小池ノクト
「蜜の島@」(2013年8月23日第1刷発行)
「蜜の島A」(2014年2月21日第1刷発行)
「蜜の島B」(2014年8月22日第1刷発行)
「蜜の島C」(2015年3月23日第1刷発行)
・「第一話 島へ」(単行本@/「月刊モーニングtwo」2013年2月号)
「昭和20年の終戦直後、南雲佳哉は戦友の貴船に妻子を故郷の石津島に連れて行くよう今わの際に頼まれる。
貴船は難破して、石津島にたどり着き、その島の女性を東京に連れてきたのであった。
その遺言を守るため、南雲は貴船の妻子を捜し、娘のミツだけを見つける。
そして、昭和22年。
南雲佳哉は貴船ミツという少女と共に鹿児島県の志布志へ向かう船に乗っていた…」
・「第二話 今村均」(単行本@/「月刊モーニングtwo」2013年3月号)
「船上で南雲は内務省調査局の瀬里沢極(せりざわ・きわむ)と出会い、石津島に向かう小舟へ乗り換える。
瀬里沢の目的は、本土からは忘れられた石津島の調査であった。
ようやく島に着き、彼らは瀬里沢と同じく内務省調査局の今村均と会う。
彼は一月前にこの島に着き、島民の名簿を作っていたのだが…」
・「第三話 ミツの家」(単行本@/「月刊モーニングtwo」2013年4月号)
「貴船ミツの母親の『咲田』であったが、島民の名簿には載っていない。
それでも、南雲は手がかりを求めて、村を訪れる。
村は自然に溢れ、村民たちは素朴、まるで理想郷のようであった。
村人たちに『咲田』のことを聞くと、ある家に案内される。
そこはどう見ても廃屋で、中には誰もいないようであったが…」
・「第四話 木乃伊」(単行本@/「月刊モーニングtwo」2013年5月号)
「廃屋で発見された木乃伊の前には何故か食膳が据えてあった。
わからないことだらけで、瀬里沢は村の年寄りに話を聞こうと考える。
今村になついているハナの案内で、治三郎という老人のもとを訪れるが…」
・「第五話 島の夜」(単行本@/「月刊モーニングtwo」2013年6月号)
「治三郎の話は途方もなく、結局、何の収穫もなかった。
そこからの帰り道、この島を守りたい今村と島を変革しようとする瀬里沢との対立が明らかとなる。
南雲は仕方なく咲田の家に泊まるが、その晩、トヨという娘が訪ねてくる…」
・「第六話 一人目」(単行本@/「月刊モーニングtwo」2013年7月号)
「翌日、瀬里沢と今村が島の調査をしていると、瀕死のハルを発見する。
彼女は昨夜、崖から転落したらしい。
彼女を村まで運ぶも、ろくな手当てができず、彼女は亡くなる。
だが、彼女の事故には不審な点が多い。
昨夜、南雲は彼女が誰かと一緒に浜の方へ向かっているのを目撃していた。
ともかく、彼らはハナを埋葬しようとするのだが…」
・「第七話 二人目」(単行本@/「月刊モーニングtwo」2013年8月号)
「ハナの墓穴を掘りに行った今村が行方不明になる。
南雲と瀬里沢がその場所に行くと、墓の周りには血痕があった。
そして、複数人の足跡も…。
南雲が墓を掘り返すと、そこには…」
・「第八話 ヤマ」(単行本A/「月刊モーニングtwo」2013年9月号)
「瀬里沢は南雲にミツと共に海辺の小屋から出ないよう命令し、自分は村へ調査に出かける。
彼の関心事は村に墓がないのなら、遺体をどこに持って行くかということであった。
村人が言うには、人は最後に「山」の「天辺」に行くらしい。
そこで、瀬里沢は島で一番高い山に登ろうと考える。
途中、彼はムシタロウという力自慢の青年と出会う…」
・「第九話 宮司」(単行本A/「月刊モーニングtwo」2013年10月号)
「山の天辺には朽ちかけた神社があった。
この島には明治三年に須佐之男命が勧請されたという記録があったが、その神社らしい。
瀬里沢は年老いた宮司の秋山幻峰と会い、話を聞く。
宮司は八十年もの間、ここに島流し同然の身であった…」
・「第十話 隠れ鬼」(単行本A/「月刊モーニングtwo」2013年11月号)
「嵐が島を襲う。
瀬里沢は暗い中、無理して下山するも、海辺の小屋は波に呑まれていた。
彼はムシタロウの住む洞窟の小屋に行き、考えを巡らす。
そこで、彼はムシタロウにどちらが先に今村を見つけるか競争をするのだが…」
・「第十一話 見立て」(単行本A/「月刊モーニングtwo」2013年12月号)
「南雲が目覚めると、トヨの家にいた。
治療はしてもらったものの、彼の身体には縄が幾重にも巻き付けられ、身動きが取れない。
しかも、その場に彼女の夫らしい漁師が現われる。
その頃、瀬里沢は今村の居場所を突き止めていた…」
・「第十二話 戦争」(単行本A/「月刊モーニングtwo」2014年1月号)
「瀬里沢は『日本国』をバックに、村人の因習と対決する。
彼は拳銃に物を言わせ、とりあえず、その場を収めるのだが…。
一方、南雲は漁師の男にお礼を言いに行き、成り行きから彼と共に海に出ることとなる。
漁師はマグロを釣ると言うのだが…」
・「第十三話 呼ばう」(単行本A/「月刊モーニングtwo」2014年2月号)
「瀬里沢の寝込みを襲おうとしたのは、キクという少女であった。
孤児の彼女は優しかった今村を慕い、自分のものにしたかったと話す。
瀬里沢は今村のことを思い出しながら、キクのために風車を折りなおす。
その頃、南雲は漁師に言われ、村の娘の家に次々と夜這いをかけていた…」
・「第十四話 若衆」(単行本B/「月刊モーニングtwo」2014年3月号)
「漁師のアンジは獲ったマグロを村の衆に分ける。
同じ漁師のロクはアンジに対抗心を燃やすも、アンジは相手にしない。
その夜、村の若い衆は「アツマリ」を持つ。
そこでロクはアンジに南雲について尋ねる。
アンジは彼を弟子にすると言うのだが、南雲の答えは…」
・「第十五話 匂い」(単行本B/「月刊モーニングtwo」2014年4月号)
「南雲が外へ水を飲みに行ったわずかな間に猟奇事件が起こる。
そこにトヨが姿を現わし、南雲は彼女を止めようとするのだが…」
・「第十六話 山」(単行本B/「月刊モーニングtwo」2014年5月号)
「トヨの身を案じながらも、南雲は波にさらわれたミツの行方を捜す。
海のことなら漁師に聞くのが一番と言われ、彼は南浦の入り江を訪れる。
そこで歳を取った猟師から捜し人は山にいると教えられる。
若い漁師のサキチもサチの姿を山で見ており、南雲は山へ向かう…」
・「第十七話 神の島」(単行本B/「月刊モーニングtwo」2014年6月号)
「山で南雲はミツと再会する。
彼女は山の神社の宮司に保護されていた。
その夜は神社に泊まることとなり、南雲は宮司から歓待を受ける。
宮司は南雲に何やら頼みごとがある様子なのだが…」
・「第十八話 唄」(単行本B/「月刊モーニングtwo」2014年7月号)
「翌朝、宮司が何者かに殺害されているのが発見される。
その場に現れた瀬里沢は目撃者であるミツに犯人の様子を問う。
大根二本が謎を解く鍵なのだが…?
その後、南雲はトヨの様子を見に下山する。
一方、瀬里沢は島の謎を解くべく、宮司の遺した手記を読み進めていた…」
・「第十九話 ひとり」(単行本B/「月刊モーニングtwo」2014年8月号)
「トヨは喪失感のあまり、ロクに抱かれる。
だが、彼女は悪夢の後、自分が「ひとり」だと知り、愕然とする。
ロクは彼女に嫁になるよう頼むが、そこに南雲が現れる…」
・「第二十話 てっぺん」(単行本B/「月刊モーニングtwo」2014年9月号)
「ミツの唄を手掛かりに、南雲は山頂に行く。
山頂は火口になっていた。
ムシタロウに助けられ、彼らは火口の中へと降りる。
「遠祖が宮」でミツは母親に会えるというのだが…」
・「第二十一話 死」(単行本C/「月刊モーニングtwo」2014年10月号)
「山を下りた瀬里沢は南雲と合流するが、またもや奇怪な殺人事件が発生する。
死体を前に瀬里沢は南雲に「この島の人間は死なない」と告げるが、その意味する所とは…?
また、そうしているうちにも島には火山が噴火する時が近づきつつあった。
瀬里沢は島民を一か所に集めて、説得を試みるのだが…」
・「第二十二話 者ども」(単行本C/「月刊モーニングtwo」2014年11月号)
「夜、南雲と瀬里沢が泊っている小屋に村人たちがぞろぞろと集まって来る。
その手には凶器が握られており、噴火は彼らが島に来たせいにされていた。
南雲と瀬里沢は島民たちと戦い、虫太郎やトヨ、キクも応戦してはくれるも、多勢に無勢、このままでは殺されてしまう。
その時、火山が噴火を始め…」
・「第二十三話 ミツの島」(単行本C/「月刊モーニングtwo」2014年12月号)
「突如、現れた「聞得大君」(最高神女の称号)。
彼女に導かれ、村人たちは海に向かう。
もしかしたら、噴火から逃げる方法があるのかと思い、南雲と瀬里沢は付いて行くが、島民たちは岸壁から次々と跳び下りていき…」
・「第二十四話 心」(単行本C/「月刊モーニングtwo」2015年1月号)
崖の上に残されたのはミツ、南雲、瀬里沢、そして、トヨ。
トヨが崖から跳び下りなかった理由を聞き、瀬里沢は島民たちの秘密に気づく。
島民たちを動かしているものの正体とは…?」
・「第二十五話 土や水」(単行本C/「月刊モーニングtwo」2015年2月号)
「瀬里沢は意を決し、崖から跳び下り、「天然の避難所」に運ばれる。
彼は「聞得大君」にこの噴火は規模が違うことを話し、日本への移住を勧める。
それに対する答えは…。
一方、島は消滅の危機を迎えていた…」
・「最終話 真相」(単行本C/「月刊モーニングtwo」2015年3月号)
「南雲たちはアメリカ軍の戦艦に救助される。
その甲板で瀬里沢は南雲に島で起こった殺人事件に対する推理を語る。
瀬里沢によると、最後の殺人事件のみが石津島で初めて起こった「殺人」というのだが…」
・「内務省警保局三係瀬里沢極」(単行本C/「月刊モーニングtwo」2015年1月号)
「昭和二十年九月二十四日。(単行本C/「モーニング」2014年39号)
東京都千代田区内務省警保局で瀬里沢は上司から「日輪」の探索を命じられる。
「日輪」は陸軍が秘密裏に開発していた秘密兵器で、五月二十九日の横浜大空襲で失われたはずであった。
しかし、空襲で死んだはずの川村工場長を目撃した者がおり、進駐軍に見つかる前に日本側としては彼の保護を望む。
瀬里沢は川村の手掛かりを求め、「日輪」を開発していた「東亜重工」の焼け跡やその周辺で聞き込みを開始する。
その最中、何者かに襲われ、瀬里沢は拘束されるが、決して川村を捜す理由を明かさない。
彼の粘りがちで、遂に川村が現れるのだが…。
秘密兵器の「日輪」とは…?」
2014年度ブロスコミックアワード大賞を受賞した伝奇ミステリー・ホラーの力作です。
面白いことは面白いのですが、物語の期間は十日しかなく、その間にいろいろと詰め込まれているので、まとまりに欠ける印象を私は持っております。
また、幾つか気になる点があり、そこが評価の分かれ目ではないでしょうか?
まず、隔絶された島なのに、本土の人間と普通にコミュニケーションが取れているところ。
漫画や映画でこれを言ったら始まりませんが、やはり、物語の説得力に影響すると思います。
二つ目に、ラスト、島民の精神構造が明かされるのですが、島民の中にそれから外れた行動を取る人物がいること。
特に、漁師は海を相手にするために、また別の世界観を持っているようですが、それについてはちょこっとしか触れられておらず、モヤモヤが残ります。
三つ目は「第十九話 ひとり」がよく理解できないこと。
これは重要なエピソードなのですが、あまりにも漠然としていて、後で説明されても、腑に落ちません。
まあ、これに関しては、私の読解力の問題も大いにあると思います。
他にも釈然としないところが多少あったりもしますが、やはり、原因は設定が壮大過ぎたことではないでしょうか?
外界から隔離された島で起こる殺人事件…という風にテーマを絞った方が読みやすかったかもしれません。
ともあれ、とてもチャレンジングな作品で、私は読む価値はあると考えております。
2024年4月29日/7月22〜24・31日 ページ作成・執筆