成毛厚子「秘薬」(1988年4月13日第1刷発行)

 収録作品

・「眠れる森の…」(「昭和62年発行 ハローフレンド6月号」所載)
「佐和子の住むマンションの隣には、松沢碧という女子大生が住んでいる。
 彼女は、2DKのマンションの室内に鉢植えをたくさん置き、ベランダでは野菜を育てるという変わり者。
 佐和子と碧が植物用の土や肥料を買いに行った帰り、二人はバラ屋敷という無人の屋敷に気づく。
 その中には、荒れ果てたバラ園があり、碧はそこの土が良質であることを見抜き、部屋に持ち帰る。
 碧はその土をバラの鉢植えに使うと、一日で種から芽が出る。
 しかし、その夜、壁越しに何かに怯える碧の声と物音がしたかと思うと、それは悲鳴に変わる。
 佐和子とアパートの管理人が部屋に入ると、首を切った碧の死体があった。
 碧は自殺と扱われ、碧の形見に佐和子はバラの鉢を貰い受けるが…」

・「野辺送り」(「昭和62年発行 ハローフレンド8月号」所載)
「田舎町を紹介する番組のレポーターを担当する、新人モデルの五月。
 その撮影の途中、五月は、奇妙な葬列を目にする。
 その古色蒼然とした葬列には「泣き女」や、狐の面をつけた浴衣姿の女の子の姿等があった。
 土地の人が言うには、そういった野辺送りは五十年ぐらい昔に行われていたものだと言う。
 その光景を見てから、五月の周辺に狐面をつけた少女が現れるのだった。
 狐の面をつけた少女の正体とは…?」

・「手つなぎおに」(「昭和62年発行 週刊少女フレンド第18号」所載)
「ある民宿に旅行に来た若者達。
 彼らの目的の一つに、奥手な智美と堀田をくっつけるということがあった。
 堀田は左手に常に包帯を巻いていた。
 子供の頃、野犬に襲われ、噛み殺された少女の手を握っていて、それ以来、左手は開かなくなったと言う。
 友人達は、夜、手つなぎおにをして、智美と堀田を二人きりにするのだが…」

・「ダーク・アングル」(「昭和62年発行 ハローフレンド12月号」所載)
「塙美納(はなわ・みのう)のおばは有名な写真家。
 その展示会をやっている高層ビルを訪れた、美納と友人の乃梨子。
 加えて、招待状を出しておいた、憧れの写真部部長である先輩と、その友人の苫米地(とまぶち)勇。
 美納は、ギャラリーのあるビルで、奇妙な黒いモヤを幾度も目にする。
 また、エレベーターに入ったはずの乃梨子がそのまま、行方不明になってしまう。
 美納は苫米地勇よりビルに近寄らないよう注意を受けるが、忘れ物を捜しに、再びビルを訪れる…」

・「秘薬」(「昭和63年1月5日発行 ハローフレンド特別増刊号」所載)
「高校生の恵理は、自分の体型が気になるお年頃。
 彼女は、誕生日プレゼントを買いに来た時に、アンティーク・ショップで、フランス製の宝石箱に一目惚れ、値段も手頃だったので、それを買ってもらう。
 恵理が家でその宝石箱を見ていると、引き出しに紙袋が入っていた。
 紙袋には中国語が書かれ、その中には七粒の錠剤と、日本語で書かれたメモがあった。
 メモによると、この錠剤は中国の秘薬で、寝る前に飲むだけで、ダイエットできると書いてある。
 恵理は試しに一粒飲んでみるが、次の朝から、食欲がない。
 また、食べ物を見ると、奇妙な幻覚を見たり、食べ物の匂いを耐えがたく感じたりして、丸一日何も食べられなかった。
 薬に対して危険を感じる恵理だが、ダイエットへの願望は強く、その夜も薬を飲んでしまう…」

 見返しの「作者からひとこと」で「怖さには自信があります」と書いてある程、水準の高い作品を集めた単行本です。
 完成度はどれも高いのですが、個人的な願望としては、「手つなぎおに」や「ダーク・アングル」で残酷描写にもっともっと頑張って欲しかった気も…。
 ちなみに、「手つなぎおに」のラストはカラーページだったのでしょうか?
 もし、そうだったら、カラーで復刻して欲しいものであります。

平成27年4月14・15日 ページ作成・執筆

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