曽祢まさこ「幽霊狩り」(2008年4月11日第1刷発行)

 収録作品

・「幽霊狩り ダニエル」(「なかよし」昭和49年8月増刊号掲載)
「北イングランド、カーライルの旧家、ウッドワーズ家。
 長男のアーサーが五歳の時、父親が病死。
 その三か月後に、次男のダニエルが産まれる。
 ダニエルは産まれつき盲目であったが、人の未来を視る、不思議な力が備わっていた。
 如何なる動物もダニエルに決してなつくことはなく、村人達は「のろわれた悪魔の血」と忌み嫌う。
 母親が病死以後、ダニエルは村から離れたリーズ盲学院へと行く。
 アーサーも村を出て、寄宿制の中学校に入学し、休暇には二人、カンバーランドの別荘で過ごす。
 ダニエルはその超能力故に幾度も孤独や悲哀を味わいながらも、時は流れる。
 ダニエルが十六歳の時、大学の入学資格まで持ちながら、彼はカンバーランドの別荘に隠遁する。
 夏の休暇の際、カンバーランドの別荘に、スタンリーとクラリサのカップルが訪れる。
 彼らは、エジンバラ大学に通うアーサーの親友であり、近々、結婚する仲であった。
 だが、ダニエルはクラリサに「血のこおるような不安と絶望」を感じ、スタンリーを不幸にするとアーサーに告げる。
 九月、クラリサは交通事故で急死してしまい、スタンリーは悲嘆と絶望に暮れ、生活は荒れる一方。
 そんな彼の前に、クラリサの亡霊が現れ、彼を黄泉へと誘う。
 スタンリーの異変に気付いたアーサーはダニエルに助けを求めるのだが…」

・「幽霊狩り 魔犬シリウス」(1975年「別冊なかよし1月号」掲載)
「ある日、ダニエルは、犬の鳴き声に呼ばれ、シリウスという子犬と出会う。
 シリウスは、誘拐されて行方不明となっている、船舶王の故・コールリッジ氏の娘、ニーナの飼い犬であった。
 ダニエルは、近くの山小屋に、ニーナの射殺体と、何物かに喉を喰いちぎられた誘拐犯の死体があることを霊視する。
 ダニエルは全てを察しながらも、ダニエルにとってシリウスは初めての友人であった。
 彼はシリウスがニーナのことを忘れてくれるよう祈るが、シリウスの復讐を止めることができない。
 主人を殺され、憎悪の塊となったシリウスは誘拐犯の一味を次々と襲って、殺害。
 だが、傷つき、歯止めの効かなくなったシリウスは、リバプールを混乱に陥れることとなる…」

・「幽霊狩り マリアンヌ」(「別冊なかよし」昭和50年第3号掲載)
「別荘近くの湖で、ダニエルはマリアンヌという少女と出会う。
 彼女は、フランス人の父と共に、母方の祖母の農場に滞在していた。
 異国で半年前に病死した、彼女の母はこの地の出身であり、マリアンヌは湖の畔で母親の追憶に浸る。
 そして、彼女は湖に白いバラを流し、この湖では、彼女の母の恋人が亡くなったのだとダニエルに語る。
 その日以来、夜ごと、マリアンヌはローズマリーと呼ぶ声を聞くようになる。
 ローズマリーは彼女の母の名であり、祖母の話からマリアンヌは母にエドワードという弟がいたことを知る。
 湖からマリアンヌを呼ぶ者の正体は…?
 ダニエルはマリアンヌを救おうとするのだが…」

・「幽霊狩り・2 天使が夢を見る夜に…」(1991年「アップルミステリー」にて三回連載)
「アーサーの大学卒業後、ダニエルはエジンバラに兄と共に住むことになる。
 アパートでは手狭なので、アーサーは新しく部屋を探すが、難航。
 一つ、感じのいい一軒家があったが、そこは近所では幽霊屋敷と噂されていた。
 その家はグレイハウスと呼ばれ、過去、強盗殺人があったらしい。
 噂だけで特に何かが起きるという訳ではないが、念のために、ダニエルが家を霊視することとなる。
 建築から二百年以上経つ家だけに、過去の様々な死が見えるものの、邪悪なものの存在は感じられない。
 彼の視る限りでは、ただ、男の子の幽霊が一人いるだけで、ダニエルはこの家を気に入る。
 二人が家に移ってから、ダニエルはこの家に慣れるために、あちこちを霊視する。
 そこで、男の子の霊がトビィという名で、彼が数十年前に木から落ちて死んだことを知る。
 ダニエルはトビィに天国に行くよう諭すが、トビィは一つ気になることがある様子。
 月の明るい夜には女の子の泣き声が聞こえるとトビィは話し、彼では少女のもとに行けないため、トビィはダニエルに彼女を助けるよう頼む。
 かすかな少女の泣き声を頼りに、ダニエルが少女の方に向かうと、同じ家の中なのに、空気が重い。
 厚く重い扉をどうにか通り抜けると、納戸のような場所で少女が寂しく泣いていた。
 エルシーという名の少女は、病気という名目で、おじ・おばからここに閉じ込められているらしい。
 彼女はダニエルを天使と思い込み、ここから出してくれるようお願いする。
 ダニエルは念力を振り絞って、戸の鍵を壊すが、その瞬間、意識がとび、気が付くと、寝室のベッドの中であった。
 次の夜も、エルシーの泣き声が聞こえ、ダニエルは彼女のもとに向かう。
 そこで、ダニエルは、エルシーのおじ・おばが彼女を殺そうとしていることを知る。
 ダニエルは彼女の命を救うために、この家の過去の調査をアーサーに依頼。
 そして、自身は、身体の負担になるのを顧みず、エルシーを救うために彼女のもとへ赴く…」

・「幽霊狩り・2/サイド・ストーリー モロー氏の帰宅」
「今日は娘の誕生日。
 早く帰らないと、と思いながら、誕生日プレゼントを片手に、モロー氏は自宅へと向かう。
 しかし、彼が帰宅しても、家の戸は固く閉ざされ、妻も子供達も中に入れてくれようとはしない。
 執拗に戸をノックし続ける彼の肩を、金髪の青年が叩く。
 彼はモロー氏に彼の家族はそこにいないと告げ、彼の「帰るべき場所」を教える…」

 名作「幽霊狩り」と知られざる続編「幽霊狩り・2」(ポケット講談社コミックス/未入手)を一冊にまとめた文庫です。
 「幽霊狩り・2」は16年後に描かれた続編のために絵柄がかなり違ってますが、ストーリーは完成度が高いと思います。
 ダニエルのナイーブさが薄れたという意見もあるかもしれませんが、ラスト、ダニエルが外の世界に出ようと決意するあたり、私は好きです。

2017年8月16日 ページ作成・執筆

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