渡千枝「手 ―怪奇迷宮―」
(1990年6月13日第1刷・1992年12月5日第7刷発行)

・「手 ―怪奇迷宮―」
「私大の受験が終わり、一息ついた頃、入沢家に不審な荷物が送られてくる。
 発送先は、青森の田川晶子という女性からで、中にはリンゴと、腐乱した右手が入ってきた。
 美都子と母親は慌てて、警察を呼ぶが、いつの間にか、右手は消えていた。
 父親は田川晶子という女性に心当たりがあったようだが、翌日、高速で交通事故死。
 母親はショックで衰弱し、美都子は、全ての元凶はこの荷物だと、焼却炉で燃やそうとする。
 すると、消えたはずの手に襲われ、焼却炉の中に引きずり込まれそうになる。
 この手に家族への殺意があることを知った、美都子は、田川晶子という女性について調べる。
 田川晶子は、父親が常務を務めていた会社の経理を担当しており、二か月前に退職していた。
 美都子は、田川晶子の故郷である青森を訪ねるのだが…」

・「悪霊の絆」(1990年「少女フレンド4月1日号増刊 サスペンス&ホラー特集号」掲載)
「母親の再婚相手が気に入らず、溝口春香は、夏休みを泊まり込みの家庭教師をして過ごすこととなる。
 彼女の住み込むのは、都会から離れた別荘で、相手は、南原彩子という少女であった。
 彼女の母親は、再婚して一か月後に、別荘の裏の池で溺死しており、また、彩子は母親の再婚相手を毛嫌いしていた。
 それを除けば、彩子はごく普通の明るく利発な少女であり、春香は彩子と楽しく過ごす。
 だが、春香は、別荘にもう一人、女性らしき気配がするのが気になって仕方がない。
 ある日、彼女は彩子に屋根裏部屋に案内されて、ある秘密を明かされる。
 それは、ウィジャ盤(西洋版こっくりさん)で、彩子は母親の霊を呼び出しるのであった。
 しかし、春香にはその霊に凄まじい憎悪を感じ、彩子に二度とウィジャ盤に触らないよう言う。
 その夜、春香と彩子は別荘に二人きりになった時、その霊の正体が明らかとなる…」

・「4人目の乗客」(1989年「少女フレンド8月15日号増刊 サスペンス&ホラー特集号」掲載)
「朋(とも)は、予知能力者。
 友人達と海水浴に行く前日の夜、彼女は、黒髪ストレートの少女が車で轢き逃げされる夢を見る。
 だからと言って、どこの誰か、わかるはずもなく、もやもやした気分で、待ち合わせ場所の駅に向かう。
 三人の友人と海に行く予定であったが、一人は急な発熱でダウンしたため、8月8日午前8時、特急踊り子号1号で、三人は出発する。
 予約した白浜荘という民宿に着くが、そこで、彼女達は、黒須という青年から、ここに泊まらない方がいいと忠告を受ける。
 友人達は気にも留めないが、朋は、三人の他にもう一人、誰かがいるという感じがぬぐえない。
 そんな時、友人の一人が、民宿のあかずの間で、意識不明となって発見される。
 朋は、夢で轢き逃げされた少女が自分の死に気付かず、仲間をつくろうとしていることに気付く。
 更に、黒須が、轢き逃げした夢に出てくる車に乗っていたことにも思い当たり…」

 「手 ―怪奇迷宮―」はゲテモノな内容ですが、こういう奇に衒った内容は、渡千枝先生向きのテーマではないように感じました。
 それよりも、きっちりとした構成の「悪霊の絆」「4人目の乗客」の方が完成度が高く、渡先生の実力を知ることができます。

2019年12月6日 ページ作成・執筆

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