渡千枝「死霊の贈りもの」(1986年7月14日第1刷発行)

 収録作品

・「死霊の贈りもの」(「別フレDXジュリエット 1985年9月号」掲載)
「1985年、ロンドン。
 スタンリーは非常に腕のいいギタリストであったが、むらっ気なところがあった。
 ある夜、重要なステージを放り出した彼は、ゴミ箱の中からギターを見つける。
 それは、13年前に亡くなった天才ギタリスト、マルコム=レックスのものであった。
 スタンリーはそのギターでステージを成功させ、彼の属するバンド(KNIGHTS)は成功への階段を歩む。
 だが、彼の周囲では、マネージャーのネルソン、レコード会社の重役が次々と変死する。
 彼らは、左手や左腕を著しく損傷していた。
 そんな時、スタンリーの幼馴染のティナは、スタンリーを写した写真が心霊写真であることに気付く。
 その写真には、ギターの持ち主であったマルコム=レックスのエクトプラズムが写り込んでいた。
 バンドのリーダー、グレッグは、ティナと共に、マルコムのバンドのベーシストだったサム=マースを訪れる。
 サムは、マルコム=レックスの死と、その呪いについて語る。
 ティナやグレッグは、スタンリーにギターを手放すよう勧めるのだが…。
 マルコムの呪いを止めることはできるのであろうか…?」

・「二人だけのイエスタデイ」(「別フレDXジュリエット 1985年11月号」掲載)
「S県、海の近くの小さな町。
 篠崎辰郎は、そこで小さな医院を開いていた。
 ある日、彼のもとに、後輩の中嶋が一人の少女を連れてくる。
 この少女は、八年前に轢き逃げされて亡くなった妻、舞の生まれ変わりであった。
 舞は、彼のことなら何でも知っており、辰郎と仲良くしていた幼馴染の絵里子に対して、猛烈な敵意を示す。
 舞は辰郎と共に暮らし始めるが、何者かに命を狙われるようになる。
 彼女が記憶を完全に取り戻した時、その理由が明らかになる…」

・「死の砂迷宮」(「別フレ増刊ロミオ 1985年初夏の号」掲載)
「浅井均は、悪夢に悩まされていた。
 その悪夢とは、砂漠で遭難中、自動販売機を見つけるが、中は砂だらけで一缶もなく、渇き死ぬというものであった。
 その夢を見るようになったのは、七年前。
 小学生だった彼が蹴とばした空き缶のせいで、女子高生が交通事故死したことにショックを受けたためであった。
 高校生になった頃、彼に、里見充子というガールフレンドができる。
 だが、彼女の姉、有子は、彼の空き缶が原因で交通事故死した女子高生であった。
 以来、彼は、有子の怨霊に悩まされ、憔悴していく。
 心配した充子は、試験休みに、卓球部の連中との山へのキャンプに、彼を誘う。
 気分転換のため、彼はその案に乗るが、キャンプの最中、充子と共に擂鉢状の窪地に転落してしまう。
 地獄のような熱気の中、均はあの夢を思い起こすのだが…」

 良質の作品が収められた単行本です。
 個人的なお気に入りは、もの悲しい短編「死の砂迷宮」。
 「缶ジュースの飲み口に…」はかなりキます。

2019年11月25日 ページ作成・執筆
2022年12月5日 加筆訂正

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