犬木加奈子「怪談」(1996年7月12日第1刷発行)
収録作品
・「怪談」
「第1話 七つめの怪」
ナナ子の通う学校では、七不思議は六つまでしか知られていなかった。
七番目の不思議は聞いてはいけないと言われていたが、好奇心旺盛なナナ子は知りたくて仕方がない。
そこへ、七番目の不思議を知っていると言う女生徒が現れる。
教える前に、用事をあると、その少女はナナ子に本を一冊手渡して、立ち去る。
いくら待てども戻って来ない少女にしびれを切らしたナナ子は…。
「第2話 音楽室の指導者」
音大の付属校。
タケ子の幼馴染、芳子はピアノに関して天賦の才能を持っていた。
しかし、その才能を見込んだ、作曲家達の霊に憑りつかれ、夜な夜な音楽室を訪れ、ピアノを弾かされる。
日ごとに衰弱する芳子を亡霊達から守るため、タケ子はある策を実行に移すのだが…。
「第3話 夏休みの選択」
夏、山の別荘に行くプランを立てた、九人の若者達。
四人は直行バスで出発、また、別の四人は車で現地に赴くことになる。
ただ、ノブ子はバイトの都合で、一人電車で別荘に向かう。
予定よりも早くノブ子が別荘に着くと、バスで出発した四人が到着していた。
しかし、どことなく様子がおかしく、ノブ子が戸惑っていると、ドアを叩く音がする。
車で来た四人と思い、ノブ子がドアを開けようとすると、四人はノブ子に開けないよう止める。
彼らはノブ子に、、車で来た四人は事故で皆、死んだと言うのだが…。
・「なんでも屋べリアル」
「第1話 オウムがえし」
キシ子の最大の楽しみは、人の悪口を言うこと。
だが、あまりに悪口が過ぎ、クラスで孤立してしまう。
そんな時、キシ子がふらりと立ち入った、なんでも屋べリアルにて、ルシフェル(三流悪魔)からオウムを勧められる。
そのオウムにキシ子が人の悪口を話すと、悪口の当人がその悪口通りになるのであった。
ただ一つ、注意事項があり、オウムの悪口を決して言ってはならないのだが…。
「第2話 3つのお面」
誕生日が一緒の仲良し三人組。
ただし、性格は皆バラバラで、エミ子は笑い上戸、ナミ子は泣き虫、イカリは怒りんぼと三者三様。
誕生日のプレゼントを探していた三人は、なんでも屋べリアルに立ち寄る。
そこで、ルシフェルから「泣き面」「笑い面」「怒り面」の三つの面を勧められる。
自分の性格を変えたいと思う三人は面を購入。
エミ子は「怒り面」を、ナミ子は「笑い面」を、イカリは「泣き面」を付けるのだが…。
「第3話 殺人カメラ」
アン子には、殺したい人物が三人いた。
クラスの中心である女生徒、サクラと梅子。そして、友人だったキナ子。
アン子はサクラと梅子に反乱を企てたが、友人のキナ子の密告により、逆にクラスで爪はじきにされてしまったのである。
そんなアン子に目を付けたルシフェルは、なんでも屋べリアルに引き込み、古びたポラロイド・カメラを見せる。
それは実は「殺人カメラ」で、残されたフィルムはわずか四枚。
カメラを入手したアン子は理由とつけて、サクラと梅子はフィルムに収めると、二人は数日後死んでしまう。
だが、ルシフェルの言いつけに従わず、写真を焼き捨てずにいると…。
非常に質の高い、円熟期の作品集です。
個人的な好みの作品は、「なんでも屋べリアル」の「3つのお面」と「殺人カメラ」(傑作!!)です。
「怪談」も、オーソドックスな話を絶妙にアレンジしていて、味わい深いです。(「音楽室の指導者」のタケ子、いいキャラです。)
2017年1月20日 ページ作成・執筆