井口かのん「逃げても逃げても…」(1995年9月13日第1刷発行)
収録作品
・「逃げても逃げても…」(1994年「月刊少女フレンド1月号増刊 サスペンス&ホラー特集号」)
「吉永千穂(高校二年生)は、無気力な少女。
いじめられっ子に目をつけられ、仲良しグループからは仲間外れにされ、学校に登校できなくなる。
そのまま引きこもりになった彼女はある時、テレビの中に理想の生活を観る。
彼女がつまらない現実を拒否すると、彼女はテレビの中の世界にいた。
そこで、苦しむことも傷つくこともない毎日を送るのだが、その世界でのテレビでは…」
・「bye-bye」(1994年「月刊少女フレンド4月号増刊 サスペンス&ホラー特集号」)
「小学校時代のいじめにより、人間不信になった麻美。
中学二年の時、奈々という少女と出会ったことで、彼女は多くの友人に恵まれるが、心を全部、開くことができなかった。
修学旅行のバスで、奈々は、麻美に好きな人に告白するよう忠告する。
しかし、人に嫌われることが怖くて、麻美は曖昧な返事しかできない。
麻美の打ち解けない態度を奈々が指摘した時、ブレーキ音の後で大きな音がする。
気が付くと、バスは目的地に着いていた。
だが、奈々を含め、クラスメート達は皆、麻美を無視する。
麻美は慌てて彼らを追いかけるが、すれ違いばかり。
そのうちに集合時間となるのだが…」
・「かわいいあたし」(1994年「月刊少女フレンド12月号増刊 サスペンス&ホラー特集号」)
「笠井由里は、自分の容貌にコンプレックスを抱いていた。
クラスメートの橘ぐらいに美人だったらと憧れるが、橘は性格がもの凄くキツく、皆から敬遠されていた。
下校途中、二人は一緒に帰宅することになる。
由里が橘に自分の考えを打ち明けると、橘は「自分のカオ キライ」「いっそ早く死んじゃって別の自分に生まれかわりたいくらい…」と言い放つ。
だが、その後、二人は交通事故にあう。
霊体となった由里は、ズタボロになった自分の身体を捨て、橘の身体に入り込む。
理想の顔を得て、由里は幸せになれると考えるが、生前の橘の「生きてくのすごいむずかしい」という言葉の真の意味を知ることとなる…」
・「永遠の月曜日」(1995年「月刊少女フレンド3月号増刊 サスペンス&ホラー特集号」)
「月曜日。
朝倉美雪は、中学校に出ることに決める。
というのも、同じクラスだった城田累の夢を見たからであった。
あちこちで、いろいろな人に勇気と元気をもらいながら、美雪は彼を捜す。
彼とはとうとう出会えず日暮れ、彼との思い出がある川土手を歩いていると…」
青春ホラーの名品集です。
と言うよりは、「ホラーの設定を借りた、シリアスな青春もの」と形容した方が正確かも。(井口かのん先生はホラーは苦手と明言しております。)
「永遠の日曜日」以外の三作品は、いじめや疎外感、コンプレックスに揺れ動く思春期の少女の心理を丁寧に描き、(おっさんの私でも)読んでて、かなりつらいです。
読後の精神的ダメージは地味に大きいのではないでしょうか?
2021年4月30日 ページ作成・執筆