諸星大二郎
「BOX@」(2016年11月22日第1刷発行)
「BOXA」(2017年4月21日第1刷発行)
「BOXB」(2017年10月23日第1刷発行)


 単行本@(モーニング増刊「月刊モーニングtwo」2015年12月号〜2016年6月号)
・「第1話 ひみつ箱とルービックキューブ」
「角多光二(高校二年生)のもとに差出人不明の荷物が届く。
 中には、箱根細工の「ひみつ箱」と「入場券」が入っていた。
 登校の途中、彼は、木の上で双眼鏡を覗いている奇妙な女、キョウコ(興子)と出会う。
 彼女は彼の学校の方向を向いて、三階の美術室あたりを覗いているらしい。
 学校に着くと、彼のカバンの中に、ひみつ箱があった。
 彼がひみつ箱のからくりを解くと、美術室が突風が通り抜けたかのようにめちゃくちゃになる。
 更に、帰宅後、死んだ兄の部屋と、彼の母親に「異変」が起きる。
 彼は、美術室から見えた、駅前のデパートに何かを感じ、翌日、訪れる。
 デパートの屋上には、ルービックキューブをしている少年(桝田恵)がいた…」
・「第2話 ゴールに辿り着けない迷路」
「導かれるように函山公園に集まった人々。
 角田光二(高校二年生)〜箱根細工
 桝田恵(進学校N高の二年生)〜ルービック・キューブ
 神宮智恵子(霊感少女)〜立方体パズル
 甲田信一郎(建築家)〜正立方体の箱で、何のパズルか不明
 山内誠(教師。郷土史家の一面もあり)〜クロスワード・パズル
 谷寛一・八重子の老夫婦〜迷路
 キョウコ(謎の女)
 の計八人。
 キョウコ以外は皆、何らかのパズルと入場券を送られていた。
 そして、彼らの前には、出入り口のない巨大な箱があった。
 谷夫婦の迷路を解いた時、箱に何かが起こる…」
・「第3話 立方体ゲーム」
「この箱は、案内役(ナビゲーター)の少女によると「箱博物館」らしい。
 皆、思い思いに中を見て歩くが、いつの間にか入り口が消える。
 少女によると、この箱は入る時と出る時しか出入り口がないのだと言う。
 そして、出口を開ける方法は、招待客が全員、パズルを解いた時だけであった。
 また、パズルを解いた谷夫婦に「異変」が起きる。
 同様なことは、恵にも起こっていた…」
・「第4話 物凄きものに出会ひて」
「立方体パズルを解いた神宮智恵子に「異変」が起きる。
 一同は戸惑いながらも、出口を求めて、前に進むしかない。
 そんな中、山内誠は、古い文献に何度か書かれた、箱のような家について話す。
 「遠野物語」の「マヨヒガ」のようだが、そんな目出度いものではなく、どうも得体が知れない。
 箱の奥には「物凄きもの」がいるようなのだが…」
・「第5話 カギのないクロスワード・パズル」
「次々と起こる「異変」に戸惑う人々。
 甲田と山内は次の部屋への扉を見つけるが、パズルを解かなければ、開きそうにない。
 山内は「パズルを解くのが怖い」と吐露する。
 彼のパズルは、クロスワード・パズルで、縦のカギも横のカギも記されていなかった。
 彼は甲田に、パズルを解かなくても、ナビゲーターの少女に交渉すれば、出られるのでないかと言うのだが…」
・「第6話 箱はルール違反を許さない」
「彼らはあっさりと次の間に移動する。
 そこは、奇怪なものが詰まった箱だらけであった。
 更に、奥の方から化け物の群れが現れる。
 どうも山内はパズルが解けているのに、解けていないふりをしているらしい。
 混乱の中、部屋の箱までも彼らに襲いかかってきて…」
・「第7話 扉が開く時と開かない時」
「パズルは解けたものの、化け物の群れはじわじわと彼らに迫る。
 惠は、谷夫妻の入った箱を取りに行くため、前の部屋に戻り、光二も惠の後を追う。
 一方、甲田は、神宮智恵子を置き去りにして、先に向かうのだが…」
・「キョウコのこと」
 「キョウコ」は初の短編小説集「キョウコのキョウは恐怖の恐」に出てくるキャラで、その中の「狂犬」「秘仏」「貘」について紹介。

 単行本A(モーニング増刊「月刊モーニングtwo」2016年7月号〜12月号、2017年1月号)
・「第8話 もうひとつのひみつ箱」
「次の部屋にやって来た一行。
 ここは、発泡スチロールの立方体を適当に積み上げて、作ったような所であった。
 道は二手に分かれていたが、奥の方でつながり、そこに扉がある。
 光二はようやく、これが自分の「パズル」であることに思い当たる…」
・「第9話 二度目の対決」
「光二は単身、二つ前の部屋へと戻る。
 惠と智恵子は、光二に支持された通り、この部屋への扉を五分後に開けるために待機する。
 惠は、キョウコから、抜け道があることを教えられ、光二を助けようと、抜け道を進む。
 だが、キョウコとナビの少女(以後、魔少女)が戦い始め、あたりは片端から崩壊していく…」
・「第10話 山内の秘密・甲田の事情」
「智恵子は、光二に言われた通り、扉を開けようとするが、甲田はそれを止めようとする。
 そこに、山内が現れるのだが…。
 一方、光二は、惠達の所に戻ろうとするが、化け物に通路を塞がれていた。
 惠に呼びかけられ、抜け道を進むものの、天井が崩れ、閉じ込められた格好となる。
 皆、それぞれ窮地に陥る中、甲田は魔少女に「裏の手」について持ちかけていた…」
・「第11話 新しいプレイヤー」
「光二と惠は抜け道から脱出し、智恵子も谷夫婦に助けられ、難を逃れる。
 一方、甲田はキョウコに、自分のパズルの解き方がわからないから、解いてみてくれと頼む。
 だが、甲田にはある思惑があり、それが思わぬ結果をもたらすこととなる…」
・「第12話 甲田の復讐」
「キョウコは、甲田に代わって新しいプレイヤーとなる。
 しかし、甲田は彼女からパズルを取り戻そうと延々と追ってきて…」
・「第13話 好奇心は猫(キョウコ)を殺す」
「甲田のせいで、部屋はあちこち崩落していく。
 キョウコは、光二達を先に行かして、甲田を引き付ける。
 別ルートをとるキョウコの前に、魔少女が現れて…」
・「第14話 次のステージへ」
「ようやく見つけた、次の部屋への扉。
 キョウコもどうにか合流し、光二達は扉の中に駆け込む。
 次のステージで彼らを待ち受けるものとは…?」
・「オマケのページ」(「モーニング・ツー10周年記念アンソロジーコミック」収録)
 「神宮智恵子の除霊」
 「神宮智恵子の予知夢」

 単行本B(モーニング増刊「月刊モーニングtwo」2017年2月号、4月号〜10月号)
・「第15話 階段には昇りと降りがある」
「彼らの目の前には、どこまで続くかわからない階段があった。
 智恵子と惠が下の様子を見に行った時、前の部屋から、甲田と山下がやって来る。
 キョウコのパズルに執着する甲田に追われ、光二とキョウコは階段をどんどん上がっていくのだが…」
・「第16話 エッシャーの階段」
「キョウコが箱のパズルを解いた時、ステージがその全容を現す。
 そこは、錯視したものが現実になる「錯視空間」であった。
 円をなした階段の中央付近に建物があり、次のステージへの入り口らしい。
 鍵は、パズルの箱の中にあった小さなレンズと階段の模型のようなのだが…」
・「第17話 錯視の塔」
「キョウコは、パズルの箱の秘密を見抜き、中央の建物を自分達と同じ高さまでせり上げる。
 だが、目の前にある「錯視の塔」との間には深い深淵が横たわる。
 「錯視の塔」へ渡る方法とは…?」
・「第18話 あり得ない場所」
「キョウコは「錯視」を用いて、智恵子を助ける。
 だが、光二と惠は、徐々に崩壊していく階段に取り残されていた。
 光二は甲田に襲われ、窮地に陥るのだが…」
・「第19話 遠近感が人を騙すこともある」
「どうにか全員、中央に渡ることができたものの、甲田は執拗にキョウコを追い続ける。
 キョウコは、箱の台座の上にある「錯視の塔」へ昇るのだが、逆に追い詰められることに…」
・「第20話 白いルービックキューブ」
「一段落した時、魔少女が彼らの前に現れる。
 キョウコは少女にある罠を仕掛けるのだが…。
 そして、箱は次のステージへの扉を開ける…」
・「第21話 因果を食うもの」
「白いルービックキューブ…それは惠のパズルであった。
 六面が全て真っ白で、手掛かりは、ある一面にある中央のロゴマークのみ。
 このルービックキューブを解く手がかりとは…?
 全てのパズルが解かれた時、箱はその真の姿を現す…」
・「第22話 最終話」
「箱に、それが要求するものを与える最終局面。
 魔少女は最後の最後まで彼らに揺さぶりを加え、裏切り者を出そうとする。
 更に、魔少女は奸計を巡らし、自分だけが箱から出ようとするのだが…。
 光二達の運命は…?」
・「エピローグ」
 登場人物達のその後…。(「その後」自体がない人もいるけども)

 「箱」に閉じ込められた人々の「脱出ゲーム」を描いたサバイバル・ホラーの稀代の傑作(怪作?)です。
 こう書くと、名作ホラー映画「CUBE」(未見です…)を連想されると思いますが、全く雰囲気は違い、@巻裏表紙の紹介文中の《「パズル」の迷宮》という表現がしっくりきます。
 多種多様なパズル(注1)を解いて次のステージに進む内容で、後半、トリック・アートを盛大にぶち込んでいるのは、諸星先生の趣味なんでしょうね。
 特に、B巻での、エッシャー的な世界の中を、錯視を利用して、ピンチを一つ一つ乗り越えるあたりは、人跡未踏の次元にまで達しております。
 それにしても、パズル、サバイバル、モンスター、エッシャー等々、雑多な要素を詰め込んでいるにも関わらず、それなりに整合性がとれ、かつ、諸星大二郎先生の作品以外の何物でもない…というのが一番凄いかも…。
 再読に耐えうる作品ですので、秋の夜長にじっくり読み込んでみては如何でしょうか?

・注1
 作中のパズルは全て、諸星大二郎先生の自作です。
 かなりしんどかった模様です。

2021年7月19・21日/8月12〜14日/9月30日 ページ作成・執筆

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