蕪木彩子「解剖」(2017年8月23日発行)

・「解剖」(「ホラーハウス」(大陸書房)1987年12月号)
「まなみは生物の木下先生にホの字。
 だが、グロ耐性は極端に低く、生物の時間、蛙の解剖の最中に、過って蛙を殺してしまい、卒倒。
 更に、下校途中、子供達が、腹が裂けて、瀕死の猫で遊んでいる場面に遭遇する。
 彼女は猫を助けようとするが、逆に引っかかれてしまい、そのはずみに、猫が入った段ボール箱を川に落としてしまう。
 帰宅後、まなみが入浴すると、天井に猫の怨霊が現れる。
 しかも、浴槽の中が蛙で溢れかえっているという幻覚が彼女を襲う。
 彼女は浴場からとび出すが、蛙と猫の祟りのためか、身体には異変が起きていた…」
 「カエル風呂」が最凶です!! これだけで漫画史に残ると思います。

・「喰葬」(「パンドラ」(マガジンハウス社)1988年7月号)
「まりこのボーイフレンド、白石公也は心臓病の手術を目前に控えていた。
 面会謝絶のため、彼とは会えず、まりこは寂しさと不安を隠せない。
 ある夜、彼女が家に帰ると、両親は出張に出かけて留守のはずなのに、人の気配を感じる。
 灯りを付けると、部屋の隅に、公也がうずくまっていた。
 彼は病室で一人死の恐怖に怯えることに耐えられず、まりこと一緒にいたいがために、病院から脱け出してきたと話す。
 まりこは病院に戻るよう説得しようとするが、彼の想いに心を打たれ、言葉にならない。
 翌朝、まりこが目覚めると、公也はすでに冷たくなっていた。
 彼と「一体」になるために、彼女が取った行動とは…」
 ストーリーはぶっちゃけ、「トランス 愛の晩餐」ではないでしょうか?
 あの映画の「冷凍庫の中にバラバラ死体」がいまだにトラウマです。(漫画にも同じような描写あり。)
 どこかでも書きましたが、中学生の頃、この映画を観ながら、お好み焼きを食べて、数年間、お好み焼きが食べられなくなりました。
 だからと言って、悪い印象だけというわけではなく、ヒロインの裸体(特に「しり」)は、いい年こいた今も目蓋に焼き付いております。

・「飼育」(「パンドラ」(マガジンハウス社)1988年8月号)
「山室圭一は容姿端麗、勉強もスポーツもトップ・レベル。
 彼は努力に努力を重ねていたが、両親は、彼を医者にして、医院の跡を継がせるため、更なる向上を求める。
 口答えは一切許されず、彼は部活も恋人も許してはもらえない。
 そんな「籠の鳥」同然の彼のストレス解消は、ペットの蛇を子供に見せつけて、脅すことであった。
 だが、その場を恋人に見られ、更には、脅した男の子は転倒して死んでしまう。
 その夜、寝床の彼が息苦しさで目を覚ますと…」

・「生き腐れ」(「ホラーハウス」(大陸書房)1988年3月号)
「中尾あきよの級友、真弓は重度の腎臓病で、入院する身。
 ある日、あきよが真弓の見舞いに訪れた際に、彼女のいとこの岸直樹と出会う。
 彼に憧れていた、あきよは直樹と急接近、遂には恋人同士となる。
 だが、あきよが彼と付き合いだすようになってから、あきよの周辺に真弓の生霊が出没するようになる。
 あきよを危険にさらさないために、直樹は彼女から身を引くのだが…」

・「告白」(「パンドラ」(マガジンハウス社)1987年7月号)
「あるアパートで、男性の腐乱死体と、自分の眼球をえぐり取った女性が発見される。
 石原みどりという名の女性は、ことの経緯を刑事に語る。
 春、大学に入学した彼女は、矢沢俊之に一目惚れする。
 彼は、彼女が偶然に入った写真部の部長で、二人は恋人同士となる。
 卒業後、広告代理店のカメラマンとなった俊之は、モデルの美樹麗子との仕事で名声を得る。
 だが、俊之は美樹麗子と仲を深め、遂にはみどりを捨てる。
 みどりは悲嘆に暮れるが、彼が彼女のもとに戻ってくると信じる。
 そんな時、俊之と麗子は交通事故を起こし、麗子は死亡、彼は下半身不随となる。
 彼はみどりのもとに戻ってくるが、彼の心は…」

・「ディオンヌ・コルベールの肖像」(「ソリティア」(廣済堂出版)1986年12月号)
「雨の日、ジョゼフ・アンドルー・ハーストは、カトリーヌ・リバールの邸を訪れる。
 彼は行方不明の兄を捜し、兄が立ち寄ったところを回っていた。
 ジョゼフが中に招き入れられると、美しい女性の肖像画が目に入る。
 カトリーヌは絵のモデルはディオンヌ・コルベール夫人と教え、彼女について語る。
 ディオンヌ・コルベールは貴族の娘であったが、フランス革命で全てを失い、貿易商のジュール・コルベールのもとに嫁ぐ。
 愛のない生活の中、ようやく授かった赤ん坊にディオンヌは喜びを見出すが、夫の不倫が明らかになった時…」
 しっとりとした絵とストーリーなのに、急転直下なラストが凄過ぎて、絶句します!!

 「スプラッター・ホラー漫画」を代表する一冊の再刊です。(ありがたいことです。)
 もとは講談社の怪奇ロマンコミックとして、約三十年前に刊行されました。
 アマゾンでこの本の評価を見ると異様に低いのですが、原因はこの表紙にあるようです。
 素晴らしいアートワークでありますが、中の絵と全く絵柄が違うので、落差にがっかりした人が多い模様。
 まあ、私も貸本マンガでいろいろありましたので、その気持ちは痛いほど、わかります。
 でも、そこはあえて目をつぶって、内容に目を向けていただきたい。
 今現在ではこの手のバカ力が炸裂したマンガは絶滅しているように思います。
 こんな駄文でも興味を持たれた方がいれば、是非一度、手に取っていただければ幸いです。(ただし、メチャクチャ、グロいので、そこは注意が必要です。)

2018年2月10・11日 ページ作成・執筆

講談社・リストに戻る

メインページに戻る