わたなべまさこ「黒ねこがわらった」(1973年8月1日第一刷発行)

 収録作品

・「黒ねこがわらった」
「第1章 ローズガーデンの伝説」
 臨月のビクトリアは、夫のアンデルス=バストールが少年時代を過ごした別荘、ローズガーデンを訪れる。
 そこは白亜の建物で、真紅のバラが咲き誇る庭に囲まれていた。
 ビクトリアは、管理人のクロディーヌ夫人という老婆を紹介される。
 クロディーヌ夫人は彼女を見て、ビビアンが生きていれば同じ年頃と言うと、アンデルスは顔色を変え、その場を立ち去る。
 ビビアンは、アンデルスの妹で、早くに亡くなったらしかったが、ビクトリアには初耳であった。
 クロディーヌ夫人はビクトリアをビビアンの部屋に案内し、アンデルスが如何にビビアンを愛していたか滔々と話す。
 話を聞いて、衝撃を受けたビクトリアは部屋をとび出た直後、黒猫に驚き、階段から転落。
 そのショックで、ビクトリアは産気づき、デージーという女児を出産する。
 しかし、アンデルスはデージーにビビアンの面影を見出し、抱こうとすらしない。
 外出ばかりの夫に絶望を深め、ビクトリアは自殺を考えるが、看護婦のナナが機転をきかし、アンデルスは彼女のもとに戻ってくる。
 そして、ビクトリアに、ビビアンを殺したのは自分だと打ち明け、アフリカからの出張から帰ってきたら、デージーを受け入れると約束する。
 彼が出張の間、ビクトリアは孤独な生活を送るが、夜中に骸骨のような女性を見たりして、精神的に不安定となる。
 そんな時、鉱山の爆発事故で彼が死んだというニュースが届く…。
「第二章 ローズガーデンの崩壊」
 十年後、デージーは十歳となるが、邸ではクロディーヌ夫人に使用人同然の扱いを受けていた。
 母親はいることはいたが、ほとんど触れ合いはない。
 ただ一人の友人は、同じ年頃のヘンケルだけで、ある日、二人で湖に行くと、女性の死体を発見する。
 その死体は顔をめちゃくちゃにされており、このところ、同様の死体が湖で幾つも見つかっていた。
 そんなある日、以前、この邸に勤めていた看護婦のナナがデージーに会いに来る。
 おかしなことに気付いた彼女はデージーにある言付けをするのだが…。
 そして、7月、ローズガーデンで舞踏会が開かれる…。

・「ガラスの花嫁」
「パリ、ソルボンヌ大学。
 ポールとダニエルは熱愛の仲であった。
 ポールの母親は二人の仲を決して認めなかったが、それでも、ポールは三週間後に結婚式を挙げる約束をする。
 だが、その直後、彼は自動車事故で他界。
 悲嘆に暮れるダニエルの前に、ポールの母親が現れ、一緒に邸に住んでくれないかと頼む。
 一度は断ったものの、その夜、彼女は手鏡の中にポールの姿を見る。
 それをきっかけに心変わりして、ダニエルはポールの母親の邸に滞在することとなる。
 ダニエルの部屋には、この邸に昔からあるという姿見を置かれていた。
 その夜、姿見の中にポールが現れる。
 毎夜、二人は逢瀬を重ねるが、ダニエルは徐々に衰弱していき…」

 名作が二編、収録されております。
 特に、「黒ねこがわらった」はトラウマ・ホラーとして著名です。
 どこかで聞いたような話を寄せ集めて、ラストは「顔のない眼」でキメてくれますが、それでも、徹頭徹尾「わたなべまさこ」作品になっているのには感嘆します。
 やはり、ストーリー・テリングが抜群に上手いんでしょうね。

2021年10月19・20日 ページ作成・執筆

講談社・リストに戻る

メインページに戻る