大橋薫「人魚の首」(1995年1月13日第1刷発行)

 収録作品

・「人魚の首」(注1)
「ある高校の一年生、早川マキは引っ込み思案な少女。
 ある日、彼女は憧れの先輩の三原信彦の定期券を拾い、彼の教室の外まで来る。
 だが、躊躇っているうちに、友人の柴田ルミがやって来て、定期券を三原先輩に渡してしまう。
 これをきっかけに、ルミは三原先輩と仲良くなっていく。
 それを横目で見ながらも、マキは決して自分の想いを打ち明けようとはしない。
 彼女は人魚の夢をよく見るようになり、夢の人魚は自分を食べるよう勧めてくる。
 人魚を食べると、人魚のように美しくなれるというのだが…」

・「セイレーン ―人魚の歌声―」(1991年「少女フレンド1月5日号増刊 サスペンス&ホラー特集号」)
「ドイツから田舎の高校に転校してきた緒方マリア。
 彼女はオペラ歌手を母に持ち、人間離れした歌唱力を持っていた。
 だが、長い間、歌だけが友達で、また、人も彼女の歌しか注目せず、彼女は歌にしがみついていた。
 そのため、歌以外で喋ることは滅多になく、「人魚姫」とあだ名される。
 クラスメートの緒方は彼女を放っておけなくて、声をかける。
 最初は無視されたものの、不良から助けたことをきっかけに彼女は徐々に打ち解けていく。
 しかし、彼女の「歌」への依存は根深く、二人の間に深い溝ができる。
 ある日の放課後、彼女が旧音楽室で一人、レッスンをしていると、人魚(セイレーン)達の幻を視る。
 何故、セイレーンが呼ばれたのであろうか…?」

・「人魚のいる海 ―真澄鏡―」
「自殺の名所の岬。
 この海には、ここで命を落とした者は人魚になるという言い伝えがあった。
 冬のある日、田中真澄は岬から飛び降り自殺を図る。
 彼女は家庭にも職場にも居場所がなく、職場の金を盗んだ疑いをかけられたことをきっかけに、人生に絶望したのであった。
 運よく、裕太という少年に命を助けられ、彼女は彼の住む家に厄介になる。
 裕太は中学生であったが、秋からずっと学校に行かず、海にばかり出かけていた。
 彼が海に行く理由は人魚を捜すためで、唯一の肉親だった母親は病気を苦にして、夏の終わり頃、岬から身を投げていた。
 そして、母親の名は真澄で、彼は田中真澄に母親の面影を重ねる。
 彼の人魚は見つかるのだろうか…?
 そして、彼らは残酷な真実を目の当たりにする…」

・「花の名前」
「椎名瞳(15歳)は五年ぶりに町に帰って来る。
 この町には嫌な思い出しかなかった。
 小学五年生の頃、彼女はクラスメート達からいじめを受ける。
 いじめの張本人は新庄という少年で、彼は五年前に殺されていた。
 当時のクラスメートだった大山友子は過去のことを謝り、彼女の心を開こうとするが、瞳の心はいまだに過去のせいで閉ざされたままであった。
 彼女にとって、この町の唯一の慰めは、幼い時、手の届かなかった、白い花。
 その花を見ている時、同年配の少年が彼女に声をかけてくる。
 彼女は、この花が咲き乱れる丘で、彼と再び会う。
 この丘は、彼女を五年間苦しめた出来事があった場所であった…」

・「夢のつづき」(1993年「少女フレンド4月号増刊 サスペンス&ホラー特集号」)
「ユミは、鈴宮千春のたった一人の友達。
 彼女は「想像の世界に住んでる現実離れした」少女で、汚れた現実を「ステキなウソ」で固める「夢想家」であった。
 彼女の王子様はバスケ部のエース、葉月先輩で、相思相愛だと思い込む。
 実際は、葉月先輩には彼女がいたが、散々嫌がらせをして、遂には、バスケの試合で、彼女の顔に重傷を負わせる。
 その後、傷心の葉月先輩にユミはラブレターを出すが、それを手渡した千春が葉月先輩から交際を申し込まれる。
 千春はこの「小さなウソ」でお姫様になろうとするのだが…」

・注1
 「人魚の首」と言えば、偏愛しているバンド「たま」(「さよなら人類」で有名)の1stアルバム「さんだる」のオープニング・トラック、「方向音痴」をよろしく!!
 何回聴いても、最初聴いた時の衝撃が甦ります。
 ただ、「知床半島」が歌詞に出てくるので、今現在は、まずいかも…。

2022年6月24日 ページ作成・執筆

講談社・リストに戻る

メインページに戻る