笹木阿弓「狂った鏡」(1992年8月11日第一刷発行)
収録作品
・「狂った鏡」
「沢田沙耶のアパートに若い女性が越してくる。
彼女の名は高木沙耶で、名前が同じことから二人は親しく付き合うようになる。
それから四か月後、コンサートに行く途中、高木沙耶は沢田沙耶の目の前で車に轢かれて死亡。
以来、沢田沙耶は鏡などの中に血まみれの沢田沙耶の姿を見るようになるのだが…」
・「金色の悪夢」
「毬子は子供の頃、吸血鬼を見た記憶がある。
その吸血鬼は金髪に金色の瞳であったが、それを黒くすると、夫の理基にそっくりであった。
彼女はそれを夫に話そうとして、ずっと言い出すことができなかったが、ある日、遂に彼に過去の記憶を打ち明ける。
夫は彼女の不安を笑い飛ばし、一時、彼女は安心するものの、彼女の住んでいる町の近くで女性が首を切られる事件が連続して起きる。
吸血鬼の悪夢に悩まされ続け、また、体調も思わしくなく、彼女は夫への不審を募らせていく…」
・「できごころ」
「高校三年の春休み、唯子、もとこ、あきみはN県のある山にハイキングに出かける。
かなり高い所に、鳥居が連なっており、そこを抜けると、小さな祠があった。
もとこが祠に置かれてあった小石を拾うと、見知らぬ老人から小石一つでも御神山のものだから、もとに戻すように注意される。
唯子は素直に謝るものの、もとこは小石を持ち帰り、それをこっそり唯子のバッグに入れる。
春休みが終わり始業式の日、もとこが自動車事故で急死する。
唯子はその知らせを聞く前にもとこの夢を見ており、夢の中で血まみれのもとこは助けを求めていた。
その日の午後、唯子の家を織田島という青年が訪れる。
彼はあの山に登る際に下山する彼女たちとすれ違っていた。
彼は唯子とあきみに祠の写真を見せるのだが…」
・「レクイエムは聞こえない」
「由利子は資産家の娘であったが、六年前、交通事故で母親を亡くし、自分は車椅子の身となる。
不幸はそれだけにとどまらず、二年前には父親が亡くなり、そして、彼女に尽くしてくれた継母も轢き逃げにあい死亡する。
彼女は叔父に引き取られるが、ある日、高台で景色を見ていた時、車椅子が坂道を暴走。
その危機を救ってくれたのが、ヒッチハイカーの青年、中川譲であった。
彼は叔父の屋敷に滞在することになるが…」
・「釘」
「松山美也子は新婚ながら、夫は単身赴任となり、マンションで一人、灰色の日々を送っていた。
ある日、彼女は階段で倒れている女性を介抱するが、それは彼女の部屋の真上の住人の小林和美であった。
この上階の部屋からは朝早くからコンコンコンコン金槌の音がして、隣近所は皆、迷惑がっていた。
小林によると、彼女も美也子と同じく夫が単身赴任で、無聊を慰めるため、大工仕事に精を出しているという。
美也子と小林は付き合うこととなるが、小林は美也子の不安を煽るようなことしか言わない。
疑心暗鬼が深まっていく中、彼女の心は次第に金槌の音に囚われていく…」
・「幽霊は仕事場がお好き!?」
笹木阿弓先生が漫画の世界に入った頃に体験した奇妙な出来事を描いた短編。
何はともあれ、「釘」は閉塞感溢れる傑作です!!
この漫画に出てくる女性(小林和美)なら山崎ハコ「呪い」とタイマン張れます。(釘の数なら圧勝。)
2024年5月19日 ページ作成・執筆