団地。
 夫の亮の帰宅を待つ新妻、明子。
 二人の仲は良好であったが、毎夜、遅く帰宅する夫に明子は疑惑を抱く。
 ある夜、ナイトセールスの女性が戸口に訪れ、ポストに試供品を入れていく。
 それは「美人マスク」というもので、かぶると、全く別人になれるという。
 明子はそのマスクで別人になりすまし、夫を探しに行くのだが…。
「第二話 天国の壺」
 田舎育ちのおっとりした娘、林子。
 彼女は東京育ちの良男と結婚し、団地で姑と三人で暮らし始める。
 夫と姑に尽くすつもりでお嫁に来た林子であったが、姑は事あるごとに嫁いびりに励む。
 夫もマザコンが入っていて、頼りにならず、彼女は一人、耐える。
 そんなつらい目にあいながらも、彼女は男児を出産。
 だが、姑が世話を見ると、彼女から赤ん坊を取り上げてしまう。
 林子が悲嘆に暮れていると、ナイトセールスの女性が戸口に訪れる。
 セールスレディはポストに試供品を残していくが、それは「天国の壺」というものであった。
 それは「嫌なものを全て吸い込んでしまう壺」らしいのだが…」

・「姫 掃除しない女」
「小さな設計事務所で、デザイン設計を担当する清田。
 几帳面で潔癖症の彼は、事務所の園子に関心を持つ。
 彼女はとっても清潔で、とってもかわいい。
 交際を重ね、二人は結婚するが、徐々に彼女の本性が明らかになる…」

 人喰い魚が島民を全滅に追いやる「アナーキー」は「非常に惜しい作品」です。
 というのも、未完成なんです、コレ。
 ラストは、生き残った兄妹が、唐突に現れた老科学者に救われ、宇宙から飛来する隕石で人類が滅亡する話を聞かされる、というもので、正直、ワケわかりません。
 恐らくは、打ち切りになったか雑誌が休刊したかの事情で、ムリヤリ終わらせたのではないでしょうか?
 結局、人喰い魚の正体は明かされませんし、ラスト付近に出てくる老科学者も釈然としません。(大体、この科学者は、島民が殺されている間、何をしていたんだ?)
 それ以外は、スピード感溢れる展開で、一気に読ませ、楽しめます。
 完全版が読みたいなあ…。(伊藤潤二先生の怪作「地獄星レミナ」とタメを張った…かも…)

2017年12月9日 ページ作成・執筆

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