嶌峰麻利子「黒髪怪談」(1988年9月13日発行)

「高校二年の杉浦杳子は、陰気な少女で、クラスで孤立していた。
 クラスの中心は大道寺建設の令嬢、大道寺沙織であり、杳子は沙織を憎む。
 何故なら、沙織によって、美術部部長の神崎裕二との仲を引き裂かれたからであった。
 京都への修学旅行の際、杳子は一人、裏小路へと入り込む。
 惹かれるように入った骨董屋で、彼女は、美しい細工の鏡と櫛を目にする。
 骨董屋の若主人は、この鏡と櫛にまつわる、古い因縁話を杳子に語る。
 明治の終わり頃、幼なじみの男女が、年頃になったある日、再会する。
 男は新進の日本画家で、女は売れっ子の芸妓で、名前はおヨウ。
 二人は互いに想い合うようになるが、男のもとに旧家の大店の娘の縁談が入り、彼はおヨウを捨てる。
 おヨウは彼にとりすがるが、振り払われた拍子に、鉄瓶をひっくり返して、顔に火傷を負い、以来、客を取ることもできず、遂には縊死を遂げる。
 二人の婚礼の日が近づいた頃、大店の娘のもとに、差出人不明の贈り物が届く。
 中身は、美しい拵(こしらえ)の鏡と対の櫛で、娘は早速、櫛を使ってみると、櫛が髪に絡みつき、頭皮まで剥げてしまう。
 以来、娘の傷は膿み爛れていき、娘の顔半分は凄まじい形相となる。
 男は娘を見舞うが、娘の顔を見て逆上し、扼殺。
 鏡と櫛を見て、おヨウの怨念を悟り、自分も首吊り自殺を遂げた、というのが、因縁話の概要であった。
 杳子は、自分と同じような境遇のおヨウに同情し、骨董屋を出た後、おヨウの墓に参る。
 墓前には、先程、骨董屋で見た鏡と櫛があり、杳子はそれを持ち逃げする。
 旅館に戻った後、部屋でその櫛を使ってみると、話の通り、髪に櫛が絡みつき、頭皮と共に抜け落ちる。
 更に、鏡には、杳子と同じように苦しむ大道寺沙織の姿が映っていた。
 杳子は、大道寺沙織と、自分を捨てた神崎裕二に復讐するため、櫛で自分の髪と頭皮をどんどん剥ぎ取っていくのだが…」

 わたなべまさこ先生を彷彿させる絵柄と、陰湿な内容が上手くマッチした佳作だと思います。
 実際、わたなべまさこ先生が描いてもおかしくない、女の情念をテーマとしたストーリーです。
 ただし、ネタばれとなりますが、ラスト、今までのことは全て、夢オチで、急転直下のハッピー・エンドとなってます。
 わたなべまさこ先生だったら、皆、ブチ殺すところでしょうが、嶌峰麻利子先生はそこまで徹底はできなかったのでしょうね。
 私もハッピー・エンドの方が良いと思います。

2019年3月10日 ページ作成・執筆

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