こいわ美保子「天使の殺意」(1983年2月5日第1刷・11月14日第4刷発行)
収録作品
・「天使の殺意」(「なかよしデラックス」昭和57年3・4月号)
「氷室亜美は氷室商事の社長の一人娘。
社長は彼女を宝物のように扱い、亜美は汚れを知らぬ、純真な少女に育つ。
十六歳の彼女は、十五も年上の兄の徹を心から慕っていた。
兄の徹は、社長から東京支社を任され、その辣腕を振るい、秘密裏に亜美との結婚話もあった。
しかし、彼は社長の本当の息子ではなく、自分を社長の座から蹴落とすのではないかと疑う。
ある日、パーティの後で、社長は脳溢血で倒れる。
その機に乗じ、徹は会社での実権を掌握。
兄を信じていた亜美であったが、父親の死体の前で高笑いをして、彼女をレイプしようとするに及んで、彼女は邸から逃亡。
その際、夜道で、彼女は暴走族のバイクにはねられ、そのリーダーの竜子の家に運ばれる。
怪我は軽く、亜美は竜子のもとにおいてくれるように頼むが、そういうわけにもいかない。
行く場所がなく、こっそり邸に戻った亜美は、兄と叔母との会話を聞く。
兄が亜美と親しくしていたのは、彼女の財産目的のためであった。
徹は、邪魔な亜美を始末しようと画策するも、誤認のために暴走族のメンバーが一人死んでしまう。
兄に憎悪を燃やした亜美は、竜子率いる暴走族を引き連れ、氷室商事へと向かう。
そこで、亜美は兄の徹にクビを言い渡し、亜美と徹は全面的に対決。
憎悪と怒りの虜となった亜美に救いはもたらされるのであろうか…」
・「闇マリア伝説」(原作/金春智子)(「なかよしデラックス」昭和57年9月号)
「1982年、夏。
めぐみ、夏子、志摩の三人は、志摩の提案で、湖近くの山中のペンションを訪れる。
しかし、ペンションでは予約が取れておらず、泊まる当てがない。
三人が途方に暮れていると、突然、めぐみは変な青年に車へ押し込まれ、連れ去られそうになる。
その青年は東京駅で旅行に行くなと、めぐみを引き止めようとした人物であった。
あわやという時、高級車がその車の進路を妨害、青年は仕方なくめぐみを解放し、姿を消す。
高級車を運転していたのは、北條摩矢子という美しい女性で、自分の屋敷に泊まるよう三人に提案する。
彼女の屋敷は、山奥の御影村にあり、ひなびた農村にそぐわないほど、豪華な洋館であった。
中も豪奢であったが、めぐみは、江戸時代に描かれたというマリア像の絵を気味悪く思う。
絵は、日本女性をモデルにしており、マリア像なのに漆黒のベールをまとっていた。
その夜、ふと目覚めた、みぐみは、黒のフード付きマントをまとった村人達が、神社の祠に集まるのに気付く。
彼女がそこで目にしたものとは…?
三百五十年の時を経て、千代姫が悪魔ルキファーと結んだ契約が現代に蘇える…」
少女漫画然とした絵柄に食指が動かず、長い間、読まずに置いたままだったのですが、「真夜中のシンデレラ」に続いて目を通してみますと、めちゃんこ面白かった!!
「天使の殺意」は、愛憎がドロドロに渦巻く内容で、やっぱり「なかよし」関連誌に掲載されたとは思えません!!
最初のあたりの徹が亜美を襲うシーン、よくも問題にならなかったものと思います。
それにしても、こいわ美保子先生の志向した作品は、甘味料でぐだぐだの少女漫画よりも、成人を対象とするシリアスな人間ドラマだったように思います。
その志はひしひしと伝わってくるのですが、掲載誌が「なかよしデラックス」だったために、ストーリーはヘビーなのに、結末は「おセンチ」に収まったということになったのでしょうか?
掲載誌の対象年齢がもっと年上であったなら、舞台は大阪だし、暴走族出てくるし、きっと「マッドマックス2」のように「血管逆噴射」な感じになったはず…と、そう信じたい!!(脳内妄想炸裂)
「聖マリア伝説」も拾いものです。楽しめました。
原作者が付いており、バリバリの「オカルト・怪奇マンガ」となってます。
ノリは、美内すずえ先生ちっくでありましょうか。(「13月の悲劇」の影響あり?)
ちゃんとグロ描写もあるものの、この手のマンガは、こいわ美保子先生とはちょっと合わなかったのか、他の作品に見られるような繊細さを若干欠いている気がします。
黒井ミサのような恰好をして、ルキファーを呼び出す呪文が「エロイム・エッサイム」なのには、ちょっと笑ってしまいました。(すぐ「悪魔くん」OPテーマが脳内再生されてしまうのです。)
また、○○○○(ネタばれ防止のため伏字)であっさり悪霊退散なのも、ヌルイです。
まあ、凄まじくシビアな「天使の殺意」の後に読むと、心が洗われる思いがするのは、俺だけか?
2017年8月30日 ページ作成・執筆