菊川近子・他「ミステリー傑作選D」(1993年11月13日第1刷)

 収録作品

・おおにし真「昨日の子守唄」(「月刊Me1991年8月増刊ミステリーMe」)
「千夏は子供を切に望んでいたが、なかなか恵まれずにいた。
 産婦人科からの帰り、新生児室を覗いていると、「お母さん」と呼ぶ声が聞こえる。
 空耳かと思っていたが、その夜、彼女の前に、赤ん坊の幻が現れる。
 それは彼女以外には見えなかったが、彼女の周りにおり、千夏は妊娠を期待する。
 しかし、案に反して、妊娠しておらず、失意の帰り道、新婦人科で知り合った白幡と出会う。
 白幡と喫茶店で話をするが、彼女は、妊娠したけど、流れてしまったと話す。
 突如、彼女は千夏の肩に何かを目にすると、ひどく怯え、「許して」と外にとび出し、車に轢かれて亡くなる。
 千夏は、赤ん坊が何者なのか疑問を持つようになるが…」

・菊川近子「失恋ジンクス」(「月刊Me−twin1991年8月号」)
「佳也子が異動になった部署は、通称、いかず後家課。
 ここでは三年前、まなみ先輩が結婚して以来、誰もゴールインできていなかった。
 だが、佳也子はまなみ先輩から、ジンクスはでたらめで、誰かが人の恋路を邪魔していると知らされる。
 そこで、佳也子は、恋人の青木郁人と秘密裏に付き合うのだが、様々な妨害にあう。
 一体、誰の仕業であろうか…?」

・曽根原澄子「あやかしの宴」(「月刊Me1991年8月増刊ミステリーMe」)
「新田博之は、オートバイで撮影旅行に出かける。
 野宿しようとした時、川べりに多くの蛍が飛んでおり、シャッターを切ると、大きな光が彼の前に飛んでくる。
 気が付くと、目の前に、美しい娘が立っていた。
 彼女の名は山岡千秋で、東京から男と一緒に蛍を見に来たが、男は彼女をおいて帰ってしまったのだという。
 博之は彼女をオートバイに乗せて、彼女を自分の部屋に連れて帰る。
 千秋は部屋にいたり、いなかったりで、何故か、午前四時には、水を大量に飲む。
 彼女は誰かを捜しているようなのだが、その理由とは…?
 彼女を連れ帰って以来、博之が見るようになった夢と関係があるのだろうか…?」

・田槇いくみ「闇の足音」(「月刊MIDORI1992年10月号」)
「外回りの営業をしているサラリーマンの男性、白井。
 彼はある公園で弁当を食べることに日課にしていたが、ある日、いつもの席を他人に取られ、老人が座っているベンチに相席させてもらう。
 老人はいつ見ても幸せそうで、老人が言うには、このベンチは特別らしい。
 それが老人を見た最後で、しばらくの間、彼は仕事に忙殺され、公園に来れなかった。
 心身ともに疲れ果てた彼は、会社に行かず、公園に来てしまう。
 死を考えながら、そのベンチに座ると…」

・文月今日子「ぼくのママに手を出すな」(「月刊Me1991年4月増刊ミステリーMe」)
「大地草一と妻、桜と息子の淳は、父親の病気の知らせを聞き、大地家の邸を訪れる。
 草一は、妻と結婚した七年前、父親に勘当されて以来であった。
 だが、病気というのは真っ赤な嘘で、父親は孫と嫁に会いたかっただけ。
 勘当もあっさり解け、草一の一家は大地家の邸に住むこととなる。
 大地家には、古参の家政婦、大仏ウメに、ネクラな妹、奈良子とクセモノ揃い。
 それでも、妻の桜子はどんなことでもひょいひょいクリアしていく。
 ただ、彼女は決して身元を明かそうとせず、ちゃんとした結婚式を挙げられないことが草一には心残りであった。
 桜子の正体とは…?」

 単行本のベストは、ベテラン、曽根原澄子先生「あやかしの宴」でしょう。
 美しい絵柄とミステリアスなストーリーで魅せますが、グロ描写は一転、かなりの迫力です。

2021年12月17日 ページ作成・執筆

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