すねやかずみ「1年C組恐怖会議A」(1995年9月16日第1刷発行)

 天徳高校の臨海学校。
 最後の夜、海の近くの廃校になった小学校の体育館に1年C組の生徒達が先生達に内緒で集まる。
 彼らの目的は「百物語」をすることであった…。

・「第八話 先生の好物」
「出席番号8番、河合美果は語る。
 彼女の通っていた中学校に日下部牧男という美術教師がいた。
 生徒からの人気が高く、休日には生徒が彼のアパートを訪れる。
 と言うのも、日下部はグルメで、彼の作る料理はおいしいと評判だからであった。
 ただ一つだけ、彼には奇妙な噂があった。
 一年のうち、一度だけ、彼の受け持ちのクラスの誰かが丸刈りにされるのである。
 ある時、男子生徒四人が美術室の掃除の時、騒いで、日下部の絵を破ってしまう。
 張本人の大杉は自分が丸刈りにされると考えて…」

・「第九話 雪山の一夜」
「出席番号9番、北原光二は語る。
 彼のおじ、高原清継は友人の西浦と共に八男ヶ岳に登っていた。
 二日目、山の天候が急に変わり、また、軽い雪崩にあって西浦とはぐれたため、一人で下山する。
 いつまで経っても麓につかず、下山コースを外れたと思い始めた時、山小屋を発見する。
 狭い小屋の中には八人の下山者がいた。
 彼は中に入り、吹雪をやむのを待つが、そのうちに、外から声のようなものが聞こえてくる。
 しかし、先客達はここにいるのが一番と彼に外へ出ないよう勧める。
 夜、休んでいると、戸が叩かれ、西浦の声が高畑を呼ぶのだが…」

・「第十話 遅刻厳禁」
「出席番号10番、久世夢子は語る。
 十数年前、館山玲子という高校二年生の少女がいた。
 彼女は異常と言っていいほど、時間に厳格で、時間を守らない人は他人の時間を奪う強盗と一緒と言って憚らない。
 彼女は時計に対しても厳しく、少しでも時間が狂っただけで、叩き壊していた。
 ある日、彼女は友達と映画の待ち合わせをしていて、自分だけ五分遅刻してしまう。
 その時だけ、彼女の腕時計が五分遅れていたのであった。
 ショックのあまり、彼女は家に駆け戻り、腕時計をめちゃくちゃに壊す。
 すると、壊した時計の針がどんどん回り出し…」

・「第十一話 1ピースの涙」
「出席番号11番、小林一郎は語る。
 小学校の時、彼は友人と共に放課後、片野の家にプリントを届けに行く。
 片野は頭はいいが、暗い感じで、よく学校を休んでいた。
 団地にある彼の部屋に行くと、彼は意外と元気で、両親が仕事に出ているというので、二人を中に招く。
 片野の部屋には幾つものジグソーパズルが飾られ、部屋の真ん中には巨大なジグソーパズルがあった。
 そのジグソーパズルは一万ピースもあり、残るは中央部分だけ。
 片野はあと少しで完成するので、学校をズル休みしたのである。
 小林はそれが気に入らず、いたずら心を起こして、ピースを一握りぶん、持ち帰る。
 その足で塾に行き、帰ろうとすると、街灯の下で片野が彼を待っていた…」

・「第十二話 幽霊列車の二人」
「出席番号12番、児嶋直美は語る。
 桃井幸子はY市に住む女子大生。
 彼女には彩藤綾という同じ大学に通う親友がいた。
 綾は彼氏とうまく行ってないと嘆いており、幸子は彼女にダブルデートをしようと誘う。
 数日後、彼女は、綾の恋人が兄の友人で顔見知りの本田竜哉だと知る。
 彼はここ最近、卒論が忙しくて、綾に会えなかったらしい。
 綾は車で彼を家に送るが、以来、綾の態度が妙に冷たくなる。
 幸子は留守電のメッセージで真相に気づき、綾に説明しようと、車で綾のところへ急ぐ。
 途中、踏切に差しかかるが、そこは「幽霊列車」の噂のある場所であった…」

・「第十三話 傷」
「出席番号13番、佐々木剣介は語る。
 彼はゲームセンターで早瀬弘史という地元の友人と出会う。
 早瀬は彼を今度の土曜、カラオケに行かないかと誘うが、それはダブルデートをする為であった。
 場所は駅の反対口の商店街を抜けた所に新しくできたカラオケBOXで、当日、早瀬は久美子と瞳という二人の娘をつれて来る。
 彼らは早速、カラオケを楽しむが、空調が故障しているのか、やけに暑い。
 剣介は、一人暮らしの老婆の家が地上げのために火を付けられたという噂を思い出すのだが…」

・「第十四話 心の距離」
「出席番号14番、志摩のぶ子は語る。
 来嶋さおりと南條エリカは地方の高校から、同じ大学に進学して、東京のマンションでルームシェアをしていた。
 ある雨の日、みのるという青年が現れ、さおりに「アジサイの改良種」を鉢植えを渡す。
 みのるは高校の時の園芸部部長で、高校卒業の際、さおりに告白するが、さおりは遠距離恋愛に自信がなく、返事をせずじまいであった。
 彼はその植物を彼女のことを想いながら育てたと話し、もしも、花が咲いたなら、その時に卒業式の返事をしてほしいと頼む。
 以来、彼女は毎日、鉢植えに水をやるが、花はなかなか咲かない。
 一月ぐらい経った時、彼女は、水やりをエリカにお願いして、結婚式に参加するために地元に帰る。
 そこで意外なことを知らされるのだが…」
(「少年マガジンスペシャル」1995年第1号〜第7号掲載)

 個人的なお気に入りは「1ピースの涙」と「傷」。
 「1ピースの涙」はかなり衝撃的なラストで、トラウマ度は高め。
 「傷」は一種の「幽霊屋敷」ものですが、「幽霊」の正体を捻っており、感心しました。

2023年3月11・14・22日 ページ作成・執筆

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