庄司陽子・他「ミステリー傑作選B」(1993年7月13日第1刷)

 収録作品

・庄司陽子「殺意」(1990年「BE・LOVEミステリー」第5集)
「大谷家当主、大谷総一郎は、孫娘の法子(21歳)にサーベルで切り刻まれて、殺される。
 しかし、加害者にはその間の記憶がないと言う。
 また、彼女は18歳ぐらいまで、夜、寝ながら徘徊することが度々あった。
 翌日、京極政高探偵事務所に、大谷家の顧問弁護士、浅沼から連絡がある。
 弁護士によると、亡くなった大谷総一郎は、法子に全財産を譲るという遺言書を最近、彼女の生活費以外は全て寄付すると書き換えようとしていた。
 だからといって、法子が祖父を殺すとは思えず、彼女は何者かに利用されているのではないかと疑い、彼女のガードを依頼する。
 友人の江古田警部補と共に、京極政高と助手の花咲峯子は大谷家の邸を訪れる。
 邸には、40年もの間執事として仕えた村田、法子の乳母兼養育係の村田、その他に運転手や庭師、コック、メイド等が十人程度。
 そして、当の法子は、人殺しなどできそうにない清純な娘であった。
 だが、京極政高は「なにもかもうますぎる」ことが気に入らない。
 彼は、花咲峯子に使用人の過去を調べるよう指示を出す。
 そこから暴き出される真実とは…?」

・ささやななえ「ずっと夜の中にいる」(1991年「BE・LOVEミステリー」第10集)
「笙子は親は資産家で美人、誰からも好かれる性格であったが、二年前の事故で失明する。
 その代わりに、彼女の親族の会社で働いていた柾修一と結ばれ、マンションで幸せに暮らしていた。
 修一の出張中、理加は、笙子のマンションを訪ねる。
 理加は笙子の友人であったが、実は彼女を妬み、修一に想いを寄せていた。
 その夜、二人で買い出に出た帰り道、理加は駐車場で不審な人影を見る。
 それはどうやら、最近、何台もの車に傷を付けている犯人らしい。
 理加は笙子を連れて、その場から逃げるが、男はマンションの近くまで尾けてくる。
 部屋が多いのでわからないだろうと高をくくるが、翌日、理加が笙子のマンションを訪ねると、笙子が殺されていた。
 しかも、犯人はまだ部屋におり、理加は目の辺りをカッターで切りつけられる。
 偶然に人がやって来たので、理加は助かるが、目蓋を切られ、傷がふさがるまで包帯で巻くことになる。
 笙子のマンションにバッグや着替えがあるため、鑑識の後、刑事と共に、彼女はそこに行くのだが…」

・庄野ひろ子「足跡」(1990年「BE・LOVEナイトメア」第1集)
「木崎一家(夫の良和・妻の美沙子・六歳になる娘の花梨)は、花梨の喘息のため、東京から二時間の郊外に引っ越す。
 とは言え、平凡なサラリーマン故、建て替える余裕はなく、築二十年のボロ家であった。
 引っ越し当日、花梨は自分の部屋の天井に足跡があると、母親に教える。
 以来、花梨は、部屋に「とも子」という、きれいなおばさんがいて、一緒に遊んだと言うようになる。
 また、常に睡眠不足になり、身体が衰弱していく。
 母親は花梨の話を夢として真面目に受け取ってこなかったが、この家には何かいわくがあるようで…」

・芳村梨絵「霊異譚」(1990年「BE・LOVEナイトメア」第3集)
「冬の京都。
 着物クリエーターの早坂加津也は、京都でショールーム・オープン記念パーティを開催する。
 彼は、銀行の頭取の娘と結婚式を挙げる予定で、新作は、その花嫁衣装であった。
 パーティの後、彼は鞍馬山へ車を走らせる。
 友人の多城陽介と鞍馬の温泉で落ち合うつもりであったが、途中、温泉からの道から外れた所に、雪の積もった彼の車を発見する。
 加津也が車を降りると、近くの道に見覚えがあり、道を辿ると、一軒の家があった。
 家から、美しい女性が彼を「ご主人さま」と呼んで、駆け寄ってくる。
 彼女の名前は華世で、彼は、前世、この場所で彼女と共に住んでいたことを思い出す。
 だだ、ここには多城陽介が来ていたはずだが、彼女は彼のことについては言葉を濁して、答えようとしない。
 彼女に身体の自由を奪われ、加津也は幾日も夢うつつで過ごす。
 ある夜、彼は、外に出た彼女を追うのだが…。
 華世の正体とは…?」

2021年12月14日 ページ作成・執筆
2022年1月20日 加筆訂正

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