莨谷弥生「魔性の物質」(1989年2月13日発行)
「昭和七年(1932年)、両親の死後、借金のかたに売られる少女、桂木野枝。
彼女はもう一人の娘と、芸妓(げいぎ)の斡旋業者に箱根にある、松浦家の別荘に連れて行かれる。
九礼豊比古(くれとよひこ)とドクターの二人に様々な検査を受けた後、野枝は松浦家の養女に選ばれ、豪邸に迎えられる。
野枝は松浦津和子の名前を与えられ、松浦家の女主人の跡取りとして厳しい教育を受ける。
そして、彼女は過去との交渉は一切許されないまま、五年の時は流れる。
その頃、野枝の幼馴染の瀬戸要(せと・よう)という青年が野枝の行方を追っていた。
ようやく箱根まで辿り着くが、彼の名を耳にした途端、村人達は彼を襲い始める。
危ういところを、要は千寿と名乗る僧侶に助けられるが、村人達は何らかの術をかけられているらしい。
訝りながら、要は千寿に松浦家の邸に案内される。
久しぶりに目にした野枝は別人のように美しくなっていた。
その夜のパーティ会場に要は忍んで野枝と会う。
だが、彼女は要のことを全く覚えていない。
パーティ会場から逃げ出した後、要は千寿から彼の妹に関する話を聞く。
千寿の妹も、野枝と同じく、松浦家に養女に取られ、以来、二度と会わせてはもらえなかった。
松浦家は江戸時代から続く名門であり、代々当主は女性で津和子と呼ばれ、結婚はせずに養女を迎える。
更に、養女が十八歳の誕生日を迎える日に、当主は亡くなっていた。
要は野枝がもうすぐ十八歳の誕生日であることに気付く。
松浦家の女当主の目論みとは…?
そして、その正体とは…?」
2017年12月2日 ページ作成・執筆