たむろ未知「血ぬられた黒ミサ」(1986年7月14日第1刷発行)

「ニューヨーク。
 ロージーは、三年前、記憶を失い、路頭に迷っていたところ、P・J・ハリエットという私立探偵に拾われ、その助手となる。
 ある日、探偵事務所に大口の依頼が来る。
 それは、ヘルムートという人物の捜索で、依頼人は彼の友人を名乗る男であった。
 男は前金で一万ドル渡し、成功すれば、更に一万ドル払うという。
 ヘルムートは「ブロンドの悪魔」「カギ十字の吸血鬼」「地獄のプリンス」と呼ばれたロック歌手で、凄まじく売れていたが、三年前、忽然と姿を消す。
 また、彼の周辺はスキャンダルまみれで、関係者やスタッフ、ファンで死んだ者は数百人に上る。
 P・Jとロージーが夕食をとった帰り道、P・Jがビルの看板に直撃されて亡くなる。
 ロージーは単独で調査に乗り出し、ヘルムートの関係者に次々と当たる。
 しかし、彼が関わった人間…ヘルムートの元・愛人、ヘルムートの財産を管理していた弁護士とその秘書、銀行の頭取が次々と死んでいく。
 調査を進めるうちに、ロージーは、ヘルムートの口座から毎月四千ドル振り込まれているクリスティン=シュワルツという女性にたどり着く。
 愛人か囲われ者かと思いきや、クリスティン=シュワルツは18歳の大学生であった。
 歌手だった父は九年前、母は三年前に亡くなり、アメリカの大学に来る前はスイスの寄宿舎にいたと言う。
 そして、振り込まれている金に関しては、遠い親戚の遺産だと母から聞いていた。
 ここまで来て、ロージーの行く先々で人が死ぬことが問題となるが、知り合いの刑事、ベンの計らいで監視は付くものの、拘留は免れる。
 ロージーはクリスティンの身を心配し、彼女の住むホテルに向かうと、彼女の部屋で爆発が起きる。
 彼女はかすり傷で、ロージーは彼女にある荷物を部屋から運び出すのを手伝う。
 この荷物は、母親から譲り受けたもので、人に渡したり、なくしたりしないよう遺言されていた。
 二人はいつしか愛し合うようになり、真相を突き止めるために、ニュー・ジャージーに向かう。
 ここには彼女の母親が亡くなった精神病院があった。
 そこで明らかになる恐るべき真実とは…?」

 どこかで聞いたようなストーリーだと悶々としていたら、ミッキー・ローク主演の「エンゼルハート」(1987年)に思い至りました。
 とは言え、この本は1986年発行ですので、「エンゼルハート」の原作、「堕ちた天使」(1978年/1981年にはハヤカワ文庫刊)をもとにしているのでしょう。
 ただ、私は「堕ちた天使」を未読ですので、確かなことは言えません。(「エンゼルハート」もすっかり内容を忘れております…。)
 まあ、元になった作品があったとしても、手堅くまとまった佳作だと思います。
 ラストの黒ミサのシーンも力が入っていて、いいです。(呪文は「エロイム エッサイム」ですが…。)
 でも、やっぱり、ヘルムートが誰なのか、すぐわかるよなあ…。

2022年6月15日 ページ作成・執筆

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