佐藤陽子「黒い木霊」(1986年11月14日第1刷発行)
「沢渡今日子は、村人達に大木のある所に追い詰められ、片腕を斧で切り落とされるという悪夢を頻繁に見る。
そんな時、今日子は、中原教授の民俗学の講義で、夢と似た内容の民話を知る。
民話では、村一番の大木を切ろうとした領主の娘が、夢の中で、木の精霊から木を切らないよう訴えられるというものであった。
中原教授は、今日子の夢に興味を持ち、夏休み、愛媛県の面河(めんご)村への調査に同行しないかと誘う。
面河村は、講義で取り上げた民話が伝えられる地であった。
当地で、ボーイフレンドの尚人を加えた三人は、仁礼家の後継ぎである槇子と知り合う。
槇子は、仁礼家の長男、桂一の一人娘で、両親は他界していたが、二十歳で全財産を継ぐこととなっていた。
仁礼家には、今日子達三人と、仁礼家の次男の桂二夫婦と一人息子の枝郎、末の妹である杪(こずえ)とその亭主の榊原義明と一人娘の梓と親戚一同が集う。
だが、桂二、枝郎と次々と不審な死を遂げていく。
一方、今日子は面河村にデジャヴを覚え、奇妙な感覚や予感に襲われる。
仁礼家の裏山にある「二つ森の主」と今日子の関係とは…?
そして、連続殺人事件の犯人は誰…?」
ファンタジーの入ったミステリーで、なかなか面白いです。
ミステリーとしては予想以上に本格的で、佳作でありましょう。
2018年11月2日 ページ作成・執筆