吉永龍太
「チノミ@」(2007年9月21日第1刷・2008年5月23日第2刷発行)
「チノミA」(2008年1月23日第1刷発行)
「チノミB」(2008年8月22日第1刷発行)


・「第1話 パープル・ビギニング」(単行本@/「アフタヌーン」2007年6月号)
「鉈上優一郎(21歳)は「無職・実家生活・年金未払い」のプータロー。。
 彼の家では毎週日曜日、家族で「血料理」(血液を使った料理)を食べる決まりがあった。
 小さい頃、母親に理由を尋ねたことがあったが、他人には話さないよう一喝され、最後に、「キマリ」を破ったら、「クロセビロの人」に血を抜き取られ、その人の夕食にされると脅される。
 そして、結局、今もその理由はわからないままであった。
 ある日曜日の晩、優一郎はファミリーレストランで友人たちと会う。
 そこには彼の兄貴分の矢島亮平(24歳)も女友達と来ており、楊原梢という女性の相談に乗っていた。
 彼女の相談は、二年ぐらい付き合っているヒモ男が彼女の血を欲しがるということで…」

・「第2話 ウォーキング・ザ・レッド」(単行本@/「アフタヌーン」2007年7月号)
「優一郎は、彼らの住む地域(M市東八森)に『血飲み』(食事に血を飲む吸血鬼)が住むというネットの噂を知り、自分たちのことではないかと不安を感じる。
 と言っても、フリーターの身では何もできず、チラシ配りの際に矢島亮平に「血飲み」について相談すると、亮平は顔色を変え、「血飲み」のことは自分に任せろと言うと去る。
 矢島亮平は「血飲み」であった。
 日曜日の晩、彼は神社の前で通行人を見張り、町内を何度も行き来する挙動不審な男を発見する。
 亮平は男に声をかけ、神社で問い質すのだが…」

・「第3話 シンク・ブルー」(単行本@/「アフタヌーン」2007年8月号)
「男の名は愛葉信也、彼もまた「血飲み」を名乗る。
 何故か彼は「血飲み」の名簿を持っており、亮平はそれを奪って逃げる。
 名簿は「血飲み」が持っておくべきもので、普通の人間には決して見られてはいけない。
 そこで、亮平はそれを自分のお守りに入れて優一郎に託す…」

・「第4話 パープル・サンデー」(単行本@/「アフタヌーン」2007年9月号)
「神社で矢島亮平は愛葉信也と再会する。
 愛葉信也は名簿に執着しており、亮平に返すよう懇願するが、その出所や目的については一切教えようとはしない。
 亮平は名簿を焼くふりをして、愛葉を神社の階段から突き落とす。
 愛葉を半死半生にまで追い込み、亮平は警察に連絡するのだが…」

・「第5話 リターン・オブ・ザ・レッド」(単行本A/「アフタヌーン」2007年10月号)
「亮平は愛葉を殴り殺してしまい、大パニック。
 そこで彼は神社の裏手にある森に死体を遺棄する。
 ところが、帰ろうとした時、神社に何者かの姿がある。
 それは「クロセビロの人」で、愛葉の歯を拾っていた…」

・「第6話 ウェイキング・オブ・ザ・ブルー」(単行本A/「アフタヌーン」2007年11月号)
「矢島亮平の死。
 優一郎は彼の葬式に行くも、実感がわかず、途方に暮れたままであった。
 その夜、優一郎は亮平から預かったお守りの中を見る。
 中には東八森の人々の名簿の紙が入っていた。
 彼は「血飲み」の名簿ではないかと考えるが、矢島は二件載っているのに、鉈上は載っておらず、どう考えたらよいのかわからない。
 翌日の日曜日、彼は矢島家に亮平の遺品整理に行くのだが…」

・「第7話 東八森の吸血鬼」(単行本A/「アフタヌーン」2007年12月号)
「矢島家で優一郎は亮平の女友達の金居と知り合う。
 遺品整理が終わってから、二人は町に出て、喫茶店に入る。
 そこで金居が取り出したのは東八森の殺人事件を扱ったゴシップ雑誌であった。
 雑誌には東八森に吸血鬼が出たと書かれており、優一郎は内心焦りつつ否定する。
 しかし、亮平が殺される前にヘンタイが町を徘徊しており、そいつはいまだに捕まっていなかった。
 優一郎は「血飲み」の謎を解き明かすべく、自分も町を徘徊して、そのヘンタイを捕まえようと考える。
 喫茶店を出た後、優一郎は金居と駅で別れ、夕方、彼は貧血状態でふらふらになりながら帰宅する。
 晩の食事は血のハンバーグで、母親はそれから連想して、優一郎が五歳の時、迷子になった話をするのだが…」

・「第8話 東八森の吸血鬼2」(単行本A/「アフタヌーン」2008年1月号)
「矢島家に忘れた自転車を取りに行く途中、優一郎は公園で血の付いた包丁を洗う男を目にする。
 こいつこそが例のヘンタイだと思い、彼を追って、東八森の森林道に入り込む。
 鬱蒼とした夜道を進むうちに、優一郎の脳裏に迷子になった時の記憶が蘇る。
 彼はこの道で「クロセビロの人」に会い、手をつないで一緒に歩いたことがあった…」

・「第9話 東八森の吸血鬼3」(単行本B/「アフタヌーン」2008年2月号)
「優一郎は小男に襲われる。
 小男は、ティッシュ配りの女性バイトに言いがかりをつけていたキチガイであった。
 小男は優一郎を「血飲み」呼ばわりし、罵詈雑言を浴びせる。
 優一郎は逃げようと思うが、遂に限界に達し、コンクリートブロックを手に小男と対峙する。
 包丁を構えて突っ込んでくる小男に優一郎は…」

・「第10話 東八森の吸血鬼リターンズ」(単行本B/「アフタヌーン」2008年3月号)
「優一郎が目を覚ますと、『世界が変わっていた』(注1)。
 空気の味がやけに濃く、月明かりが昼のように眩しい。
 小男に切られた傷もいつの間にかふさがっており、あたりには彼が出血した様子もない。
 そして、決定的なのは喉の渇きであった。
 優一郎は自分の身に何が起こったのかを悟る…」

・「第11話 THE BLOODSUCKER」(単行本B/「アフタヌーン」2008年4月号)
「翌朝、途方に暮れながら、優一郎は朝の食卓につく。
 すると、テレビが東八森でまた殺人事件が起こったと報道する。
 被害者はあの小男で、犯人は最近、噂の「血飲み」の仕業かもしれなかった。
 それを観て、鉈上家はパニックに陥る。
 妹の優子は単なる噂と気丈に振舞うも、町内では「血飲み」に対する憎悪が募っており、動揺を隠せない。
 優一郎は家族を守るため、真犯人を捕まえる決意を固める…」

・「第12話 THE BLOODMASTER」(単行本B/「アフタヌーン」2008年5月号)
「愛葉信也はご機嫌であった。
 彼は東八森の森林道を歩きながら、彼が絶望のどん底にいた時のことを回想する。
 彼は、鉄川辰夫の死のショックから立ち直ることができず、自殺するため、この森林道を歩いていた。
 鉄川辰夫はある会社の創立者で、彼の唯一の理解者であり、唯一理解できなかった「偉大な人間」であったが、三年前に98歳で亡くなる。
 森林道を抜け、原っぱに出ると、夕日をバックに鉄川辰夫が彼に手を振っていた。
 鉄川辰夫は信也に声をかけ、横にある黒い革ソファーに彼を座らせる。
 信也が鉄川に死んでいるのでは?と尋ねると、鉄川は東八森に住む「血飲み」という集団について話す。
 彼らは人間ではないが、不死は唯一、血飲みの「主(あるじ)」だけの特権であった。
 そして、今、空席の「主」の席に信也は座っている。
 その意味するところは…?」

・「第13話 血の身」(単行本B/「アフタヌーン」2008年6月号)
「優一郎は、犯人の手掛かりを得るため、矢島亮平の祖父を訪ねる。
 しかし、祖父は犯人については何も知らず、しかも、ただただ「堪える」のが「血飲み」の正しい生き方だと話す。
 そんなスケープゴートのような生き方に優一郎が反発すると、祖父は「なら君の答えを出しなさい」と諭す。
 その時、彼らの背後に忍び寄る「クロセビロ」の人物が…」

・「第14話 ブルー・イズ・オーバー」(単行本B/「アフタヌーン」2008年7月号)
「クロセビロの正体は愛葉信也であった。
 彼は優一郎と亮平の祖父を反逆者として殺そうとする。
 優一郎と信也は決着をつけようとするのだが…。
 「血飲み」の価値とは…?」

・「最終話 ブラック&ホワイトビギニング」(単行本B/「アフタヌーン」2008年8月号)
「優一郎は信也を倒したかに見えた。
 だが、信也は再び立ち上がる。
 彼の目には鉄川辰夫の後姿が映っており、立ち去ろうとする鉄川辰夫に手を伸ばすと…。
 そして、優一郎の体にも異変が起きていた。
 彼らの運命は…?」

 「吸血鬼もの」の異色作です。
 「血飲み」という吸血鬼の謎に迫りつつ、意気地のないフリーターの青年が自立(成人)していくストーリーで、「青春もの」の要素も濃いです。(「爽やかさ」は微塵もありませんが…。)
 ただ、肝心の「血飲み」がどういうものかイマイチはっきりせず、ラストも個人的には釈然としませんでした。
 私の読解力のなさを差し引いても、説明不足な点があるのは否めないと思います。
 まあ、この作品の場合、ストーリーよりも「絵」の方が見所かもしれません。
 凄まじい描き込みです!!
 描き込みと言えば、浅野いにお先生(「デッドデッドデーモンズ デデデデデストラクション」)や松永豊和先生(「バクネヤング」)が個人的には思い浮かびますが、ああいう先生方よりは故・三田京子先生に近い手触りのように感じております。(例:「蒸発した美少女」
 A巻の袖で吉永龍太先生は「マンガが好き」と述べておりますが、マンガが好きすぎて、完成度とは関係なしに「描かずにはいられない」という執念がページの隅から隅まで横溢しております。
 更に、偏執的なところと妙にポップなところが歪に融合して、「個性的」という言葉では済まされない、圧倒的なイカモノ世界を創り上げております。
 絵柄もストーリーも好き嫌いが分かれるでしょうが、個人的には、この作品を「体験」しておいて損はないと私は思います。

・注1
 「みんなのうた」で故・山田康雄の歌う「まるで世界」は実に名曲ぞ!!
 シュールなアニメがまたいいんだ!!

2025年7月22日・8月25〜27日 ページ作成・執筆

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