犬木加奈子「怪奇人形館」(1992年7月13日第1刷・1993年5月31日第3刷発行)
収録作品
・「怪奇人形館」(平成4年発行「少女フレンド1月号増刊 サスペンス&ホラー特集号」所載)
人形館の老人の語る、人形にまつわる、四つの物語。
「お人形遊び」
人形遊びをする少女達。
イズミは、みすぼらしい自分の人形と較べて、裕福な家庭のリコの人形がうらやましくて仕方がない。
イズミは母親に人形の服をねだるものの、一喝され、自分で工夫して、自分の人形を花嫁姿に飾る。
しかし、その人形は他の少女達から嘲笑され、イズミはプライドをいたく傷つけられる。
そんな時、イズミはリコが自分の人形を置き忘れていることに気付き、腹いせにその人形の髪をハサミで切る。
翌日、髪をストーブで焦がしたため、リコは人形とおなじような坊主頭になっていた。
怖くなったイズミは人形を埋めると、その後、リコは工事現場の砂山で生き埋めになり、死亡。
自分の夢を重ね合わせた人形と同じ運命をたどることを、イズミは悟るが、時が経つにつれ、そのことを忘れ…」
「マネキン」(注1)
「あるショーウィンドウの女性のマネキン。
プライドの高いマネキンは、ショーウィンドウ越しに彼女をうっとり眺めている女性達を見下しては、悦に入る。
また、マネキンは自分を美しく着飾らせるデザイナーから特別に大切にされていると思い込んでいた。
だが、他のマネキン人形化から自分達は単なる人形でしかないと知らされ、ショックを受ける。
そんなある日、デザイナーが新作のためにマネキンの総入れ替えしようとしていることをマネキン達は知り…」
「青い目のマリー」(注2)
視力を失った少女、ミミが両親からプレゼントされた西洋人形。
この人形の売りは、青い目を瞬きすることであった。
ミミは人形にマリーと名付け、大の仲良しになる。
ミミは目が見えるようになる日が来ることを心待ちにしていたが、医者からは絶望的と宣言されてしまう…」
「腹話術師と恋」
美青年の腹話術師ポンキーとその相方の人形のトンキーのショーは大評判。
ポンキーの寂しそうな表情に心惹かれた娘は、毎晩、ショーを訪れる。
娘はどうにか楽屋のポンキーに会おうとするが、店の支配人に拒まれてしまう。
ある夜、幕が閉まる前に、舞台に駆け寄った娘に、ポンキーは店が閉まった後で会おうと告げる…」
・「儀式」(平成3年発行「少女フレンド1月5日号増刊 サスペンス&ホラー特集号」所載)
「放課後、勉強会と称して理科教室によく集まっていた、四人の女子中学生。
裕福な家庭の平凡な娘、大成多加子、勝気な美人の吉田美子、小説家志望の川端やす子、皆のまとめ役でクラス一の秀才、東京子。
12月24日、夕方、東京子は他の三人に、ある提案をする。
それは四人が別の学校に行き、別の人生を歩むことになっても、四人の友情は変わらないと誓うことであった。
そのために、如何なる理由があろうとも、12月24日の同じ時間にこの教室に集まることを、京子は提言する。
更に、それを悪魔に誓約し、約束を破った者にはどんな罰を受けていいとも…。
他の三人は軽い気持ちで、京子の作成した誓約書にサインをすると、謎の笑い声が響き、誓約書は宙で燃え尽きる。
中学校を卒業し、皆それぞれの道を進む。
そして、一年後の12月24日…」
傑作です。
「女の友情」を描いた作品の中で、ここまでダークかつ絶望的な作品を私は知りません。
多感な年頃の、友人関係でトラブルを抱えている時にでも、うっかり読んでしまったら、人間不信に陥ること必至です。
・「恋の願いかなえます」(平成2年発行「少女フレンド第6号」所載)
「ビルの谷間にひっそりと佇む、占いの館。
そこの老婆を、女子高生が訪れる。
彼女は、卒業までに、ある青年を振り向かせたいと望んでいた。
そのために、あまりにも地味な自分を変えるための方法を、老婆に相談する。
そこで老婆が提案したのは「つけホクロ」であった。
占いの本に従って、「つけホクロ」を顔につけると、自分に対する印象を変えることができることを少女は知るが…」
底なしにどす黒い「儀式」の後に、一変して、ハート・ウォーミングかつ乙女ちっくな作品です。
う〜ん、こういうのもいいなあ…。
あと、後半の高慢ちきなお嬢様の話は、ちと星新一っぽい話かもしれません。
人面疽の話ですが、美青年も人面疽だととっても気色悪くて、味わい深くありました。
・注1
「マネキン人形」とホラーの相性は非常に良く、思い当たる作品が幾つかあります。
マネキン人形に八つ裂きにされると言えば、日野日出志先生の作品(タイトル失念)や、トム・サヴィーニの特殊メイクで有名な残虐スプラッター「マニアック」(米/1980年/ウィリアム・ラスティグ監督)なんかがありました。
また、マネキン人形に生首なんてのも、私にとってトラウマ・マンガの一つ、巻来功士(まき・こうじ)先生の「メタルK」や、スラッシャーの名作「アクエリアス」(伊・米/1987年/ミケーレ・ソアヴィ監督)あたりを思い起こさせます。
特に、「アクエリアス」では、マネキンに据えられた生首が、よく見ると、微妙にプルプルしているところに感じ入ります。(首なしマネキン人形の向こうに、白目を剥いた役者さんが身動きしないよう頑張っていたのでありましょう。)
脱線ついでに、もうちょっと羽目を外しますと、「Greatest Soundtracks of Italian Horror Films」というCDが何故か家にあります。
内容は「アクエリアス」「ナイトメア・シティ」「血みどろの入江」「暴行列車」というイタリアン・ホラーの渋いあたりをチョイスしております。(「血みどろの入江」と「暴行列車」は未見です。)
一曲目は「アクエリアス」のオープニング・テーマでして、これが凄くいい!!
たまにCDを取り出しては、リピートしまくって、聴いております。(これを書いている今も、CDをかけてます。)
う〜ん、こういう話ばかり喜んでしていると、如何に私の感性と記憶がカビ臭いかが実感できます。
・注2
ちっとも関係ないけど、クロスビー・スティルス&ナッシュの同名アルバムに収録されている「組曲:青い眼のジュディ」は実に名曲ぞ!!
軽快な「マラケッシュ行急行」もよく聴いてます。
実は、アルバムの中で、この二曲しか聴いてないんですけどね。
んにしても、このアルバムも発表されたのは1969年の6月…相変わらず、古い話ばかりで失礼…。
2016年9月20日 ページ作成・執筆