新谷信貴
「溶解人間@」(2016年4月15日第1刷発行)
「溶解人間A」(2016年8月17日第1刷発行)

・単行本@
「第1話 溶解人間」(「マガジンスペシャル」2015年No.11)
 高橋孝太郎は目覚めると、廃ビルのような場所に閉じ込められていた。
 彼は学校に行く途中、何者かに襲われ、気が付くと、ここにいた。
 もう一人、北沢愛という少女もいて、彼女も大体同じような事情であった。
 スマホを見ると、電話はつながらないが、妙なメッセージが表示される。
 表示に従い、ロッカーを開けると、注射器と男の写真があり、この男に注射を打つよう指示される。
 従わない場合は、二人の首に付けられた首輪から、注射器と同じ薬品が注入され、「処分」されるという。
 孝太郎と愛は協力して、この男に注射器を射そうとするのだが…。
「第2話 とけるううっ」(「マガジンスペシャル」2015年No.12)
 最初にミッションをクリアした孝太郎と愛は、当座の食料と水を得る。
 まずは、自分達のいる建物を探索するが、出口はもちろん、階段も窓もない。
 ただ、古びている外観のわりには、電気や水は通っている。
 しかし、二人を窺う視線があった。
 孝太郎はトイレで下着姿の女性に襲われるのだが…。
「第3話 生きてここから出るんだ」(「マガジンスペシャル」2016年No.1)
 孝太郎と愛は、ヤンキー風の男、東野と眼鏡っ娘の松屋と出会う。
 東野と松屋は協力して、ここから出ようと言うが、孝太郎には少し思う所があった。
 実のところは、東野と松屋は孝太郎達を殺そうとしており、孝太郎は彼らを罠にはめる。
 しかし、孝太郎は彼らを殺そうとはせず…。
「第4話 タイムリミット」(「マガジンスペシャル」2016年No.2)
 東野達を救うために時間は約一時間。
 孝太郎は、脱出するための手掛かりを探してまわる。
 だが、出口がわからないことを知った東野達は、孝太郎から注射器を奪い返そうとする…。
「第5話 脱出」(「マガジンスペシャル」2016年No.3)
 トイレで孝太郎を襲った女の遺した、アウトドア用の腕時計。
 冷蔵庫の中にあった、妙に錆びた缶詰。
 アサギマダラの死骸。
 これらから孝太郎はある推理をする。
 そして、脱出のため、賭けに出るのだが…。

・単行本A
「第6話 捕縛」(「マガジンスペシャル」2016年No.4)
 建物から脱出したものの、孝太郎達は、兵隊らしき男達に捕まる。
 彼らはトラックの荷台に乗せられ、大きな建物に連れて行かれる。
 途中、東野の提案で、彼らは見張りの隙をついて、逃走するのだが…。
「第7話 お姉ちゃん」(描き下ろし)
 逃亡は成功したものの、愛は何故かトラックに残る。
 孝太郎は彼女を助けに行こうとするが、まずは避難する場所を探さねばならない。
 日が暮れ、野宿している彼らの前に、見知らぬ男性が現れる。
 男性の隠れ家で、彼らは全ての真相について知らされる。
 一方、愛は、生き別れた双子の姉と思わぬ再会をしていた…。
「第8話 ビッグE」(描き下ろし)
 孝太郎は、男性と共に、愛を助けるため、建物に潜入する。
 一方、愛の姉は、愛を逃がそうと画策する。
 孝太郎は愛の姉に見つかってしまうが、建物への侵入者は他にもいた。
 事態が思わぬ方向に進む中、愛の命が危険にさらされる。
 孝太郎は彼女を救えるのだろうか…?
 そして、全ての黒幕は誰…?
「最終話 僕達が手にしたもの」(描き下ろし)
 二か月後、彼らは日常生活に戻っていた。
 元のようには戻れない…それでも…。

 「溶解人間」と聞くと、リック・ベイカーが特撮を担当したB級ホラーを思い浮かべると思いますが、それとは全く関係ありません。
 ジャンルはサバイバル・ホラーで、前半は閉鎖空間からの脱出、後半は意外な展開を見せます。
 と書くと、何か面白そうですが、ストーリーはボロボロで、新谷信貴先生には申し訳ないのですが、明らかに失敗作です。
 完結させたことを評価はしますが、人間を溶かす薬の説明等、かなり強引で、許容範囲を超えていると言わざるを得ません。
 また、伏線(一巻でトイレで襲いかかった女と愛の関係等)の回収がされていないのもイタイです。
 と、難の多い作品ではありますが、細かい所を気にしなければ、スピーディーな展開でまあまあ楽しめます。
 個人的には、「勇み足」な作品だったのではないかと…。
 作者の新谷信貴先生は才能のある方だと私は思いますので、頑張ってほしいと思います。
 失敗したとしても、次に生かせばいいんですよ!!

2021年8月5・6日 ページ作成・執筆

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