里中満智子「黒衣のエバ」(1984年6月14日第一刷・10月10日第二刷発行)

 収録作品

・「黒衣のエバ」
「母親を亡くした、六歳のエバ。
 彼女は、先に亡くなった父親の兄の屋敷に引き取られる。
 母親の死による孤独に苛まされるエバにとって、その家の息子、七歳のシドニー=ベーカーの優しさだけが心の支えであった。
 そして、十年、エバはシドニーだけを心の支えとして美しく成長し、シドニーと相思相愛の仲となる。
 だが、シドニーの父は二人の仲を快く思わず、貴族の娘、オリビアとの縁談をシドニーに持ち掛ける。
 エバの心は揺れるが、オリビアは縁談には興味がなく、結果的に、シドニーはオリビアへの想いを再確認することになる。
 シドニーはエバに卒業後に結婚の約束をし、シドニーは美術学校に通うためにロンドンへ行く。
 しかし、彼からのエバへの音信が途絶え、オリビアによると、エバではない女性の絵の大作に取り組んでいるらしい。
 不安な思いを抱いて、エバはロンドンのシドニーの部屋に向かうのだが…」

・「影のささやき」
「村上志郎と朱美は公認のカップル。
 バレンタイン・デーの時、志郎に送り主不明のチョコレートが届く。
 それは、朱美のクラスのオカルト少女(霊感なし)、尾崎多恵からのものであった。
 志郎のことをずっと想い続けてきた多恵は、朱美に、一度だけでいいから彼とゆっくり話したいと頼む。
 嫉妬を抱いた朱美は、チョコを贈ったことを言いふらすと脅し、彼女を志郎に近づけまいとする。
 その翌日、多恵は交通事故で急死。
 以来、朱美は多恵の霊をしばしば視るようになる。
 そして、志郎にまとわりつく多恵の霊に、彼を奪われるのではないかという不安にかられていく…」

・「薔薇にくちづけ」
「英国。
 ある邸のバラの花壇に女児が捨てられていた。
 ローズマリーと名付けられた女児は、十七年後、美しい娘へ成長する。
 彼女は、血のつながっていない兄、オリバーを誰よりも愛していた。
 しかし、オリバーにとって彼女は単なる妹でしかなく、牧師の娘、ジュリアと相思相愛の仲となる。
 二人の結婚が決まり、失意のどん底にいるローズマリーは寝付き、衰弱していく。
 だが、バラで傷つけた指の血をすすって以来、夜な夜な、ローズマリーはジュリアの寝床を訪れるようになる。
 原因不明のまま、ジュリアは衰弱し、遂に死亡。
 ジュリアの葬儀の際、オリバーは、ローズマリーが手にしたバラが枯れていくのを目にして、彼女の正体を悟るのだが…」

 私、少女漫画に関しては、ほとんど興味がありませんので、里中満智子先生のことは大して知りません。
 恐らく、これが最初に読んだ里中満智子先生の作品集です。
 ですので、あまり語る資格はないのですが、「愛のドラマ」が作品の根幹に据えられているように思いました。
 怪奇ムードよりも、「激しい愛のありかた」(注1)の方が遥かに印象に残ります。
 三作全て水準は高く、個人的なベストは、恋人を慕う霊を視る少女の心の葛藤を描いた「影のささやき」です。
 恋愛漫画としても、オカルト・怪奇マンガとしても一級品だと思うのですが、埋もれてしまった様子で、勿体ないと思います。

・注1
「子どもの昭和史 少女マンガの世界U 昭和三十八年―六十四年」(平凡社/別冊太陽/1991年10月17日初版発行)収録、故・米沢嘉博氏による「里中満智子 華麗なるスターター」より引用(p42)。

2017年12月24日 ページ作成・執筆

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