空路「殺してあげる」(1996年7月12日発行)

 収録作品

・「夜の吐息」
「ある学校で、夜中に、白い影が校内をうろつくという噂が広まる。
 三人の生徒(男二人・女一人)がその噂に興味を持ち、夜の学校に確かめに行く。
 校内を探索していると、廊下の奥から足音が聞こえてくる。
 それは警備員のおじさんであった。
 警備員さんと別れ、ほっとした矢先、彼らの前に奇怪な女性が現れる…」

・「あい子」
「飯島あい子は、陰気なために、クラスぐるみでいじめの対象となっていた。
 母親は亡くなり、父親も仕事でほとんど家にいず、先生もいじめを黙認し、頼れる者は何もない。
 ただ一人、転校生の中井という女生徒だけが彼女を明るく励まし、力になろうとする。
 しかし、中井もクラスで嫌がらせを受けるようになり、あい子は自分の無力さに絶望。
 彼女は自分の部屋で、骨董屋で買ったペンダントに自分の生き血を捧げ、復讐を願うのだが…」

・「殺してあげる」
「内気で不器用、容貌も冴えない玲子は、学校でも家庭でも疎外感に苛まされる。
 ある夜、部屋で「自分なんか産まれて来なきゃよかった」と強く思った時、どこからか「殺してあげる」という声が聞こえる。
 翌日、学校からの帰宅途中、彼女は、その声と共に、次々と身の危険にさらされる。
 逃げ惑ううちに、彼女はマンションの屋上で、その声の人物と出会うのだが…」

・「小さな目」
「保育園の先生をしていた礼子は、たかしの父親、こうじからプロポーズを受ける。
 実は、二人は二年前から不倫の関係であり、半年前、たかしの母親が交通事故で亡くなったことから、ようやく結ばれたのであった。
 大好きな礼子先生と一緒に住むことになって、当初、たかしは喜ぶが、次第に様子がおかしくなってくる。
 同時に、礼子がたかしと関わるたびに、何かしら事故が起こるようになり…」

・「弟」
「舞子の弟、あきらが川で溺れて亡くなってから三か月。
 父親は、気分転換のため、北海道旅行を計画する。
 だが、夜な夜な、舞子の前に、あきらの幽霊が現れたことから、彼女は徐々に情緒不安定になる。
 彼女は、あきらが自分を迎えに来ると両親に訴えるのだが…」

・「潔癖症」
「アメリカでの半年の海外研修を終え、帰国した千佳は、親友の弥生がおかしくなったと聞く。
 千佳が弥生の家を訪れると、彼女はすっかりやつれ、打ちひしがれていた。
 どうも、プレイボーイの恋人に捨てられたショックで、おかしくなっているらしい。
 また、彼女は、赤く擦りむけるまで、何度も何度も手を洗い、生ゴミが出ると蛆がわくからと、料理すらしようとしない。
 彼女の「潔癖症」の原因とは…?」

・「海へ」
「健と奈央が冬の海を散歩していると、少年が断崖から跳び下り自殺を図る場面に出くわす。
 健により少年は救助されるが、少年は名前が勇太、そして、両親はなく、一人ぼっちということしか話さない。
 健は、一か月前に、自分の母親が女狂いに父親と無理心中をしたこともあり、勇太に対して腹を立てるも、放っておくことができない。
 その夜、健と奈央は、お腹の子供を堕ろす堕ろさないで喧嘩する。
 すると、いつの間にかその場にいた勇太が奈央に子供を「堕ろして」と言う。
 翌日、奈央はテレビのニュースで、勇太が母親が惨殺し、逃亡しているらしいと知る。
 彼女は健に、勇太を警察に届けるよう勧めるのだが…。
 勇太の真の目的は…?」

 長い間、様々な雑誌に描き続けている、大ベテランの空路(くろ)先生。
 アクはそこまで強くはありませんが、ベテランだけあって、手堅く、安心して読める作品が多いです。
 特に、怪奇漫画雑誌では中堅どころの御一人で、多数の作品を物しているにも関わらず、何故か、単行本化にはちっとも恵まれていない模様。
 空路先生の単独名義の単行本はこれだけではないでしょうか?(間違ったら、ごめんね…。)
 電子書籍でも構わないので、過去の作品を復刻して、積極的な評価を得られるよう、願っております。

2019年9月23日/10月1日 ページ作成・執筆
2023年2月17日 加筆訂正

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