松本洋子「君が君であるために」(1998年8月6日第1刷発行)

「高校二年の二ノ宮祥悟と、藤枝真海は、小学生から十年の付き合い。(二人とも男)
 とは言うものの、頼りなく、いまだに子供っぽい真海を、祥悟がことあるごとに世話を焼くという関係であった。
 ある日、真海は、子犬を飼いたいという願い、祥悟は母親に頼みに藤枝家を訪れる。
 だが、母親は決して許さず、捨ててくるよう命令する。
 すると、真海の目の色が変わり、また、母親も態度が変化する。
 祥悟は異変を察知するが、すぐに真海は普段の状態に戻り、子犬のことなど忘れたように、家に入っていく。
 翌日、真海は子犬を全く覚えておらず、祥悟はブチ切れて、真海を無視する。
 その夜、祥悟は、助けを求める真海の幻を目にして、急いで、藤枝家に駆け付ける。
 そこで、彼は、真海の母親から、真海の秘密を打ち明けられる。
 藤枝家は「癒しの一族」で、特に、真海には強大な「癒しの力」を備わっていたのであった。
 「癒しの力」は「他人の記憶を封印したり記憶を変えたりできる力」で、力の強い者は「人を思うどおりに操ること」さえできるという。
 真海はその力で父親を殺してしまい、以来、母親はその力を発揮しないように、真海からイヤな記憶を奪っていたのであった。
 しかし、徐々に真海の力を抑えることが難しくなってきたために、母親は、真海が最も慕っている祥悟に助けを求める。
 真実を知った真海は「ぼくがぼくであるために」母親を意識不明に陥らせる。
 祥悟は、真海が「力」を使わない代わりに、真海のためなら何でもすると約束するのだが…」

 大ベテラン、松本洋子先生による、隠れた「サイキック・ホラー」です。
 とは言え、派手な描写があるわけでなく、全体的に淡々とした「ボーイズ・ラブ」「ショタコン」(注1)な雰囲気のある異色作です。
 男性よりも、女性読者の方が共感できるのではないでしょうか?

・注1
 あのあたりの知識は全くありませんので、間違って使用している可能性もあります。
 男の私には、いまだに理解不能です。

2020年7月7日 ページ作成・執筆

講談社・リストに戻る

メインページに戻る