成毛厚子「闇からの誘い」(1983年6月14日第1刷・1985年6月10日第10刷発行)

 収録作品

・「闇からの誘い」(「昭和58年発行 週刊少女フレンド第12号」所載)
「彩は公園で片目に眼帯をしている少女と出会う。
 彩は少女をどこかで見た記憶があるが、はっきりとしない。
 少女はさがしものをしていると言うが、それはもう見つかっていると謎めいた言葉を残し、消える。
 それ以後、彩は片目に原因不明の痛みを覚えるようになり、それはどんどんひどくなる。
 そして、彩につきまとう少女の影…眼帯の少女の正体とは…?」
 これを読んで、反射的に「ドールズ」(米/1987年/スチュワート・ゴードン監督)という映画を思い出しましたが、「ドールズ」よりも数年も前の作品です。
 当時の読者の少女達に大きなトラウマを残した作品ではないでしょうか…。

・「かごめ かごめ」(「昭和57年発行 ハローフレンド3月号」所載)
「春休み、子供の頃に住んでいた田舎に帰ってきた奈緒子。
 彼女はそこで幼い少年の幻をたびたび見る。
 そして、彼女の周囲に何故か転がっている石ころ…。
 彼女は幼い頃の記憶をたどるが、お堂の奥の山に関する記憶がすっぽ抜けていた。
 彼女が引っ越す直前、彼女は男の子と一緒にその山に入り、男の子は行方不明になったという。
 彼女が見る男の子は、その行方不明になった男の子なのだろうか?」
 ジェイコブス「井戸」をちょっぴり連想しました。
 死体と井戸の相性はなかなかいいと思うのですが、何でなんでしょうね?

・「幽霊ごっこ」(「昭和58年発行 ハローフレンド4・5月号」所載)
「一戸建てに引っ越してきたが、小山園子の気持ちは晴れない。
 引っ込み思案でおとなしい園子は、新しい学校で、友人をつくれないと思い込んでいたのだ。
 しかし、新しいクラスで、園子に興味を持ってくれた男子生徒は、UFO同好会に所属する変わり者。
 彼の魅力に魅かれ、園子はUFOを見たと嘘をつき、嘘は嘘を呼び、遂には、家の隣の無人家でUFOを呼ぶこととなる。
 UFOは現れなかったものの、今度は同じ家で幽霊を探す破目になるのだった…」

・「204号室の足音」
「受験勉強のために古ぼけたアパートの一室を借りた少女。
 しかし、夜更けに、上の階から足音と思しき音が絶えず響く。
 堪りかねて、その部屋に苦情を言いに行くものの、その部屋には陰気な女が一人いるだけで、物音を立てていたような気配はない。
 少女は女がペットか何かを隠れて飼っているのではないかと疑い、女の留守にその部屋にこっそり入る。
 乱雑な部屋の中、少女は押入れの中にドブネズミが入っているカゴを見つける。
 そして、部屋のあちこちに落書きされた子供の絵…深夜の物音の正体は…?」

・「闇に消えた花嫁」
「姉の嫁入りのために、嫁入り先の田舎の旧家を訪れた、みちる。
 姉の結婚相手は、浮田家の十五代当主だが、田舎には住んでなく、東京でサラリーマンをしている。
 将来的に取り壊される旧家を四十年ぶりに開け放ち、華々しく結婚式が行われる。
 が、式の途中、花嫁が行方不明になってしまう。
 みちると花婿が花嫁を必死になって探すうちに、この旧家に伝わる「鬼の伝説」の真相が明らかになるのだった…」

 いまだに活躍中の大御所、成毛厚子先生が最も読まれたのは、少女マンガ雑誌に怪奇マンガが多数掲載された1980年代でありましょう。
 個人的な考えですが、1980年代を代表する怪奇マンガ・クイーン、且つ、トラウマ・メーカーであったように思います。
 そんな成毛厚子先生の講談社フレンドでの最初の(?)単行本ですが、のっけからヘビ〜な「闇からの誘い」で始まります。
 続く作品も非常に後味の悪い作品ばかりで、「流石!!」と感嘆してしまいます。
 しかも、内容、構成、絵のどれをとってもレベルが非常に高く、今読んでも充分読み応えはあります。
 怪奇マンガというと「キワモノ」のイメージが絶えずつきまといますが、「キワモノ」でない、「スタンダード」な怪奇マンガの佳作です。

平成27年4月5・6日 ページ作成・執筆

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