成毛厚子「魔の風が吹く」(1989年10月13日第1刷発行)

 収録作品

・「魔の風が吹く」(「平成1年発行 少女フレンド8月15日増刊」所載)
「父母が離婚したため、母親の実家で夏休みを過ごすことになった晴代。
 実家は地方の港町にあり、母親の姉の一家と、先の長くない、寝たきりの祖母が住んでいた。
 晴代は田舎暮らしには興味がなく、また、表面は親切そうだが、内面は嫉妬深く意地の悪い従姉妹のマキもいて、居心地はよくない。
 しかし、東京の出と、可愛いルックスのおかげで、マキの男友達の間で人気を得て、昔に付き合いのあった勝とも再会する。
 それがおもしろくないマキは、晴代が脚の多い動物が嫌いなことを利用して、蟹で晴代を脅かし、足に怪我をさせる。
 家で療養していた晴代は、ふと立ち寄った祖母の部屋で、「生あたたかい風」を感じる。
 すると、祖母は、この家は「ミコガミ様」の血筋で、何世代に一人ぐらい、「見える」人間が産まれるのだと話す。
 祖母も、一度だけ、何十年も昔のある暑い日、「生ぐさくて ねっとりと重い風が見えた」ことがあったのだった。
 その夜、海から何かが大挙して絶え間なくゆらゆらと上がってきたらしいが、話の途中で、祖母はうとうとと眠り込んでしまい、一体何がやって来たのかはわからずじまい。
 それから、晴代の周囲では奇怪なことが起こるようになり、「生あたたかい風」を幾たびも感じる。
 晴代は一人で東京に帰る決心をするが…」
 とにもかくにも、「蟹」なのであります。この作品が原因で蟹が嫌いになった読者は多いのではないでしょうか?

・「夜の底からやってくる」(「平成1年発行 少女フレンド3月10日増刊」所載)
「ある冬の日、マンションの一階にあるコンビニエンス・ストアを中心として、凍死者の霊が、マンションに住む妹と妹のもとを訪ねた姉を、コンビニで万引きした青年を、深夜にコンビニを訪れた客達を襲う…」
 こういうストレートな話が好きです。
 どうのこうの理屈づけせずに、ひたすらショック描写で見せ、最後は釈然としないバッド・エンド…う〜ん、いいです。
 個人的には、最後のコンビニでの籠城をもう少し頑張って欲しかったところです。

平成27年4月18・19日 ページ作成・執筆

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